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2015年7月

2015年7月30日 (木)

「サンドラの週末」:人生の一番長い2日間

150730
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演:マリオン・コティヤール
ベルギー・フランス・イタリア2014年

ダルデンヌ兄弟の作品としてはいつになく否定的な感想が多くて、あまり期待していなかったが、実際見たらそんなことはなかった。
かなり元気が出ます~(*^^)v

これは約二日間に展開される物語だ。
工場で働いていたサンドラはうつ病で休職。しかし復帰にあたってもう戦力は足りているということで、クビを言い渡される。ただ同僚がボーナスをあきらめれば、復職できるという。そこで、週明けの投票にあたり、その前になんとか過半数の同僚の支持を得ようと全員の家を回ることにする。
暑い日差しの中、土曜の朝から月曜の朝まで、果たしてサンドラは支持を得られるのか。

それにしても、こんな条件を出す経営者にはちょっとムッ(-_-メ)とせざるを得ない。直ぐに首にしないだけマシだろ的な温情を見せているようで、実はどっちに転んでも自分の腹は痛まないのである。
フランスの話かと思ったら、実はフランス語圏のベルギーという設定らしい。労働環境悪化で弱い者が貧乏くじをひかされるというのはどこの国でも同じ。国境による差はないようだ。

サンドラは立派な人物でもいかにも同情を誘うという人物でもなく、復調したばかりで何かあるとすぐにフニャ~(>y<;)となってしまい、ダンナや友人に励まされてようやく立ち上がる。それでも足りずにすぐ薬に頼って飲んでしまう始末。でも、ひとたびいい事があればコロッと回復しちゃうのだ。

そんな頼りないサンドラをマリオン・コティヤールが、美女オーラを封印して好演しております。

同僚たちは住んでる環境も階層も人種も立場も様々である。ボーナス放棄に賛成してくれる人もいれば、居留守を使う者もいるし、家庭内でもめてケンカに発展することもある。反対にしろ賛成にしろそれぞれに事情がある。
汗だくになりながらそんな街の中を朝から夜まで、観客は彼女に付き合わされる羽目になるのだった。カメラはピッタリと背後に付いて行く。

月曜の朝の投票と、そしてヒロインが下したある選択は……前途はキビシイが一筋の光明とすがすがしい空気を、ラストの彼女の背中に感じるのだった。

ほとんどコティヤールの一人芝居的であるが、ダンナ役や友人役のさりげない助演が光る。やはりダルデンヌ兄弟はそこら辺も抜かりなし。
ヴァン・モリスンの「グローリア」が歌われる場面が爽快だ。歌の内容がまた物語とピッタリ合ってるんだよね


労働者団結度:6点
究極の選択度:9点

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2015年7月27日 (月)

ヘンデル オペラ「フラーヴィオ」:能あるバカ殿は知恵を隠す

150727
主催:日本ヘンデル協会
音楽監督・演出:原雅巳
会場:東京文化会館小ホール
2015年7月17日

日本ヘンデル協会のオペラ上演はもう数回行っている。一番最近見た(聞いた)のは『パルテノペ』でしたな。
今回もこれまで全く知らなかったヘンデル作品、なんでもヘンデル先生の10番目のオペラだそうである。

タイトルは中世の北イタリア、ロンゴバルドの実在したという国王の名である。その宮廷に二組のカップルあり、彼らを巡って涙あり、笑いあり、ドロドロの復讐劇あれば愁嘆場もあり、という盛だくさんな内容。しかし、ラストは喜劇っぽいハッピーエンドを迎える。
いかにもヘンデル作品らしく、登場するはどーしようもない男たち。そして振り回されつつも健気な女性陣なのであった。

小ホールのステージだからあまり広くはない。オーケストラは11人、右側に陣取っている(女性率高し)。歌手は奥から出入りしてはジェスチャーを付けて歌う--という形式なので、あまり広いスペースは必要ないのだった。

