「舟越保武彫刻展 まなざしの向こうに」
舟越保武の名を知ったのは舟越桂の父親としてである。かつて訃報を聞いてから、たまに行く近江楽堂の中に置いてある彫像の作者であることに気付いた。
昨年「長崎26殉教者」のデッサンを見た時に、実物の記念碑の彫像も見てみたいと思った。この展覧会にそれが出品されているらしい(複製なのか?)ということもあって、終了が迫って来たのでで焦りつつ行った。
戦前はロダンぽい作品、戦後の代表作、そして半身不随となってからの頭部像と時代順に辿って行く。関連するデッサンも多数。全体的に見ごたえありだ。
赤みがかった大理石使った作品は表面が人肌っぽくて面白かった。
展示室には対称的な配置が意図的になされている。「聖セシリアと聖マリア・マグダレナ」。そして迫力の代表作「原の城」と「ダミアン神父」--向かい合って立っているのを見ると何だか似てくるような気がする……。
頭部像の幾つかは、作製のために同じ女性を描いたデッサンが並べられている。完璧に均衡のとれて完成したブロンズ像より、デッサンの方が面白く思えた。何やら紙からしみ出してくるよう表情が感じられるからだ。
それから、最後の部屋の左手によるゴツゴツしたキリストさんの顔の像も、ルオーの絵みたいで引き付けられる。
どうも私は完璧で瑕疵もない美は苦手なんだと自覚したのであった。
舟越桂が、父親が亡くなってからガラッと作風が変化してエロっぽいのやらグロテスクなのやらの作品を作り始めたというのは、やはり清廉にして偉大過ぎる父親の存在が重圧だったのであろうか。偉大な父など持ったことのない人間には想像もつかぬことだが。
なお、ニュースで皇后が来館して鑑賞した時に案内役を務めたことが報道されて、絵本編集者の末盛千枝子が長女だというのを初めて知った。
来館者は圧倒的に中高年女性が多数。中には解説書きの前に立ってずっと意見を戦わしている人たちも。後が詰まってますよ~
美術館前の公園には大きくてカラフルな動物たちが幾つも設置してあった。カバとかキリン、カメとかヘビとか。天気が良ければ子どもたちが乗ったりしがみついてるのだろうが、あいにく雨の肌寒い日で誰も遊んでなかった。残念。
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