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2015年2月 8日 (日)

「ドストエフスキーと愛に生きる」:象と格闘中

150208
監督:ヴァディム・イェンドレイコ
スイス・ドイツ2009年

公開時に見逃したドキュメンタリー。ちょうどアップリンクで「見逃した映画特集2014」というので上映したので、行ってみた。

ドストエフスキーの著作を5冊ドイツ語訳したスヴェトラーナ・ガイヤーという翻訳家の半生を描いたものである。ウクライナ出身で現在はドイツ在住。その人生は第二次大戦前後の東欧の歴史の中で翻弄されたものだった。

2009年の時点での彼女は86歳、背中が曲がり足元もおぼつかない。しかしキリリとした眼差しは明晰な知性をたたえている。
翻訳した文をタイプしてもらい、さらに読み上げてもらって何度でも推敲する。その言葉を大切にし検証を重ねるその姿には、日頃ブログやツイッターで駄文いや駄言葉を垂れ流している自分を思わず反省してしまう。

若い頃はかなりの美人shine おまけに話にはウィットがあって教師としてもかなり魅力があったに違いない。

さて、とある事件をきっかけに一度ウクライナへ里帰りしようと考える。カメラはそこにもついて行く。
彼女の父親はスターリンの粛清に遭って監獄へ行き、それが原因で亡くなってしまう。戦争でドイツ軍にウクライナが占領されると通訳などで協力する。そして、独軍が撤退する時に故郷を捨てて共に去ったのだった。

したがって、故郷にもドイツ軍にも複雑な思いがあるようだ。当時、彼女や母親の窮状を救ってくれたドイツ軍将校たちの話をする時にはなぜか明晰さが消えて、擁護しているようにも見える。過去に何かあったのか?

知性は限りなく強靭であるはずなのに、魂は過去にとらわれ、肉体は歳月に浸食されていく。一人の人物の中にその全てが凝縮されている。
救いは、行った目的を果たせなかったウクライナの地の高校生たちの率直な明るさと、彼女の娘や孫娘が大勢集まって賑やかなシーン(女系家族?)だろう。

ドキュメンタリーとしての出来うんぬんよりも、「素材」が何より力を持つ作品であった。なお、スヴェトラーナ・ガイヤーは2010年に亡くなっという。
ただ、例の如くannoy邦題は勘弁してほしい(ーー;) 原題は「五頭の象と生きる女」(「象」はドストエフスキーの訳書を指す)だ。


過去混乱度:8点
現在混迷度:8点


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