原女史が指揮者として舞台に登場したが、進行の全体的なキューを出しているという様子で、器楽の方はコンミスの大西律子が仕切っているようだった。
演奏はヘンデル先生特有というか、あの煽り立てるような曲調を完璧に聞かせてくれた。先日の二期会の『ジューリオ・チェーザレ』で不満だったのはこの点だったのだと、この日のオーケストラを聞いて気付いたのである。

時にはわざと歌唱を逆なでるような曲もあって、歌手は歌いにくくないのか(?_?)といかにもシロート風に思っちゃったりして。
特に2幕の途中あたりのアリア(確か休憩直前かな)で、上杉清仁が恐ろしく速いテンポでそんなオーケストラと競うように歌いきったのは感動だった さすが上杉氏、絶好調。

もう一人の若手カウンターテナー村松稔之はタイトルロール。この日初めて聞いたけど、すごい高音まで出していてビックリである。今後の活躍に大いに期待でしょう。
ただ、白塗りなんで素顔が全く分からなかったのは残念。しかしこの王様、見れば見るほど志村けんのバカ殿様を連想しちゃうんでなんとかしてくれい(@_@;)
エミーリア役の加藤千春も、ジュリエットみたいな役回りで大いに盛り上げてくれた。

ところで素朴な疑問なのだが、アリアが終わるたびに定番の拍手が、この日は入らなかったのはなぜ(?_?) そういう方針なのかしらん?

自由席だったので、小ホール入口前の急な斜面に並ばされたのは参った。気を抜くと転げ落ちたりするかも(^O^)

奇をてらった演出ではなく、正調ヘンデル・オペラを楽しめました。また次回もよろしくお願いしまーす。

なぜか帰りは方々で電車が遅れたり止まってたりしていた。別ルートを取ったら、却って遅くなってしまい、しかもとっくに復旧していたとゆう……トホホ(+o+)疲れたです。


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2015年7月26日 (日)

「誘拐の掟」:ハードボイル道に掟なし

監督:スコット・フランク
出演:リーアム・ニーソン
米国2014年

ローレンス・ブロック作の、元刑事のマット・スカダーを主人公にした小説シリーズは、早川のポケミスで出た『暗闇にひと突き』以来、出る度に続けて読んでいた。『八百万の死にざま』を読んだ時には私も泣いた。ちょうど、翻訳もの海外ミステリが最盛期だった時期である。
その後、出版社が変わったりしたが、段々とつまらなく感じるようになって読むのを止めてしまった。

この映画の原作である『獣たちの墓』は1993年にハードカバーで出たのを読んでて、まだ本棚にあるが、内容はサッパリスッパリ忘れている。
これが映画化されたというのは、ニュースが流れたような記憶もあるが、気付いた時には日本でも公開が迫ってるではないか。ロクに宣伝もされてなかったようだ。
しかし、スカダーをリーアム・ニーソンをやるというのは、かなりイメージに合っている。ちょびっと期待して見に行った。

で、結果は--予想以上だった\(^o^)/

マット・スカダーは元アル中の元刑事である。現在は探偵の免許を持たないまま探偵もどきの仕事を引き受けている。
ひょんな伝手で、ヤクのディーラーをやっている男から誘拐事件の犯人の捜査を頼まれる。ヤバイ稼業をやってるので、表立って警察に届けるのもはばかられるわけだ。
それをさらに辿って行くと、どうも連続猟奇犯罪が起こっているらしいことが明らかになってくるのだった。

展開はかなり早い。複雑な経緯がからむ事件なんでモタモタやってる余裕はない。それを脚本はうまく分かるように処理している。途中で寝てない限り「あれ?こことここのつながりはなんだっけ(?_?)」みたいな混乱に陥ることはない。

