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2016年1月

2016年1月31日 (日)

聴かずに死ねるか:マイナー・コンサート編 2月版

正月の余韻も冷めやらぬうちにもう2月だい(!o!)

*7日(日)スペイン大航海時代の作曲家達(ベアータ・ムジカ・トキエンシス)
*11日(木)ロレンツォ・ギエルミ オルガン・リサイタル
ヴァイオリンとの共演コンサートはパスするので、行った方は感想お願いします
*14日(日)ヴェルサイユ・ピッチで奏でる華麗なフランスの室内楽(有田正広ほか)
1月の上野の公演は不意打ちのモダン楽器だったけど今度こそ古楽器ですね(^^;)

他にはこんなのも。
*4日(木)イェスティン・デイヴィス カウンターテナー・リサイタル
平日に武蔵野はキビシイ……と迷っているうちに既に完売。こちらも感想を。
*12日(金)ロザリオのソナタとオイリュトミー(はたりえほか)
*19日(金)流れのほとりにて 春のバレエ組曲(北谷直樹+大西律子)
*27日(土)タブラトゥーラ

BCJ定期あり。サイドバーの「古楽系コンサート情報」もご覧ください。

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「聖母マリア」:教会で干し柿

160131
演奏:高橋美千子ほか
会場:聖母病院聖堂
2016年1月17日

ソプラノの高橋美千子が聖母にまつわる曲の独唱コンサートを開いた。共演はガンバ品川聖、チェンバロ寺村朋子である。

会場は聖堂といっても新しくかなり広い。過去にコントラポントの公演で行ったことがある。

時代順に作品を歌っていくということで、最初はクレメンス・ノン・パパとセルミジだった。高橋女史というと劇的なバロック・オペラやカンタータを聞いてきたので、ルネサンス曲とは意外である。
しかし、その歌声はいかにもルネサンス期のモテットにふさわしく、ストレートに聖堂に響き渡った。

その後はF・クープラン2曲、畳み掛けるような劇的な歌唱だった。一方シャルパンティエは対照的にゆったりした聖母讃歌である。
カンプラに続いてラストはド・ブッセという初めて聞く作曲家で、1703年生まれだというから完全にバロック終期の人である。この時代になると曲調はするっと心地よいものになるのだなあ、と改めて感じた。

合間に器楽だけの演奏が入り、こちらはマレ、ドゥマシ、ルイの方のクープランというラインナップだった。

高橋女史はルネサンス作品も、低音が続くような曲もしっかりこなし、まだまだ広いミチコの魅力を見せて(聞かせて)くれた印象である。
ただ、私は風邪で熱を出してしまい半ばモーローとしていたので、記憶があいまいなのが残念無念だった。

この日は300人は入りそうな聖堂が満員で補助席まで出たのには驚いた。客入れで開演か10分ぐらい遅れたほどだ。学生風の若い人も多いし(動員?)、某先生や同業者もいたもよう。
なんでも、高橋女史や品川氏にとっては地元らしい(この病院で生まれたとか、母親がミサに出ているとか)。そのせいで、普段は古楽系のコンサートに行かないような人も来ていたようだ。
それから、入口で干し柿売っていたのは何(^^?)


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2016年1月24日 (日)

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」:「老人会」と「子ども会」

160124
監督:J・J・エイブラムス
出演:ハリソン・フォード
米国2015年

言わずと知れた『スター・ウォーズ』シリーズの新作。エピソード6の30年後という設定になっているらしい。なお、私の脳内ではえぴ1~3は存在しないことになっているので、旧シリーズの続きというのはメデタイ


  ★【ご注意】以下は本作を熱愛する人には耐えがたい文章が続いています★
           避けることをお勧めします(^o^)丿


一見して意外だったのは年寄り組のハン・ソロ(&チューバッカ)、レイア姫の出番が多かった事である。顔見世程度かと思ったら、ハン・ソロなんか主役級じゃないの。こんなに活躍とはビックリだ。
特にハリソン・フォードは三人のうちでは一番年上のはずなのに若くて驚く。お肌の手入れにお金をかけてんのかしらん。キャリー・フィッシャーは……(以下無言)

