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2014年11月23日 (日)

フェスティバル/トーキョー14「驚愕の谷」「羅生門|藪の中」

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昨年までのディレクターが降板して、色々と取沙汰されていたF/T。確かに発表されたプログラムを見ると、かなり色合いが異なるようだ。(本数も少ない?)
とはいえ、2本見てみることにした。しかしねえ、先行とはいえチケット発売の時点で、チラシもできてないというのは……何とかしてくだせえ(ーー;)

★「驚愕の谷」
作・演出:ピーター・ブルック、マリー=エレーヌ・エティエンヌ
会場:東京芸術劇場
2014年11月3日~6日

演劇界の生ける伝説(?)P・ブルックといやあ、過去にオペラ『魔笛』しか見たことないので、ここは一つ是非ナマで見ようと思い、内容もろくろく知らずにチケットを買った。新作だそうである。

役者は三人、簡素な舞台でそのうちの二人は上着を取り替えたり脱いだりして様々な役を演じる。
もう一人はサミーという女性で、並外れた記憶力を持つ共感覚者(であることを自覚したばかりの)という設定だ。
そこから「脳の迷宮」へ向かう--というのだが、見ててどうもこのテーマにさっぱり興味が持てなかったのである。ネットで「生ぬるい」という感想を見たが、まさにそういう印象だった。なんだか、先日の『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』みたいなワークショップを観客にやって見せてるようだ(実際、客を二人ステージにあげた)。
芝居というよりコントをやってるという感じだ。

で、結局最後まで何の感慨も抱けぬまま終了したのであった。役者三人の演技は達者なもんであったが……。もっとも理解できなかったのは私だけではないようで、周囲では眠気虫に襲撃されて沈没している人が少なからずいた。


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さて、サミー役のキャサリン・ハンターは極めて小柄な中年女性。野田秀樹の芝居に出たりしてたそうだ。初めて見てビックリしたのは手足が非常に長いこと(!o!) まるで蜘蛛みたい。チビで胴長の私にはうらやましい限り。足の長さ少し分けて欲しい。
同時に彼女は今話題の人でもある。なんと、つい先日発表されたB・カンバーバッチの婚約者(演出家だっけ?)の母親だというのだ。要するにシュウトメってわけですな。
とりあえず、メデタイこって(●^o^●)


★アルカサバ・シアター「羅生門|藪の中」

演出:坂田ゆかり
会場:あうるすぽっと
2014年11月5~7日

パレスチナの劇団が日本のスタッフと組んで、「羅生門」をやるというプログラム。しかし、これを見てみようと思った一番の要因は舞台美術を「目」が担当するということだった。彼らは夏に「たよりない現実、この世界の在りか」をやったのが非常に面白かったからだ。

劇団の方は過去二回F/Tで公演しているが、両方ともパレスチナをテーマにした芝居だったので、今回は日本の話をやりたかったとのこと。パレスチナの劇団となると政治的なものを期待されてしまうのは不満があるそうだ。

もっとも、彼らが当初やりたいと言っていたのは、黒澤明の映画ではなく、原作の芥川の小説でもなく、なんと50年代の米国で映画に触発されて書かれた脚本のことを指していたのだという。映画も原作も知らなかったそうだ。

「目」がステージ上に作った羅生門は、驚いたことに色が様々なビーズ(というか小さな玉)をたくさん糸でつないで、吊り下げたものである。スモークや照明によって「門」にも見えるし、「藪」にも見える。そして門に捨てられる死体(或いは土のう?)は黒い球体であった。

この禍々しさを秘めつつも洗練された透明感ある「門」は、濃くてエネルギッシュな劇団の面々と、ドロドロした物語と、ミスマッチに見えるがうまく溶け合っているようでもある。
しかし、最後に客電や照明を明るくして役者が観客に直接語りかけた理由は?……私にはよく理解できなかった。
それと、時折挟まれるダンスシーンは……(^^?)苦手です。

ただ、生者と死者、真実と嘘が境もなく立ち現われるこの物語、果たして政治的でないということがあるだろうか。「政治的ではない」というのもまた政治的な言説であるし、また日本側が自ら日本は何者にも占領されてなくて平和である、というような意味のことを言っちゃっていいのかね

アフタートークでは演出者やディレクターと役者たちが登場。通訳を入れて色々と話が聞けた。
「目」には今後も舞台美術をやって欲しいと思った。

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