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2015年7月30日 (木)

「サンドラの週末」:人生の一番長い2日間

150730
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演:マリオン・コティヤール
ベルギー・フランス・イタリア2014年

ダルデンヌ兄弟の作品としてはいつになく否定的な感想が多くて、あまり期待していなかったが、実際見たらそんなことはなかった。
かなり元気が出ます~(*^^)v

これは約二日間に展開される物語だ。
工場で働いていたサンドラはうつ病で休職。しかし復帰にあたってもう戦力は足りているということで、クビを言い渡される。ただ同僚がボーナスをあきらめれば、復職できるという。そこで、週明けの投票にあたり、その前になんとか過半数の同僚の支持を得ようと全員の家を回ることにする。
暑い日差しの中、土曜の朝から月曜の朝まで、果たしてサンドラは支持を得られるのか。

それにしても、こんな条件を出す経営者にはちょっとムッ(-_-メ)とせざるを得ない。直ぐに首にしないだけマシだろ的な温情を見せているようで、実はどっちに転んでも自分の腹は痛まないのである。
フランスの話かと思ったら、実はフランス語圏のベルギーという設定らしい。労働環境悪化で弱い者が貧乏くじをひかされるというのはどこの国でも同じ。国境による差はないようだ。

サンドラは立派な人物でもいかにも同情を誘うという人物でもなく、復調したばかりで何かあるとすぐにフニャ~(>y<;)となってしまい、ダンナや友人に励まされてようやく立ち上がる。それでも足りずにすぐ薬に頼って飲んでしまう始末。でも、ひとたびいい事があればコロッと回復しちゃうのだ。

そんな頼りないサンドラをマリオン・コティヤールが、美女オーラを封印して好演しております。

同僚たちは住んでる環境も階層も人種も立場も様々である。ボーナス放棄に賛成してくれる人もいれば、居留守を使う者もいるし、家庭内でもめてケンカに発展することもある。反対にしろ賛成にしろそれぞれに事情がある。
汗だくになりながらそんな街の中を朝から夜まで、観客は彼女に付き合わされる羽目になるのだった。カメラはピッタリと背後に付いて行く。

月曜の朝の投票と、そしてヒロインが下したある選択は……前途はキビシイが一筋の光明とすがすがしい空気を、ラストの彼女の背中に感じるのだった。

ほとんどコティヤールの一人芝居的であるが、ダンナ役や友人役のさりげない助演が光る。やはりダルデンヌ兄弟はそこら辺も抜かりなし。
ヴァン・モリスンの「グローリア」が歌われる場面が爽快だ。歌の内容がまた物語とピッタリ合ってるんだよね


労働者団結度:6点
究極の選択度:9点

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» 「サンドラの週末」 [ここなつ映画レビュー]
ダルデンヌ兄弟監督作品。いつも思うのだが、彼らの作品は、社会の下層で生きる人々の事を描いている事が多いけれども、彼らを決して単なる弱者とは捉えていない。そして等しく善人ばかりが出てくる訳でもない。だがしかし、したたか一方かというとそうでもない。上昇、下降、一筋の希望。狡猾さ、躓き、諦観。無垢な魂、その場凌ぎの人生。純粋の仮面を被った愚かさの滲出、間違った方向へのファイト…。そして、常に息が詰まるようなショックを受けて劇場を後にする。そういうことからすれば、本作はダルデンヌ・テイストではあるが、いつも... [続きを読む]

受信: 2015年8月 4日 (火) 13時44分

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