「カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇」:女芸術家三界に家なく、病院あり
監督:ブリュノ・デュモン
出演:ジュリエット・ビノシュ
フランス2013年
*TV放映
アーティストの伝記という点では同じとはいえ、前回書いた『イヴ・サンローラン』とは対照的な映画を見たので紹介したい。日本未公開作品である。
ロダンの弟子にして愛人・モデルとしてのみ、つとに有名なカミーユ・クローデル--この二人のなれそめや確執を描いた作品としては『カミーユ・クローデル』(1988年)があるそうだ。私は未見だが、主役の二人がイザベル・アジャーニとジェラール・ドパルデューというのはいかにもピッタリである。(アジャーニは、実物の写真を見るとかなり似ていると思う)
こちらのカミーユはもはや50歳過ぎ、精神を病みパリ郊外の病院へ家族によって入れられている。
とある日、医者から一週間後に弟が面会に訪ねてくると聞かされ、彼女は喜ぶ。弟が訪れるまでのその一週間を描く。
1915年という時代を考えると、その精神病院はかなり開放的ではないかと思えるけど、かなり騒がしく彼女をいらだたせる環境だ。それにスケッチをするぐらいしか創作活動が許されていないのもつらい。
弟のポール・クローデルは姉の唯一の理解者として見なされているが、この映画の中ではそうではない。熱心なカトリックとしての信仰心は、むしろ姉の狂気にも似た偏執を感じさせる。旅の途中で上半身裸になって手紙を書いている場面など、いつ自分を鞭打ち出すかとハラハラしてしまったぐらいだ(@^^)/~~~ピシーッ
そしてその信仰ゆえ、姉がロダンの子どもを中絶したことを絶対に許さず、病院を退院することも許さない。院長が病状が良くなったので退院を勧めるが、言下に拒否するのだ。
そのような場面を除けば、ほとんどジュリエット・ビノシュ扮する主人公が、ある時は独りで、またある時は他の患者と共に周囲の自然の中にいるところを淡々と描いているに過ぎない。
病院の周囲は乾燥した丘陵地帯といった風情で、美しくはあるが荒涼としている。あまり長くいたいとも思えない。しかし、死ぬまで彼女は出られなかった。弟は葬式にも来なかったという。
J・ビノシュは熱演というしかなくハマリ役ではあるが、いかんせん全体的に地味すぎ。日本で未公開だったのも仕方ないだろう。
しかし、メロドラマ向きともいえる前半生ではなく、中年になった一時期だけを切り取り、回想シーンも彼女の作品も見せないにも関わらず、アーティストとしての自負と情熱と焦燥を描いているのは見事である。
見ていて、同じく女性芸術家を描いた『セラフィーヌの庭』の影響を感じた。こちらも実在の画家を描いた作品だが、やはり晩年は精神病院に入る。そのあたりの印象が似ている。
『セラフィーヌ~』も地味な映画だが結構影響力があるらしい。NHKで草間彌生のドキュメンタリーをやった時、終盤のシーンを真似していたようだった(ドキュメンタリーなのに)。
カミーユはロダンに作品を奪われたと訴えたが、草間彌生もウォーホールなどにパクられたと主張していた。
所詮、女芸術家は病院に行くしかないのだろうか。
狂気度:8点
自然度:8点
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