若手三人組についてもフィンとレイに加えてパイロットのポーが入っているのだとばかり思いこんでいたので、三人目がカイロ・レンだったことも意外だった(゜_゜)

ストーリーの方は過去のシリーズ(特にえぴ4)をそのまま踏襲した所が多過ぎで、見ててあきれてしまった。
帝国が衛星型巨大兵器建設中→完成したらマズイんで必死で阻止→パイロットたちが戦闘機で突撃……である。
個々のシーンでも構図を切り取って持ってきたかのようなそっくり多数。ここまで同じだと過去にオマージュを捧げるというより、他に何か考えつかんのかなどと思ってしまう。
熱心なオールドファンは懐かしいと絶賛している人が多いが、私はどうせ金を払うなら新しいものが見たい!

それから何気に『ロード・オブ・ザ・リング』風味が入っているのも気にくわん。特にラスボスが某キャラとかぶっている(中の人も同じ)というのもだ。

それ以外の部分では辻褄合わない展開にびっくりする。あんなに血のにじむような(かどうかは知らんが)修行をしてきたレンが、なんで昨日までフォースのフの字も知らなかった娘っ子や脱走兵にタジタジするかね。誰かあの若いモンに、お前は才能ないからもう止めとけって言ってやってくれい。
大体、レイは誰に教わったわけでもないのに、いきなりフォースの使い方会得しちゃってて、それなら修行なんていらないだろう。

いくらご都合主義でも見ている間はそう思わせないのが作り手のテクニックのはずだが、見てて「えー、これ何よ」とか「いくらなんでもこりゃないだろ」とか失笑してしまうのは困ったもんである。

さらに目立ち過ぎの年寄り組に比して、若者組が???な存在になってるのがまいる。
レイは「闘うヒロイン」という触れ込みだったが、見た目はナウシカそっくり。しかしその言動はナウシカのような「少女」というより、思春期以前の小学生みたい。
彼女を「アニメ名作劇場系少女キャラ」と評している人がいて、思わず「それだ(!o!)」と手を打ってしまった。

もう一人の主人公フィンは殺人を拒否した脱走兵のはずが、コワい担任の女教師と勉強がイヤになって小学校を逃げ出した子どもにしか見えない。まあ、校長はやたら威勢のいい自信家、PTA会長はカンシャク持ちという学校だから仕方ないか。
とさらに、後半ではかつての仲間も容赦なく攻撃してるのはどういうことよと突っ込みたくなる。

レンに至っては……この後二作もあの恨み節に付き合わされるのかねえ。ライトセーバーで操作卓に八つ当たりするのはやめましょう。尊敬する人物と同じマスクを被って気取ってる--ってガキですか。

かようにどうしようもないキャラクターを演じている若い役者の方々は、ごくろーさんとしか言いようがないm(__)m

しかし、一番どうしようもないのはポー・ダメロン。彼は「カッコいいパイロットの兄貴」という以外のものは何もない。ただそれだけの裏も表もない人物だ。しかもフィンが「おれはあのパイロットのリーダーを助けたんだぜ」と自慢する(このこと自体、小学生っぽい)ためだけに存在しているようである。
オスカー・アイザックは『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』『アメリカン・ドリーマー』であんなに素晴らしい演技を見せたのに見る影もないのだった。

最後にBB-8。こいつは丸っこくってカワイイ(^O^) ロボットというよりペットみたい。思わず好感。だが見ているうちに何かあると人間の陰に隠れたり、適当に誰でも「ご主人様~」とホイホイ付いてったりして小賢しいヤツである。
上の丸い頭の部分を持って「え?お前の主人は誰なんだいっ」と締め上げてやりたくなるのだ。

よかったのは、酒場でバンドがレゲエを演奏してたこと。
結論は、頑張り過ぎの老人とふがいない若者の間でなんだかなー(+_+)であった。
それにしても、宣伝が物量作戦でやり過ぎでウンザリしてしまった。スーパーのソーセージだかかまぼこにまで広告入ってるんだもん。あれだけの宣伝費用かけても釣り合うのかと思ったが、大ヒットしたから余計なお世話ですね、ハイ(^^ゞ

