« 「大塚直哉チェンバロリサイタル」:「古楽の楽しみ」問題はさておいて | トップページ | バッハ・コレギウム・ジャパン第113回定期演奏会:音楽と改革の日々 »

2015年6月16日 (火)

「JIMI:栄光への軌跡」:天才の証明

150615
監督:ジョン・リドリー
出演:アンドレ・ベンジャミン
米国2013年

早逝した天才ギタリストのジミ・ヘンドリックスの伝記映画--正確に言うとモンタレー・ポップ・フェスでブレイクするまでの2年間のみ(1966~7年)に的をしぼって映画化したものである。
小規模で公開されてもう見られないかと思ったが、なんとか間に合った。

当時のキース・リチャーズの恋人であったリンダがニューヨークでバックバンドをやってる彼を見出して、デビューさせようとするが、なかなかうまく行かず、英国へ行って、バンドメンバーを集めてエクスペリエンスでの正式活動開始となる。

クラプトンと共演したくて、彼のギグに飛び込み参加したらクラプトンが逃走--なんてエピソードが紹介されるものの、ほとんど女性関係に重点が置かれているのにはちょっと驚いた。
ロンドンで付き合ったのはリンダ(ただし男女関係はなし)→グルーピーのキャシー→アフリカ系のイダ、という女性遍歴(とトラブル)が描かれる。NY時代の恋人も含めて、その生活の描写を見る限りDV野郎と言ってよい。

ロック史の天才が実はどうしようもないDV野郎だった(!o!)というような話はいいんだけど、それに終始してはどうなんだという気分になる。
「天才」の証がクラプトンが逃げた、ビートルズも褒めた、それと「新しい音楽をやる」と喋っているTVインタビュー再現だけでは、あまりにも心もとない。

ロックファンならぬ一般の観客には音楽のネタはあまり受けないだろうとは思っても、この手のミュージシャンを描く映画が私生活ネタに片寄ってしまうのは、正直不満を感じざるを得なかった。
ジミはノエル・レディングのベースを信頼していなくて、自分でベースラインも一緒に弾いていた、というような話を聞いたことがあるが、そういう「天才」ゆえのエピソードも知りたかったなあ。

ラストのコンサートは、ピーター・バラカンが中学生の時に実際に行って聞いたとのこと 「初めて見るようなすごい人数の人だった」とのことだが、こちらの映像ではなるほど満員だけどそこまでの印象ではない。
キース・リチャーズがワンシーンだけ登場するが、自分の恋人の行状を彼女の父親にチクるという情けない役回りなので、ファンは見ない方がよろし。

ただし、映像は斬新。人物が喋りつつ動くのをカメラを動かさず固定させて撮る、というような方法で心理的な不安をうまく表現している。
主役のA・ベンジャミンは完璧にジミ再生に成功している。髪型とかファッションにも助けられているだろうが、歌声や喋り方もクリソツである。ギターの音自体はワディ・ワクテルが担当とのこと。

権利の関係で、彼自身が作った曲は使用できなかったらしい。でも、彼は他人曲のカバーも画期的だし、歌手としても味があるアーティストなので文句はない。
彼の不幸は、死後ながながと曲の権利をめぐって裁判沙汰になったことと、生前に出たアルバムは4、5枚なのに残された音源で作られたアルバムが山のように出たことだろう。もっとも、当然彼自身は知る由もないことだが。

予告で、ブライアン・ウィルソンの伝記映画をやっていた。これも見たいぜっ(鼻息も荒く) ポール・ダノはピッタリだが、中年期をやるジョン・キューザックはどう見ても違うような気がする(@_@;)


天才度:5点
再現度:9点


| |

« 「大塚直哉チェンバロリサイタル」:「古楽の楽しみ」問題はさておいて | トップページ | バッハ・コレギウム・ジャパン第113回定期演奏会:音楽と改革の日々 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「JIMI:栄光への軌跡」:天才の証明:

« 「大塚直哉チェンバロリサイタル」:「古楽の楽しみ」問題はさておいて | トップページ | バッハ・コレギウム・ジャパン第113回定期演奏会:音楽と改革の日々 »