「ベルファスト71」:朝が来れば別人
監督:ヤン・ドマンジュ
出演:ジャック・オコンネル
イギリス2014年
基本的には、戦場の中で若い兵士が無垢を失うという定番の物語である。
しかし、これがめっぽう面白い。よく出来ていると感心する。
時は1971年、北アイルランドは紛争の真っただ中だ。テロが横行し、市民同士で殺し合う。
そこに派遣された英国軍の新兵である主人公は、出動要請が来た時に単なる治安維持活動と考えていたのだが、現場に来てみれば暴動で大混乱となる。
仲間が撃たれ、部隊が撤退し、気付いてみれば自分一人が夜の騒乱の町に残されているのだった。
枠組みとしてはその一夜だけの話だ。主人公は逃げ惑うが、果たして脱出できるのか。
さらに、英国からの独立派にも穏健派や過激派など様々な立場のグループがあって入り乱れている。で、そこに英国のスパイが潜入してたりもする。
その力関係とテリトリー争いの中で主人公は翻弄される。一体、そんな中で兵士一人の生命など何の価値があろうか。
全く先が読めず、「えー、これどうなるの」とハラハラドキドキした。基調ははサスペンスだが社会派の面もあり、勝者がいない救いのない話でもある。そして、別の時代の別の国でも通用しそうだ(もちろん日本でも)。
このような体験をすれば、彼が物語の冒頭と終わりで別人のようになってしまうのも仕方ないだろう。
監督はTV畑の人で、これが初の劇映画作品らしい。次作にも期待である。
ミニマルっぽいエレキギターを中心にした音楽も良かった。
サスペンス度:9点
社会派度:8点
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