上記の文章を読んで、旧シリーズだってご都合主義で薄っぺらなキャラクターじゃないか--と言いたくなる人もいるだろうが、「原初的」であるのと「幼稚」なのは違うんだよと予め反論しておきたい。


年寄りの冷や水:6点
若いモンの粗忽:3点


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2016年1月17日 (日)

2015年度日本インターネット映画大賞外国映画部門投票

今年も投票します。

[作品賞投票ルール(抄)]
 選出作品は3作品以上10作品まで
 1回の鑑賞料金(通常、3D作品、字幕、オムニバス等)で1作品
 持ち点合計は30点
 1作品に投票できる最大点数は10点まで
 各部門賞に投票できるのは個人のみ
 ニューフェイスブレイク賞は俳優か女優個人のみ
 音楽賞は作品名で投票
 以上のルール満たさない場合は賞の一部を無効
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【作品賞】(3本以上10本まで)
  「マッドマックス 怒りのデス・ロード」   6点
  「誘拐の掟」   4点
  「サンドラの週末」   4点
  「ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男」   4点
  「ベルファスト71」   4点
  「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」   3点
  「裁かれるは善人のみ」   3点
  「インサイド・ヘッド」   1点
  「ヴィオレット ある作家の肖像」   1点
【コメント】
最後の1作が決まらず計9作にしました。
ブログ書くのが遅れていて、リンクなしはそのうち書きます(^^ゞ

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【監督賞】              作品名
   [ジョージ・ミラー] (「マッドマックス 怒りのデス・ロード」)
【コメント】
やはりぶっちぎりでしょう。老いてますますお盛ん(*^^)v

【主演男優賞】
   [チャドウィック・ボーズマン] (「ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男」)
【コメント】
伝記ものの主人公ながら実物に顔も体格も全く似ていないというところを逆に評価。
賞レースに全く上がらなかったのは、彼が実際に歌っていないからなのか?

【主演女優賞】
   [マリオン・コティヤール] (「サンドラの週末」)
【コメント】
不安定な人物を不安定に演じるのはなかなか芸がいることではないだろうか。凡人の弱さが余すところなく表現されている。

【助演男優賞】
   [ニコラス・ホルト] (「マッドマックス 怒りのデス・ロード」)
【コメント】
主役二人の陰に隠れているが、こちらも芸がある。

【助演女優賞】
   [レネ・ルッソ] (「ナイトクローラー」)
【コメント】
J・ギレンホールの怪演ばかりが目立つが、彼女の厚化粧に人生の悲哀を感じた(~_~;)

【ニューフェイスブレイク賞】
   [該当なし]
【コメント】
例によって、子役は除外する。若くっても、既にキャリアを積んでる人がほとんどで新人じゃなかったので。

【音楽賞】
  「涙するまで、生きる
【コメント】
担当ニック・ケイヴ。
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【私が選ぶ最優秀悪役賞】
   [ユ・アイン] (「ベテラン」)
【コメント】
いやあ、久々に究極の悪役道を突っ走る人物を見せてもらった。ナッツ・リターン事件なんてのがあったが、韓国庶民の怒りを最大限集約したようなキャラクターである。

【私が選ぶ最優秀姐御賞】
   [フュリオサ] (「マッドマックス 怒りのデス・ロード」)
【コメント】
文句な~し。

【私が選ぶ最優秀ボンクラ賞】
   [アレクセイ・ロズィン] (「裁かれるは善人のみ」)
【コメント】
同じズビャギンツェフ監督の「エレナの惑い」でもボンクラ息子役だったが、今回もボンクラ亭主演技を発揮。今この人ほどボンクラ役が似合う人を知らない。

【私が選ぶ最優秀銃撃戦賞】
   [ブラックハット]
【コメント】
中盤のトンネル内での銃撃戦が見どころあり(^^)b 残念ながらそれ以外に見るべきところがない作品であった。

【私が選ぶ最優秀演説賞】
   [アルマ・コイン首相] (「ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス」)
【コメント】
他に候補としてはイモータン・ジョー(「マッドマックス 怒りのデス・ロード」)、キング牧師(「グローリー 明日への行進」)が上がったが、やはり三大映画祭&オスカー女優賞制覇という栄光を背負ったジュリアン・ムーア扮する首相は強かった。
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のハックス将軍は、ぜひ彼らを見て演説を勉強してもらいたい。

