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2014年12月 6日 (土)

「シャトーブリアンからの手紙」:死に際して何を叫ぶか

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第二次大戦中、ドイツ占領下のフランスで、17歳の少年ギィ・モケが処刑された経緯を描く。フランスではドイツ軍への抵抗者として伝説的存在で、教科書に載るほどだそうだ。

もっとも、この映画の中で描かれるのは政治犯収容所にいても(といってもビラ配りをしただけだが)、隣の女子収容所の娘っ子にコナかけたりしている普通の少年である。

ところが、ドイツ将校の暗殺事件が起こり、ヒトラーはその報復に収容所から150人の囚人の処刑を命ずる。(これはイタリアでも同じようなことをしたらしい)

筋金入りの思想犯だけでなく、17歳の少年や明日に釈放を控えた若者まで選ばれた経緯と、処刑までの彼らの姿を淡々と描いている。クライマックスと言える処刑場面もまた余計な感傷もなく進行する。とはいえ、見ていて非常に恐ろしく、その場に居合わせているかのような臨場感だ。

このような内容だが、独仏合作作品ということもあって、ドイツ軍に協力するフランス人や、処刑に際し錯乱状態になる独軍兵士も描かれている。双方に良心を持った人物がいても、事態は変わらずに流れていく。断罪だけでなくこういう双方に気配りした描き方も、和解の流れの一つの表れだろうか。
監督はドイツ側のフォルカー・シュレンドルフ。なんだか久々に名前を聞いたなあと思って調べたら、日本での新作公開は十数年ぶりらしい。前作が公開されてないせいもあるが、そもそも寡作なのだった。

結末に至って印象に強く残ったのは、処刑された人々が「自由」や「共産主義」を自らの生命を賭けて守ろうとしたことである。
にも関わらず、顧みれば終戦後その二つの言葉の価値は甚だしく下落したとしか言いようがない。


和解度:8点
英雄度:5点


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