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2015年11月23日 (月)

「ふたつの名前を持つ少年」:名は民族を表わす?

151123
監督:ペペ・ダンカート
出演:アンジェイ・トカチ、カミル・トカチ
ドイツ・フランス2013年

第二次大戦中、ポーランドのゲットーに住む少年が、ドイツ軍のポーランド占領に伴うユダヤ人狩りから逃走。家族とはぐれて必死のサバイバルをくぐり抜けるという実話を元にした映画である。
原作は児童書ノンフィクションとして岩波書店から出ている。

森には同様の境遇の子どもたちが潜んでいて農作物をかっぱらっては生き延びている。しかしそんな生活も長く続かず、カトリックのふりをしてポーランド名を名乗って方々の農場を放浪していくのだった。
その間に親切な人々と、ユダヤ人を忌み嫌う人々に出会う。家族同様の扱いをされたこともあれば、ドイツ軍に売り渡す者もいる。まさに波乱万丈の少年時代としか言いようがない。

厳しい自然の美しい映像と、子役の演技が見ものだろう。東欧の深い森は人間を拒絶するようである。
子役は時折印象が異なって見えて、成長期だから撮影時のタイムラグのせいかしらんと思っていたが、なんと双子の少年を起用していたらしい(!o!) 「二人一役」とはこのことだ。

最後に少年はカトリックの家族と生きるかユダヤ人の孤児として生きるか選択を迫られる。だが、その決断に至るまでに民族的(あるいは宗教的)アイデンティティについてほとんど語られておらず、見ていてモヤモヤしてしまった。これは欧米人なら自明のこととして理解できるのだろうか(?_?)
記憶の回復と共に決断が下されるということは、逆に言えば現実に適応するために自らの記憶を改変したのだろうか。むむむ(=_=;

少年の決断は『イーダ』とは対照的である。まあ『イーダ』はフィクションだけど……この差は何かということを考えてしまうのであったよ。
ラストには現在の実物ご当人も登場。まあ、幸せなら結果オーライってことで。

音楽が大仰でちょっと残念だった。


放浪度:8点
定着度:5点

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