原作は結構分厚いのによくまとまってるなと思ったら、スカダーと娼婦の関わりが出てくる部分を省略しているとか。確かにほぼ女っ気なしの一本勝負だ。
その方が、ホームレス少年との関わりもよりよく浮かんでくるし、長過ぎにならず好判断だった。
ただその分、派手さがなく渋くなり過ぎたためだろうか。観客が少なかったのは残念無念である。

時折、リアルさを外したような映像のシークエンスが登場する(最近流行の手法か?)。特に犯人が少女を「発見」した場面でもその手法が使われていて、なんか獲物を発見した嬉しさ(おぞましいけど)の気分が伝わってきて笑ってしまった。

依存症兄貴がディーラー弟に「告白」する場面はちょっと泣けた。原作にもあった件りだったかな。
終盤での主人公のカタの付け方は、本来警官でもなく私立探偵でさえもない人間としては、道義的に許されるものではない。ただの一民間人がここまでやっていいんかいと感じる。
しかし「断酒の誓い」と重ね合わせることで、彼の内なるモラルとその行為が合致することが示されるのである。お見事といいたくなる構成だ。

リーアム・ニーソンのスカダーはやはりイメージぴったり 眉毛の間あたりにくたびれた男の悲哀が蓄積している感じ。近年人気を博した破天荒なアクションものとは全く違っているので、それが原因で避けた人はぜひご覧下せえ。
それからディーラー役の若手俳優、なんだか熱を帯びたような視線でなかなかにエエ男ではないですか。なので他の出演作など調べてみたら

ダン・スティーヴンス、『ダウントン・アビー』のマシュー役……

え゛~っ!(☆o◎;) →  (;一_一)  →  (@∀@)
ウッソー 全く別人ぢゃないの。信じられねえ~~

ということで、マシューのファンの方もご覧下せえ(^_^;)

本作は「誘拐の掟」などという紛らわしい邦題が付いているが、アクション映画ではなくて、私立探偵ものハードボイルド、あるいはノワールといっていい。ここ数年ろくなハードボイルド映画がない<`ヘ´>とお嘆きの、同好の諸氏諸嬢にはぜひともお勧めしたい。
スカダー・シリーズはかなり前に『八百万の死にざま』が映画化されているが、見るとガックリ来て倒れるような出来だった。よりによってあの名作をω(T_T)ω しかし、こちらは原作ファンも満足できることは太鼓判を押しちゃう。
この続編はないだろうが、監督さんにはぜひ次作を頑張って頂きたい。

なおエンド・クレジットで女性歌手が歌っているのは、かなりアレンジを変えたサウンドガーデンの曲。これもよかった


卑しき街度:9点
騎士度:9点

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2015年7月20日 (月)

「夏の夜のダルカディア」:ドイツのイタリア人

150720
演奏:アンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディア
会場:近江楽堂
2015年7月15日

今回のERDは(略号はERAの方が正しい?)山口幸恵がお休みで三人体制だった。
演奏されたは、アルビノーニ、フローベルガー、オズヴァルト、そして前回もやったプラッティ。特に後者二人はほとんど知られていない、というか、知ってる人が果たしているのか(?_?)てな感じみたいである。

「ドイツで奏でられたイタリア音楽のとある一面とその影響に迫る」ということで、イタリア出身で18世紀前半から中頃にドイツのとある宮廷で活躍したのがプラッティである。オーボエ奏者だが、チェロを弾く領主のためにチェロ曲を多数作ったのとのこと。
前半は彼の曲ばかり3曲演奏された。通奏低音ではなくチェロが中心となる曲ばかりで、ヴァイオリンとチェロが弾き交わしたり、さらにチェンバロなしの曲もあったりして、チェロの懸田氏は大活躍であった。
時代的にもやはりプレ古典派ぽい香りが感じられる。

アルビノーニはプラッティの師匠筋になるとのこと。そのソナタは松永綾子のキリリンとした歯切れの良いヴァイオリンが印象に残った。
オズヴァルトとなると初めて聞く名前だが、17世紀中ごろにヴァイマールのオルガン奏者だったそうだが、鍵盤曲でなくてアンサンブル作品しか残っていないそうな。
こちらのソナタは力強くエネルギッシュだった。

