「ターナー、光に愛を求めて」:愛がなくても描いていけます
監督:マイク・リー
出演:ティモシー・スポール
イギリス2014年
言わずと知れた画家ターナーの半生を描いた伝記映画である。ただ、監督がマイク・リーだけあって、偉大な芸術家というイメージはない。
「美男美女の登場しない映画」と評した人がいたが、まさしくその通り。ターナーを始めいかにも英国風偏屈顔であふれている。
ただし、その代わりに風景は美しい。ターナーの描いた光景がそのまま再現されている。特に海上をボートで進んでいく場面は一見に値するだろう。海面の独特な質感……。
彼は生涯一度も結婚しなかったそうだ。冒頭の方で子供を連れてきて「あなたは自分の子なのに構いもしない」などと詰め寄る女性は、苗字が違うのになぜ(?_?)と思ったら、どうも未亡人と付き合って子まで成したらしい。
家政婦に対しては関係を持っても「家具」同様のひどい扱い。一方、旅籠の女主人とは相思相愛になり別宅で二重生活を送るのだった。
父親とは父子密着度が高く、やっぱり変人である。船ヲタクぶりも描かれる。
当時の画壇も変な人物でいっぱいだ。評論家のジョン・ラスキンも登場し、おかしなことを口走る
20代で早くも名声を得たターナーは、晩年には時代遅れとクサされた。だが、自分の絵を売り込むことに余念はない。
その他さまざまなエピソードが投げ出されたように順次連ねられていく。そしてゆるやかな死まで--。全くもって美しくも劇的でもない生涯なのだった。
T・スポールは「全身ターナー」となってそれを熱演している。
さて、以前「芸術新潮」誌にターナーのスケッチについての記事が載っていた。彼は旅行に出た折など裸体の女性、それも局所を強調したスケッチばかりをかなりの枚数描いていたのである。これは死後ラスキンが彼の名誉のために焼き捨てたということになっているが、実際には結構残っているらしい。
ここに登場するターナーなら全く違和感ない話だろう。
俗物度:8点
変人度:8点
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