「誘拐の掟」:ハードボイル道に掟なし
監督:スコット・フランク
出演:リーアム・ニーソン
米国2014年
ローレンス・ブロック作の、元刑事のマット・スカダーを主人公にした小説シリーズは、早川のポケミスで出た『暗闇にひと突き』以来、出る度に続けて読んでいた。『八百万の死にざま』を読んだ時には私も泣いた。ちょうど、翻訳もの海外ミステリが最盛期だった時期である。
その後、出版社が変わったりしたが、段々とつまらなく感じるようになって読むのを止めてしまった。
この映画の原作である『獣たちの墓』は1993年にハードカバーで出たのを読んでて、まだ本棚にあるが、内容はサッパリスッパリ忘れている。
これが映画化されたというのは、ニュースが流れたような記憶もあるが、気付いた時には日本でも公開が迫ってるではないか。ロクに宣伝もされてなかったようだ。
しかし、スカダーをリーアム・ニーソンをやるというのは、かなりイメージに合っている。ちょびっと期待して見に行った。
で、結果は--予想以上だった\(^o^)/
マット・スカダーは元アル中の元刑事である。現在は探偵の免許を持たないまま探偵もどきの仕事を引き受けている。
ひょんな伝手で、ヤクのディーラーをやっている男から誘拐事件の犯人の捜査を頼まれる。ヤバイ稼業をやってるので、表立って警察に届けるのもはばかられるわけだ。
それをさらに辿って行くと、どうも連続猟奇犯罪が起こっているらしいことが明らかになってくるのだった。
展開はかなり早い。複雑な経緯がからむ事件なんでモタモタやってる余裕はない。それを脚本はうまく分かるように処理している。途中で寝てない限り「あれ?こことここのつながりはなんだっけ(?_?)」みたいな混乱に陥ることはない。
原作は結構分厚いのによくまとまってるなと思ったら、スカダーと娼婦の関わりが出てくる部分を省略しているとか。確かにほぼ女っ気なしの一本勝負だ。
その方が、ホームレス少年との関わりもよりよく浮かんでくるし、長過ぎにならず好判断だった。
ただその分、派手さがなく渋くなり過ぎたためだろうか。観客が少なかったのは残念無念である。
時折、リアルさを外したような映像のシークエンスが登場する(最近流行の手法か?)。特に犯人が少女を「発見」した場面でもその手法が使われていて、なんか獲物を発見した嬉しさ(おぞましいけど)の気分が伝わってきて笑ってしまった。
依存症兄貴がディーラー弟に「告白」する場面はちょっと泣けた。原作にもあった件りだったかな。
終盤での主人公のカタの付け方は、本来警官でもなく私立探偵でさえもない人間としては、道義的に許されるものではない。ただの一民間人がここまでやっていいんかいと感じる。
しかし「断酒の誓い」と重ね合わせることで、彼の内なるモラルとその行為が合致することが示されるのである。お見事といいたくなる構成だ。
リーアム・ニーソンのスカダーはやはりイメージぴったり 眉毛の間あたりにくたびれた男の悲哀が蓄積している感じ。近年人気を博した破天荒なアクションものとは全く違っているので、それが原因で避けた人はぜひご覧下せえ。
それからディーラー役の若手俳優、なんだか熱を帯びたような視線でなかなかにエエ男ではないですか。なので他の出演作など調べてみたら
ダン・スティーヴンス、『ダウントン・アビー』のマシュー役……
え゛~っ!(☆o◎;) → (;一_一) → (@∀@)
ウッソー 全く別人ぢゃないの。信じられねえ~~
ということで、マシューのファンの方もご覧下せえ(^_^;)
本作は「誘拐の掟」などという紛らわしい邦題が付いているが、アクション映画ではなくて、私立探偵ものハードボイルド、あるいはノワールといっていい。ここ数年ろくなハードボイルド映画がない<`ヘ´>とお嘆きの、同好の諸氏諸嬢にはぜひともお勧めしたい。
スカダー・シリーズはかなり前に『八百万の死にざま』が映画化されているが、見るとガックリ来て倒れるような出来だった。よりによってあの名作をω(T_T)ω しかし、こちらは原作ファンも満足できることは太鼓判を押しちゃう。
この続編はないだろうが、監督さんにはぜひ次作を頑張って頂きたい。
なおエンド・クレジットで女性歌手が歌っているのは、かなりアレンジを変えたサウンドガーデンの曲。これもよかった
卑しき街度:9点
騎士度:9点
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