プログラムの表紙にはオズヴァルトも演奏していた礼拝堂を描いた絵画が使われているが、見るとなかなか面白い。バルコニーでアンサンブルが演奏しているのだが、ヴィオラよりも大きめの弦楽器を肩に立てるように弾いてるのは、スパッラじゃないの

合間に、プラッティと同じ楽譜集に入っていたということで、フローベルガーのチェンバロ曲が渡邊孝によって演奏された。
アンコールは本日の主役、プラッティの作品から。

3人の演奏はある時は豪胆極まりなく、かと思えばまたある時は繊細で、そのメリハリが全く嫌みがない。バロック音楽の醍醐味はここにあり!と感じた。
次回はCD発売記念ということでガルッピを中心にやるらしい。

天気がジメジメしているので楽器の保護のためか、エアコンが効き過ぎていて寒かった。会場備え付けの肩掛けを使用している人多数。私はカーディガンを引っかけていたが、今度からはもっと厚手のジャケットを持ってこようと思った(~_~;)

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2015年7月18日 (土)

「ヴァイオリン音楽の泉 18世紀イタリアの名手たち」:緑と冷風の中のコンサート

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演奏:大江戸バロック
会場:ギャラリー鶉(じゅん)
2015年7月5日

桐山建志&大塚直哉のユニットによる同タイトルのCD発売記念コンサート。
「定員35名」の小さな会場で昼間と夕方2回公演である。

曲目はボンポルティとエックレスが1曲ずつ。ヴェラチーニのソナタ4曲だった。いずれも、よく知られる作曲家とは言い難い……なのだが、ヴァイオリンの才能教育に使われる指導曲集に含まれる作品の元ネタなのだという。(当方、こちら方面は疎いので詳しくは書けず(^^;ゞ)

エックルス(エクルズ)のソナタの原曲は、ボンポルティのインヴェンション4番を元ネタとして頂いているそうで、その両方ともが演奏された。
ヴェラチーニは作品2の7、8、11と録音したが、11番が一風変わった曲なんで、最も素晴らしい12番も入れようと思い立って録音したそうな。しかし、CDは80分(79分?)しか入らないのに、ギリギリ78分になってしまったと桐山氏が冗談交じりに語ったのであった。

そんな曲がギュウギュウ詰まったCDをそのまま演奏しただけあって、エネルギーと熱意がギューッと凝縮していた。二人のコンビネーションの良さは言うまでもなく、エネルギッシュであっても涼しい顔でサラリと弾きこなす風情であった。
やはりメインとなっているヴェラチーニが面白く聞けた。
150718b

この会場には初めて来た。目白駅にほど近い集合住宅の中庭にあるギャラリーである。中庭は緑がキレイで(雨模様だったせいか)小さな溝のような水路にはメダカが泳いでいる。住人の姿がガラス越しに見えるのも珍しい。
ただ、ギャラリー自体は狭くてパイプ椅子を並べた座席は移動もままならない。さらに音がやたら大きく聞こえたのもなんだかなー。コンサートで古楽器の音がよく聞こえないなどと文句をつけるのが常となっているが、聞こえ過ぎてもまた困るのよ(^^ゞ あと、冷房の風が直撃して寒かった

開演前や休憩中に小さな女の子の声が聞こえるなあと思ったら、桐山氏のお子さんだった。ブログで赤ん坊の頃、写真を見たのがついこないだと思ってたが、時間が経つのは早いのう。


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2015年7月12日 (日)

「スライ・ストーン」:生ける天才の最大の敵は忘却か

150712
監督:ウィレム・アルケマ
オランダ2015年

『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』『シュガーマン 奇跡に愛された男』のような、過去のミュージャンを取り上げたドキュメンタリーである。
忘れ去られたミュージシャンの功績を辿りつつ、その人物を「再発掘」して感動のラストへなだれ込む--というのは、今ではかなり模倣されてブームとなった感がある手法だが、この作品ではそれを目指した作り手の意図とは逆に、盛り上がらぬまま収束してしまうのであった。

