「名器「グライフ」によるバッハとヴァイスの音楽」:往きて還りし音楽
CD発売記念として行われた公演である。
リュートのグライフ様と言えば、1611年生まれというご高齢思わず「様」を付けて呼びたくなってしまう程の貫禄なのだ。
本来ならばフカフカの座布団に乗せられて、博物館のガラスケースの中に鎮座していてもおかしくはない。近年、無理がたたったのか老朽化が進み、しばらく前にメンテナンスをして少し若返って佐藤氏の元にご帰還あそばしたということである。
初めてその音色を聴いた時、それまで耳にしていたリュートの音とは全く違っていたので驚いた。なんだか乾いた「竹」っぽい、余計なものが何もない簡素な音であった。バッハやヴァイスが同時代に聞いていたリュートとはこんな音だったのか(!o!)
--ということで、CDの内容に沿ってヴァイスはシャコンヌを2曲、バッハは無伴奏チェロ1・3番を元にした組曲が演奏された。
個人的にはグライフでこの二人の作曲家を聞くのはかなり久しぶりのような気がする。
シャコンヌを始め、舞曲が幾つも登場する。しかし、当時すでに実際に踊っていたというのはメヌエットぐらいだったそうだ。つまり「舞曲」とは名ばかりだったらしい。
いにしえの舞曲を奏でるグライフ様。その音色も相まって、佐藤氏の演奏は率直で派手なところなど存在せず、もはや枯淡の域に達していたと言ってよいぐらいだった。
そんな調子なので、終盤でなんだか演奏が消え入りそうになってどうしたのかと思ったが(左腕が動かなくなったとのこと)、そんなこともさして気にならなくなってしまう程にだった。
とはいえ、さすがに途中で誰かがケータイ・スマホのバイブ音を響かせてしまったのは、なんだかなあ、だった。近江楽堂でリュートの独奏だとバイブ音でも聞こえてしまうのだよ。
後日CDを聞いてみたが、やっぱり音が違う なんというか、CDの方が普通のリュートの音に近い(^o^;) 実物はもっとペチペチした響きであるよ。それにうっかりボリューム上げると実物より音量が大きくなっちゃう。
ところで、佐藤氏をはじめ最近リュート弾きがよく使っている滑り止め布、あれが普及する前はみんな何を使っていたのだろうか。楽器にベルトを付けて固定していたのか?
昔は滑り止め布なんか存在しなかったろうしね。
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