「ビッグ・アイズ」:目は外界への窓
監督:ティム・バートン
出演:エイミー・アダムス、クリストフ・ヴァルツ
米国2014年
大きな目が印象的な子どもを描いて大人気となった男性画家。実は本当に描いていたのは彼の妻だった! こりゃ大変だ~--という実話で、妻の立場からその顛末をたどる映画である。
前提として、1960年代は米国でもまだ女性の地位が確立されてなく、女性アーティストは少なかったということがある。同じく売れない画家同士だった夫が、絵を勝手に自作として売ってしまったのを非難しても、いざ表舞台に出るとなると勇気がなくて立ちすくんでしまう。
以後は二人三脚というよりは、夫がタコ部屋で妻に絵を描かせているという風情。一つ屋根の下にいた娘も知らなかったというのも驚きだ。
しかし夫の方は商才抜かりなく、作品をポスターやカードにして売るという、ウォーホルよりも早く大量複製時代の先駆けをしたのだった。
だったら、妻のパートナーとしてマネジメントやプロデュースに専念すれば自分の才能を発揮できるだろうに--と思うが、彼自身は絵の才能について大きなコンプレックスを抱えていてどうしても画家として注目されたいようなのだ。しかも実際に一作でも絵を描いたことがあるのかどうかさえ怪しくなってくる。
彼が、作品をけなした頑固な評論家に「絵が描けないヤツは言葉を使うしかない」というような意味のことを言って反撃するが、それはそのまま自分にはね返ってくるのだった。イタタタ(>y<;)
最後にはヒロインと夫は共依存とも言えそうな関係になる。「大きな目」でない自分の絵を制作するが、モディリアニの模倣みたいで正直あまり面白くない。あの目こそが彼女そのものであり、外界とつなぐ窓だったのだろう。
ようやく依存関係から逃れたのは新興宗教のおかげというのも皮肉だ。宗教が彼女の新たな窓だったのか。
クリストフ・ヴァルツが舌先三寸のどうしようもない男を演じて笑わせてくれる。小さい頃の娘役の子が、ちょっとブキミな感じで面白かった。エイミー・アダムスは余裕の演技ですかね。出番は少ないがテレンス・スタンプの批評家はカッコ良かった。フォーク攻撃にも慌てず--批評家の鑑ですねえ(^O^)
ただ、この映画を見た多くの人が思うだろう疑問……それは「どうして、ティム・バートンがこの題材を(?o?)」だろう。あまりバートンらしくないこの一作、長い間パートナーだったヘレナ・ボナム・カーターと別れたばかりというのが、夫婦の描き方に出ていると言えばそんな気もする。(そういや、ヘレナもエイミー・アダムスも目がデカい)
まあ、単にあの絵のファンというだけかもしれないが。
夫婦の絆度:6点
アートの沙汰も金次第度:7点
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