スライ・ストーンは自らのグループであるファミリー・ストーンを率いて60年代末から70年代中ごろまで活躍するが、人気が下降して解散。やがて消息を絶ってしまう。
映画の製作陣は元々ファンで、この映画では2005年頃から彼の行方を探している。
その捜索の顛末と並行して、スライの半生が当時のライヴ映像や関係者のインタビューを通して描かれる。途中からスライ熱狂者(しかし生では一度も彼を見たことがない)の双子も登場して、さらに探索度が深まる。
そして、遂に本人が~(!o!)

スライは間違いなくブラック・ミュージック、ロック史に登場する天才の一人で、各方面に与えた影響は大きいだろう。曲作り、サウンド、ライヴ、全てに秀でていた。
特に、コンサートの開演に遅れるのが常で、遂に会場で暴動が起こったというエピソードが取り上げられているが、「スライのコンサートなら5時間待つ価値はある」という新聞記事が出てきたのには納得だ(^O^)
また、バンドが男女人種混合というのも先端を行っていた。(というか、今でも少ない?)
しかし、天才はまた扱いやすい人間ではない。周囲との軋轢やトラブルも発生するのだった。

こうして過去を辿ってみると、彼もまた70年代末から80年代に起こった音楽の大きな変動に耐えられなかったのではないかと思った。台頭するパンク・ニューウェーヴ、ディスコ・サウンド、第二期英国勢来襲……当時のベテラン・ミュージシャンは対応しきれず、スランプ状態になった。そんなことを思い出した。

隠遁状態になった彼を引っ張り出そうと多くの人々が奔走する。中でも、グラミー賞の授賞式でライヴを実現させたものの致命的ミスに足を引っ張られたナイル・ロジャースの話は、泣くに泣けないあまり、逆に笑ってしまった

日本にも数年前来日したはずだが、確か10分ほどステージに出て来て引っ込んでしまったという記憶がある。それでもファンは満足してたようだが。

あと、印象に残ったのはグループの最盛期に黒人運動過激派から資金を出せと言われて、暴力は嫌いだと断ったエピソードである。『JIMI:栄光への軌跡』やジェイムズ・ブラウンの伝記映画にも同じような話が出てきた。当時の黒人アーティストには踏絵みたいなもんだったのだろうか。

結末は感動には到底至らなかったが、編集のテンポよく決して飽きることがない。私はこの時代のブラック・ミュージックには疎いので、勉強にもなりました。
天才でも忘れ去られるが、語ることによってそれもまた生き続けるのである。


マニアの執念度:9点
栄枯盛衰度:8点

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2015年7月 5日 (日)

「バッハ・コレギウム・ジャパンの『四季』 華麗なる協奏曲の夕べ」:聴衆にも拍手

150705
演奏:バッハ・コレギウム・ジャパン
会場:調布グリーンホール大ホール
2015年6月28日

鈴木父子が関わるようになってからの調布音楽祭は何かと話題になっているが、実際に行ったのはこれが初めて。今年は4日間に渡って、学生やアマチュアも交えて色々なコンサートがあったらしい。
これは最終公演で、演目が今さらながらの「四季」なんだけど、それぞれソリストを変えて演奏するという趣向が面白そうだった。

で、演奏者とその印象を書いてみよう。
春:若松夏美、鮮烈
夏:白井圭、泣き&スピード
秋:高田あずみ、重厚
冬:寺神戸亮、疾風怒濤
単なるトーシロの感想ですので(^o^)/ 白井圭という人は初めて聞いたと思うけど、モダンとの両刀使いの方でしたっけ。

