「フレンチアルプスで起きたこと」:雪崩が怖くてかき氷が食えるかっ
監督:リューベン・オストルンド
出演:ヨハネス・バー・クンケ、リーサ・ローヴェン・コングスリ
スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー2014年
スキーに行った親子四人。外に面したテラスみたいな眺望レストランで食事していると、突然に見物用の人工雪崩がコントロールを失ってレストランに迫ってくる。
と、なんと夫は妻と子供を放り出したまま自分だけ脱兎の如く逃げ出したのであった
雪崩が収まった後に夫は何事もなかったように戻ってくるが、妻の心の中にはそれこそ雪崩の如く不信が湧き起ってくる。夫婦間のいざこざはさらに同じホテルの若いカップルも巻き込んでいく。
なんだかM・ハネケがコメディを作ったらこんな風になるのではないかというような作風である。
頻繁に一家の歯磨きやトイレの場面を繰り返し撮るのもそうだし、雪面で起こす爆破?の反復やら、冷めた目で観察する従業員の存在なんかもそうだ。
それをアコーディオン演奏によるヴィヴァルディの『四季』がワサワサと盛り立てる(でも、使われてるのは「冬」じゃなくて「夏」だよね)。
加えて、『シャイニング』みたいに「一日目」とド~ンと文字が出てくるのも笑える。
夫の弁解はバカらしくてみっともない。さらに途中で延々と号泣する場面に至ってはもう大爆笑してしまった。
……いや、正直に言おう。大爆笑したかったのだが、映画館内はシーンとして誰も笑ってなかったのだ(なんで)。そのため必死に笑いをこらえたのだった。
でも、あれ笑うところでしょう(@_@;) もう最後は子供もつられて泣きだして、お前は3人目の子供かっと言いたくなるぐらい。
もっとも、あそこで「一緒に泣いてしまった」と感想書いてた人もいるので、やはり大声で笑わなくてよかったかも。
ところが終盤の展開はどうだろう。吹雪の中をスキーに出る場面では亭主の沽券復活みたいだし、ラストのバス場面は--やっぱり妻も判断を誤るってことなのか(?_?)
かなり不満である。
この映画は男は家族を守らなければならない、という規範に疑問を投げかけ、必ずしもそれを守れない男もいても仕方ないと、肯定的かつシニカルに描いている。
一方で「母親は必ず子どもを守る」という規範には全く疑問の余地がないものとしているんだが、どんなもんかねー。
例えばこれが逆で、雪崩が起こった時に妻が一人で一目散に逃げ出し、戻ってきて「だって、男なら子どもを二人抱えて逃げられるでしょう。私は無理。それに家族が万が一怪我したら、看病するのは私の役目なんだから私は怪我できないわ」とでも言ったらどうだろうか。
スタイルは面白いが、導かれる結論は何だかなあ(ーー;)で終わるのだった。
夫の喜劇度:8点
妻の悲劇度:4点
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