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2015年7月 4日 (土)

「ブラックハット」:百花斉放して死屍累々

監督:マイケル・マン
出演:クリス・ヘムズワース
米国2015年

この映画をオススメできるのは以下の三種類の人間だけである。
*マイケル・マンが監督している映画なら何でも見たいという人
*クリス・ヘムズワースが出演している映画なら何でも見たいという人
*美人女優のタン・ウェイにハアハア(^Q^;)したい人

米国での公開時には、ネットの描写は正確だがそれ以外の部分は今イチ--という評判を聞き、興収も良くなかったらしいので、あまり期待しないで見に行った。
日本でのロードショーも突然始まって、しかも小規模だった。
時間が合わないので、仕方なく普段は避ける池袋の映画館に行った。池袋というと客の年齢層が若く、カップルが多いのが常だが、この映画をやっているシアターだけ年齢が高く皆単独で来ているのだった(^O^)

M・マンは銃撃戦シーンを始め香港製アクションに色々と引用されているが、これはなんだか逆にご本家が香港ものをなぞり返したような荒っぽい脚本である。

香港の原発の管制システムがハッキングされて大事故に! さらに犯人は次の犯罪を画策しているらしい(!o!)--ってんで、米中が協力して合同捜査にあたる。加えて対抗するために収監中の天才ハッカーを引っ張り出すのだった。
直ちに健康に影響はないが目下ホニャララ中の原発に突入したかと思えば、東南アジア各地に駆けめぐるのである。

前半ぐらいはいいんだけど終盤に至ってはストーリー作りを放棄したかのように、死者続出の暴走状態。犯人放っておいてもこんなに死人出なかったんじゃないのてなもんであろう(・o・)
さらにネットに精通していても、銃にはトーシロのはずの主人公が一人で撃つ拳銃が百発百中で、その方面のプロである敵方のマシンガン(複数)が当たらないというのが、お定まりとはいえ、あまりにもなんだかなー。

また、主役C・ヘムズワースが、男優がいつも映えるマン作品なのに、今イチなのも大きなマイナスポイントだ。相性が悪かったのかしらん。彼の友人で中国警察(ん?軍だっけ)のワン・リーホンがあまり見せ場がなかったのも残念。
むしろ、台詞は少ないけれど保安官役の人(『CSIマイアミ』で刑事やってた)の方が一発必中でカッコ良かったです。
妹役のタン・ウェイはなんと『ラスト、コーション』の女優さんだったのね。あの映画では健康そうな若い娘さんみたいな印象だったけれど、今はすっかりスレンダーな美女になっててビックリよ。

脚本以外にも驚いたのは、音声が変だったこと。同じシーンなのに喋る人物によって音質がコロコロ変わる。また、音楽の付け方がチグハグで統一感がない。
あと、犯人を街中で監視しているカメラの映像が、全く同じもの(2、3秒ぐらいの長さ)をずーっとループして貼り付けているのには驚いた。あまりにもいい加減すぎる手抜きである。

かようにキャスティング以外にはかなりB級路線で、良かったのは香港の美しい夜景と、トンネル内での銃撃戦ぐらいだった。銃撃戦はさすがの迫力で、ここだけは見る価値があったと言っていいだろう。

ネットのことなど分からぬ素人にも理解できるような字幕を、技を駆使して付けてくれた担当者はご苦労さんでしたm(__)m
それにしてもネットを題材に映画を作るのは冒険である。あまりにも変化が速すぎるのを考えると、この映画の描写もあっという間に古びてしまうのではないか。大体にして、5年後も端末はスマホを使っているのだろうか? 全く予想もつかない。


中国系のキャスティングやロケ地を見ると、今や世界第2位の映画消費大国の中国をターゲットに入れて、製作したのは間違いないだろう。米国でウケなくても、他国で当たれば十分元を取れるご時勢である。
最近知って驚いたのは、日中関係が悪化してから中国で日本映画が一般公開されたのは5月の『STAND BY ME ドラえもん』が初めてだったらしい。しかもあっという間に日本国内の興収を超えたというのだ。
実写アクションものなどはともかく、ファミリー向け、オタク向けのアニメだったら、十分に勝算はあり。少子化の日本国内を相手にしている場合ではないようだ。


ネット度:5点
アクション度:7点

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