これに加えて、ヴィヴァルディ以外の作曲家の協奏曲も間に挟んで演奏された。
鈴木(息子)優人がへンデルの「オルガン協奏曲」を、三宮正満がマルチェッロのオーボエ協奏曲をそれぞれ、二人とも迫力ある演奏を披露した。
特に三宮氏は装飾音グイグイと入れて名人芸といってもいいぐらい。思わず口開けて聞き入っちゃったりして

他にバッハの「ヴァイオリン協奏曲」は寺神戸&白井コンビで。ラストはヴィヴァルディの協奏曲を4人のヴァイオリン奏者が揃って、だった。

まさに協奏曲尽くしといったプログラムで、ソリストの個性とアンサンブルとの調和という協奏曲の魅力がいかんなく発揮されたといってよい。

驚いたのは、かなり広い会場の客が一様にシーンと聞き入っていたこと。通常だと演奏中でも(特に後半になると)雑音やら咳払いやらが聞こえてくるんだけど、この日はほとんどなしっ 奇跡的ともいえる集中力であった
これはやはり調布という土地柄のせいか? これが同じ都内でも××区とか△△区とかだったらこうはならないだろうと思うが……。

と、充実したコンサートだったのだが唯一の問題をあえて指摘させていただきたい。それは会場である。地方自治体によくある多目的ホールで、どう見ても(聞いても)音楽向けではない。特に古楽アンサンブルには全く向いてない。それでも聞く前の予想よりはよく聞こえたけど。
自治体に大きな音楽専門ホールを作る余裕などないことは当然わかっているけど、やはりいい演奏を聞いてしまうと、残念無念感がドーッ押し寄せるのであった。
なんというか、音に潤いがないんですよねー。無味乾燥といってもいい。食事していておいしいお肉や魚を噛みしめた時にジワっと広がる旨味みたいのが、やはりこういう多目的ホールの音には存在しないのであった。
まあ、取りあえず言ってみましたの不満です(^^ゞ

来年も面白そうなプログラムあったら行ってみたい。ちょっと往復時間かかるけど

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2015年7月 4日 (土)

「ブラックハット」:百花斉放して死屍累々

監督:マイケル・マン
出演:クリス・ヘムズワース
米国2015年

この映画をオススメできるのは以下の三種類の人間だけである。
*マイケル・マンが監督している映画なら何でも見たいという人
*クリス・ヘムズワースが出演している映画なら何でも見たいという人
*美人女優のタン・ウェイにハアハア(^Q^;)したい人

米国での公開時には、ネットの描写は正確だがそれ以外の部分は今イチ--という評判を聞き、興収も良くなかったらしいので、あまり期待しないで見に行った。
日本でのロードショーも突然始まって、しかも小規模だった。
時間が合わないので、仕方なく普段は避ける池袋の映画館に行った。池袋というと客の年齢層が若く、カップルが多いのが常だが、この映画をやっているシアターだけ年齢が高く皆単独で来ているのだった(^O^)

M・マンは銃撃戦シーンを始め香港製アクションに色々と引用されているが、これはなんだか逆にご本家が香港ものをなぞり返したような荒っぽい脚本である。

香港の原発の管制システムがハッキングされて大事故に! さらに犯人は次の犯罪を画策しているらしい(!o!)--ってんで、米中が協力して合同捜査にあたる。加えて対抗するために収監中の天才ハッカーを引っ張り出すのだった。
直ちに健康に影響はないが目下ホニャララ中の原発に突入したかと思えば、東南アジア各地に駆けめぐるのである。

前半ぐらいはいいんだけど終盤に至ってはストーリー作りを放棄したかのように、死者続出の暴走状態。犯人放っておいてもこんなに死人出なかったんじゃないのてなもんであろう(・o・)
さらにネットに精通していても、銃にはトーシロのはずの主人公が一人で撃つ拳銃が百発百中で、その方面のプロである敵方のマシンガン(複数)が当たらないというのが、お定まりとはいえ、あまりにもなんだかなー。

