バッハ・コレギウム・ジャパン第111回定期演奏会:冥途のオミヤゲにはぜひこの一曲
世俗カンタータ・シリーズ5
会場:東京オペラシティ コンサートホール
2015年2月22日
追悼の曲も「世俗」に入るんだと驚いた今回のBCJ定期。まあ確かに教会の礼拝のためのものじゃないからなあと考え直した今日この頃である。
この日は名曲BWV106番と198番、さらにうっかりミスでバッハ先生作と思われていた53番のアルト・アリアに、クーナウ(?)作を編曲したらしきモテットが間に挟まって演奏された。
折しも20年前の1月に起こった阪神・淡路大震災と3.11の大震災に挟まれた2月、ということで犠牲者の追悼の意味も含めているとのことだ。
106番は親戚の伯父さんの葬儀のためというのが定説だったらしいが、もっと高い身分の人物のために作られたらしいとプログラムの解説にあった。いずれにしても、バッハが22、3歳の時の曲ということで、えっ(!o!)そんな若い時に作ったのと若くして才能を発揮しているのに改めて驚いちゃうのであった。
編成がリコーダー、ガンバそれぞれ2本と通奏低音のみという簡素なもので、実際にステージ上で見るとますますその少なさがヒシと感じられる。
リコーダー2本の朴訥とした響きが何やら人生のはかなさを表わしているよう(T_T)
その約20年後の作品198番はザクセン選帝侯妃の追悼曲だ。間に弔辞が入るという2部構成になっている。こちらはカンタータの定番編成に、リュート(野入志津子&佐藤亜紀子という組み合わせは初めて見た)、ガンバがやはり2本ずつ投入されている。
この2つの楽器と通底だけを背景にアルトが歌うアリアは、何か独特の質感を持っていた。波のように繰り返すガンバのフレーズ……。
どちらの曲もこれまで聞いた録音はどれも一声部一人のものだったので、計16人の合唱部分になるとかなりの迫力で驚いた。
クーナウ作(多分)のモテットではそのコーラス隊がさらに本領発揮。いかにも葬送にふさわしい厳粛な合唱を聞かせてくれたのだった。
53番はアルト独唱アリアだが、2台のベルが入っていてそれらが打ち鳴らされると、思わずお迎えが来た~
という気分になる。冥途の土産に持っていきたい曲ですな。
全体を通じて光っていたのはやはりCTのロビン・ブレイズだろう。特に聞きごたえのある曲が多かったし、またそれを曇りなき名唱で聞かせてくれたように思う。
テノールはG・テュルクだったけど……あれ、引退したんじゃなかったんですかい(?_?;
過去に聞いた録音では、106番はリフキン指揮のバッハ・アンサンブル、198番はA・パロット指揮タヴァナー・コンソートの演奏が耳に染み付いてしまっている。
以前にも書いたと思うが、特にリフキンの方は美しくもなく均整にも欠けたゴツゴツした変な音なのだ。にも関わらず(いや、だからこそ?)聞く者の心に強く働き掛けるものがある。特にリフキン本人が弾いているとおぼしきオルガンの低音はドスが効いていて迫力がある。60年代末期のブルースロック・バンドにそのまま加入OKみたいな音だ。
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