「ゲルマニア」
ドイツ産ミステリ。ジャンル的には警察捜査ものになるか。
珍しいのは設定である。舞台は1944年の空襲下のベルリン。元刑事の主人公はユダヤ人で公職を追われたが、「疎開」(収容所へ送られること)を免れているのは妻がユダヤ人ではないからである。
ある晩、突然に親衛隊将校に殺人現場に連れて来られる。そこにあったのは極めて残虐な方法で殺された死体であった……。将校は有能な刑事だった彼に捜査の助けを求めたかったのだ。背景にはそれまでの警察が隅に追いやられ、親衛隊情報部、国家秘密警察(ゲシュタポ)が割り込んで混乱をきたしているということがある。
主人公は久々の事件に刑事魂が復活、捜査するうちに連続殺人ではないかと推理する。おまけに、役得で本物のコーヒーにありつけたりもする。
作者は1969年生まれということだが、かなり当時の市民生活が書き込まれている。頻繁な空襲、街の破壊、物資不足、ユダヤ人アパートなど。それと共にこんな描写もある。
その日はじめて、人々は自らの国の虜囚となったことに気付いた。ヒルデも路面電車で黒焦げになったシナゴーグのそばを通りすぎた。路面電車に乗っている人々が勝利に沸くことはなかった。「反ユダヤ主義はいいが、やりすぎだ」と、乗客の誰かがつぶやいた。だが同調する者はいなかった。みんな、臆病だったのだ。
うむむ、過去の他国の話とも言い切れない(ーー;)
この手のミステリは犯人の意外性よりは、どうやってたどり着くかという過程に重きが置かれるものだ。だが、それにしてもラストは緒と性急すぎた感がある。
でも読ませる力のある作者なので、続編が出たらよろしくお願いしまーす。
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