また、主役C・ヘムズワースが、男優がいつも映えるマン作品なのに、今イチなのも大きなマイナスポイントだ。相性が悪かったのかしらん。彼の友人で中国警察(ん?軍だっけ)のワン・リーホンがあまり見せ場がなかったのも残念。
むしろ、台詞は少ないけれど保安官役の人(『CSIマイアミ』で刑事やってた)の方が一発必中でカッコ良かったです。
妹役のタン・ウェイはなんと『ラスト、コーション』の女優さんだったのね。あの映画では健康そうな若い娘さんみたいな印象だったけれど、今はすっかりスレンダーな美女になっててビックリよ。

脚本以外にも驚いたのは、音声が変だったこと。同じシーンなのに喋る人物によって音質がコロコロ変わる。また、音楽の付け方がチグハグで統一感がない。
あと、犯人を街中で監視しているカメラの映像が、全く同じもの(2、3秒ぐらいの長さ)をずーっとループして貼り付けているのには驚いた。あまりにもいい加減すぎる手抜きである。

かようにキャスティング以外にはかなりB級路線で、良かったのは香港の美しい夜景と、トンネル内での銃撃戦ぐらいだった。銃撃戦はさすがの迫力で、ここだけは見る価値があったと言っていいだろう。

ネットのことなど分からぬ素人にも理解できるような字幕を、技を駆使して付けてくれた担当者はご苦労さんでしたm(__)m
それにしてもネットを題材に映画を作るのは冒険である。あまりにも変化が速すぎるのを考えると、この映画の描写もあっという間に古びてしまうのではないか。大体にして、5年後も端末はスマホを使っているのだろうか? 全く予想もつかない。


中国系のキャスティングやロケ地を見ると、今や世界第2位の映画消費大国の中国をターゲットに入れて、製作したのは間違いないだろう。米国でウケなくても、他国で当たれば十分元を取れるご時勢である。
最近知って驚いたのは、日中関係が悪化してから中国で日本映画が一般公開されたのは5月の『STAND BY ME ドラえもん』が初めてだったらしい。しかもあっという間に日本国内の興収を超えたというのだ。
実写アクションものなどはともかく、ファミリー向け、オタク向けのアニメだったら、十分に勝算はあり。少子化の日本国内を相手にしている場合ではないようだ。


ネット度:5点
アクション度:7点

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2015年7月 2日 (木)

聴かずに死ねるか:マイナー・コンサート編 7月版

コンサート聞きたくてもチケット取るのが面倒くさいとメゲちゃうことがあります

*5日(日)ヴァイオリン音楽の泉(大江戸バロック)
*15日(水)夏の夜のダルカディア(アンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディア)
今回はブラッティ、アルビノーニ、オズヴァルトなど。
*17日(金)ヘンデル:フラーヴィオ(日本ヘンデル協会)
名前も知らなかったヘンデルのオペラ、期待です。
*18日(土)コレッリ!(寺神戸亮&チョー・ソンヨン)
*20日(月)バッハ&ラモー(崎川晶子)
*25日(土)アルハンブラの薔薇(つのだたかし)
撥弦楽器愛好者は集合!

他にはこんなのも。
*3日(金)武久源造バッハシリーズ5
*4日(土)アノニマス礼讃(坂本龍右)
*5日(日)イタリアからの旅立ち(太田光子&平井み帆)
*12日(日)ヘンデル&バッハ(ザ・サインズ・オブ・バッハ)
*18日(土)スコラ・カントールム定期
*20日(月)ヴォーカル・アンサンブル・カペラ定期
*23日(木)挑戦2015『ガンバ・デュオ』(武澤秀平&坂本龍右)
*31日(金)VIVA MARIA(森川郁子ほか)
  〃    ジャン=フランソワ・マドゥーフ アーリーブラス・プロジェクト・ジャパン
これは行きたいけど、チケット入手もしてないです(~_~;)

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