【私が選ぶ最優秀別人賞】
   [ダン・スティーヴンス] (「誘拐の掟」)
【コメント】
見終わった後でもなお「ダウントン・アビー」のマシューだとは全く気付かなかった。この「別人力」は驚きとしかいいようがない(!o!)
ん?単に私がおマヌケなだけか。

【私が選ぶ最凶邦題賞】
  「涙するまで、生きる」
【コメント】
ブログの感想にも書いたが、「生きるまで涙する」でも「涙しても生きる」でも「生きて涙する」でも全く変わらないという恐るべきタイトルである。
次点は「コングレス未来学会議」。なんとか原題を生かそうと苦労したのは分かりますがねえ……。

【私が選ぶちゃぶ台ひっくり返し賞】
  「セッション
【コメント】
この賞は、見終ってあまりの内容に思わず「なんじゃ、こりゃ~。観客をなめとんのか!」(ノ-o-)ノ ~┻━┻ガシャーン と、ちゃぶ台をひっくり返したくなる気分になる映画に与えられる栄光ある賞である。(あくまでも個人的見解です)


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 この内容(以下の投票を含む)をWEBに転載することに同意する。
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2016年1月10日 (日)

「ヒトラー暗殺、13分の誤算」:独裁者死なずとも、自由は死なず

160110
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演:クリスティアン・フリーデル
ドイツ2015年

1939年、とある家具職人がヒトラーの演説会場に時限爆弾を仕掛けて暗殺を謀るも、13分の差で失敗したという実話を描く。近年まで忘れ去られていた人物だという。

犯人は単独で、特定の集団に属しているわけでもない。イデオロギーではなくて客観的な「常識」からナチズムを批判し、独裁者の暗殺に至る。その過程が中心となっている。
団体を組織し、楽しげな催しを開いて人を集め……主人公が住む小さな町が徐々にナチズムに浸食されていく様相はみていてコワイ。気が付けば政治活動をやってた友人は収容所に送られたりしている。

見ているうちになんだか既視感がある--と、思ったら『白いリボン』が、やはり小さな村が変化していく同じような過程を描いていたのだった。(あちらは第一次大戦前)
おまけに主演(クリスティアン・フリーデル)まで同じじゃないですか どうりで見覚えがあるわけだ。もっともハネケの方が容赦なくてイヤミたっぷりだが。

ただ、予想外だったのが夫婦間のDVとか主人公の不倫とか凶悪なメロドラマっぽい部分が結構多かったこと。そこはやや退屈だった。

殴打、拷問、死刑--どの場面もかなり長い描写で見ていてかなり消耗してしまったですよ( -o-) sigh...
もっとも、尋問場面はもっとすごい拷問が出てくるかと恐れおののいていたが、それほどでもなくてまだヨカッタ。最近の、シリア政府軍の拷問なんて聞いただけで倒れそうな恐ろしさである。

監督は『ヒトラー 最期の12日間』のO・ヒルシュビーゲル。
新聞のインタビューで「最近、人々は民主主義でなんでも解決できると過信していないか。必要なら立ち上がり、行動しなくてはならない。たった一人でも、世界は変えられる」と語っていたのが興味深い。


暗殺度:5点
メロドラマ度:7点


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2016年1月 6日 (水)

アートのドキュメンタリー映画二題

160106a
★「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」

監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル
米国2013年

『シュガーマン 奇跡に愛された男』系というか、忘れ去られていたアーティスト発掘という系列のドキュメンタリーである。

シカゴに住む青年がオークションで大量のネガフィルムを買った。中身を見ると、街の日常を映した白黒写真であった。出来が優れているのに驚いた青年がネットにアップすると大反響を巻き起こしたのである。
ただ、美術館などからははかばかしい反応は得られてないらしい。

で、その撮影者の無名の女性の正体を探るというドキュメンタリーだ。
彼女は泊まり込みの乳母(といっても小学生ぐらいまでの子どもも対象)として転々とし、それと同時にいつもカメラを手にしてストリート写真を撮り続けていたのだ。例えば、子どもを散歩に連れて行ったり、買い物のついでに--といった感じだ。

