「フリーダ・カーロの遺品 石内都、織るように」:両女並び立つ、はずだったが
写真家・石内都のドキュメンタリーといえば、過去に『ひろしま 石内都・遺されたものたち』を見たことがある。
彼女が被爆者の遺品を撮影するプロジェクトを追ったものだが、今回はメキシコ博物館から女性画家フリーダ・カーロの遺品の撮影を依頼される。なんでも、遺言で死後50年後に公開されるというのだが、映画の中では封印が解かれたD・リベラの邸宅から発見された遺品もあるということだった。
石内自身はカーロについて一般的な知識しか持ってなかったという。もっともメキシコでも、現地の人へのインタビューからすると画家というより「リベラの奥さん」というイメージが強いようだ。
カメラはメキシコへ向かうところから同行。しかし、意外にも全体として比重を置いて描かれていたのは、石内でもカーロでもなく、彼女が愛好したというメキシコの民族衣装や刺繍のことであった。現在、それらを作っている女性たちやその生活も紹介している。
こりゃ驚いた(!o!)
他にも、石内都の友人が自殺した知らせが来る場面とか、当地のピラミッドに上る道行とか入っていて、どうも素材をバラバラに並べたようなやや散漫な印象である。
見ていて、過去のカーロの姿をそのまま甦らせてほしい博物館のスタッフと、遺品という「物」から直接的に迫ろうとする石内側との、意図のズレがあったのではないかと見えたのだが、そこら辺の追及はなし。
また、雑誌か新聞で読んだ彼女のインタビューによると、医療用のコルセット(それにも絵が描かれている)を実際使わないものまで購入していたそうで、興味深かったのだが、そういう話も出てこなかった。
このドキュメンタリーは服飾とか民族衣装に興味がある人には向いていると思うが、それ以外の人間にはどうかね……。
石内都にもフリーダ・カーロにも迫れず、中途半端なまま終わってしまったように思えた。
石内度:5点
フリーダ・カーロ度:4点
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