SPAC「真夏の夜の夢」:夏夢は、一富士、二野田、三悪魔
フェスティバル/トーキョー15
作:ウィリアム・シェイクスピア
潤色:野田秀樹
演出:宮城聡
開場:にしすがも創造舎
2015年10月31日~11月3日
なかなか芝居を見る暇がないのだが、毎年できるだけ行ってみるようにしてるのが、フェスティバル/トーキョーである。適当に選んでるので、内容は当たるも八卦当たらぬも八卦という感じなのは致し方ない。
まず最初はSPACで『真夏の夜の夢』、いくらなんでもこれは外れということはあるまい。もっとも、野田秀樹が脚色したヴァージョンをやるというのはチケット買うまで知らなかった(^^ゞ
会場は初めて行ったが、元は小学校だったところのようだ。建物の前のグラウンド(?)に整理番号順に並ばされる。夜の回だったんでロクに照明がなくて足元が暗かった。
野田版では、老舗の割烹の跡取り娘の結婚相手をめぐって4人の男女が恋愛模様でグジャグジャとし、富士のすそ野の森へ行くという次第。妖精王の件りは同じだが、途中で原作にない悪魔が登場して妖精パックの邪魔をする。パックになり替わって、さらに混乱を引き起こすのだった。
この悪魔の外見が、私の目にはなんだか野田秀樹に似せているように見えたのだがどうなのだろう。実際、村人ならぬ割烹の使用人たちの素人芝居を演出するのだ……。もっとも「灰皿投げる」というのは別の某演出家っぽい。
原作は能天気なバカ騒ぎだけど、こちらはダークな混乱へと導かれていく。
随所に言葉遊びやパロディが盛り込まれていた。或いは男同士で「ひとめぼれ」しちゃったりなど、爆笑場面も。終わった後に、客席から「新感線みたいだった」と感想が聞こえてきたが、確かにその一面はある。ある意味、劇団新感線はドタバタの極北だからねえ。
従って、森はドタバタの舞台となり、神秘的な印象はほとんどなかった。まあ、これは悪魔=演出家(と、「そぼろ」=劇作家)が主人公な設定だから当然だろう。
どうせだったら新感線版のこの芝居も見てみたい。過去に『マクベス』はやったことがあった。多分、悪魔軍団と妖精軍団のチャンバラは必至だろう(^o^)
舞台装置や衣装はすべて新聞紙のデザインを使用。実物を加工して使ったのか、それとも模様だけそれっぽくしたのかは不明だ。当然、すべて白黒の世界である。チラシを見ると、過去の上演ではモノクロでなく普通にカラフルなイメージなようだ。
私が見た回の後にはアフタートークがあった。ゲストは映画監督の本広克行で、宮城聡は彼の作品に2回出演しているそうだ。
宮城聡は野田秀樹と同じ中学・高校で、演劇部の先輩として「目撃」してたとのこと。夢の遊民社の芝居はすべて見たが、同じことはできないと思ったそうな。
今回も野田作品をそのままやるのは無理なので、この『真夏~』を選んだ。なんと日生劇場で上演した純粋な商業演劇で、脚本は時事ネタ以外はそのままだが、演出は変えてあるそうだ。
モノクロの世界にしたのは、メフィスト=シェイクスピア=言葉を書く人=黒。そぼろ=野田=これから書こうとする人=灰色。恋人たち=まだ言葉を書いてない人=白。
なのだそうだ。ええっ、そういう意図だったのかい(!o!)
その後、司会役のF/Tのディレクターの人から爆弾発言が。
日本の演劇界はタレント芝居をやり過ぎた。反省している。タレントを使わないと3万人は動員できない。昔はピーター・ブルックで2万人入ったが、今は2千人である。
素晴らしいスペインのダンサーを呼んだけど、全然チケットが売れてない。
--などなど。
そしたら本広監督が、私こそタレントを使った映画ばかりで……などと、苦笑していた。
ところで「スペインのダンサー」というのは、F/Tでこの後出演予定のアンジェリカ・リデルのことなのかな? これも内容全く知らないでチケットを買ったのだ……5500円分の賭けだわなあ。
(アフタートークの内容については、記憶違いなど多々あるので完全な記録ではありません。念為)
さて、この芝居に行ったのはもう一つ理由があって、12月の北とぴあ国際音楽祭にて、パーセルの『妖精の女王』を上演するが、演出と役者を担当するのが宮城聡とSPACなのだ その下見も兼ねてである。
『妖精の女王』だと芝居の部分はほぼシェイクスピアそのままで、音楽(&パフォーマンス)の部分は完全に分離しているのだが……。
野田版は使えないだろうからオリジナルでやるのか。新聞紙のヴィジュアルはそのまま使うのか。役者も音楽場面に乱入するのか--などなど超楽しみであるよ(@∀@)
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