実際に世話をされた(元)子どもたちや家族に話を聞いて回るが、奇人変人偏屈人であったことは間違いない。自分の生い立ちを偽って語り、子どもには虐待めいた扱いをし、天涯孤独だった。
また保存魔で、泊まり込んでる家の自室だけでなく通路などにも新聞などをため込んだという。
そして、彼女の故郷やその最期の地まで追っていく。映画の作り手の側も執念である。

彼女はなぜ作品を公に発表しなかったのか?
最後になぜ全て手放してしまったのか?

恐らく彼女は新聞やら何やらをため込んだ(貸倉庫いっぱい)ように、恐らく人生の瞬間瞬間をため込んでいたのかもしれない。だから、保存しておけば他人の目にさらしたり自分で見返したりする必要はなかったのだろう。

その作品は、インタビューで語られているように同時代のストリート・フォトグラファー(ロバート・フランクなど)と印象が似ている。ただ、個人的にはどうも被写体との距離がなにか隔たりを感じるような所があって、あまり引き付けられない。
M・モンローのポスターと自分の写真を重ねたようなのは面白いけれど……。

彼女の使用していたカメラは上から覗き込む方式のヤツで、昔、私の父親が使っていたのでその点は懐かしかった。


芸術度:6点
変人度:8点

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★「美術館を手玉にとった男」

監督:サム・カルマン、ジェニファー・グラウスマン
米国2014年

米国では結構話題になった事件らしい。
30年もの間、とある男が地方の美術館に有名絵画を「寄贈」と称して、実は自分が描いた贋作を各地で渡していたということが発覚したのだった。2011年というから、まだ新しい話だ。
それが、極めて精巧なので各美術館では疑いもせずに展示していたのだという。中には威信をかけて、受け取ったことを否定する所も……。

贋作を渡したといっても、それで代償を得ているわけではないから犯罪には当たらないらしい。
その守備範囲のジャンルは古めかしい宗教画からピカソ、そして某有名キャラクターまで(著作権には引っかからないの?)なんでもオッケーなのだ。

その男の半生を辿り、もちろん本人にも密着取材する。それと同時に彼を追跡し執着し過ぎで遂にはクビになってしまった元・学芸員にも取材している。

こう書くと謎解きサスペンスっぽいようだが、そういう作り方はしていない。彼の生い立ちを辿る前半はちょっと退屈で眠気虫に取っつかれそうになってしまった。
若い頃に統合失調症と診断され、診療所でボーッとした表情を見せてる男が、いざ贋作を作る段になると天才的な腕前を見せる--その落差、あるいは矛盾が見どころだろう。

遂には、美術館で彼の贋作展まで開かれてしまうのだ(!o!)
その時、多くの人がこれだけの技術を持っているのだから「自分の作品を描いたら」と勧めるが、彼にはその気はないようだ。

多分、他者と関わりを持つ機会がほとんどなかった彼にとっては、自分の絵を描くことよりも「寄贈する」という行為自体を望んでいるのだろう。
インタビューで少しそんなことを漏らしていたと思う。「寄贈している時はまともな人間として扱われる」というような意味のことを。「寄贈」こそが彼の唯一の表現行為なのだ。

それで、今日も彼は牧師の扮装をして「寄贈」に出かけるのである。


ところで、この映画の前に「通学シリーズ」とかいうケータイ小説(?)の映画化作品の予告をやっていた。高校生のカップルがイチャイチャする内容らしい。
この時館内を見回すと、客でこれを見そうな人間は(私を含めて)誰一人いそうになかった。予告はもう少し対象を考えてやって欲しいぞっと。


芸術度:7点
変人度:8点

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2016年1月 5日 (火)

「アンサンブル・ムジカ・パレッテ」:寂しいオペラシティに熱い演奏

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音楽の旅路、バロックからコンテンポラリーへ
演奏:梁益彰、須藤真知子
会場:近江楽堂
2015年12月27日

2015年最後のコンサート鑑賞である。
全く知らないリコーダー&鍵盤の若手コンビだが、どんなもんかと好奇心半分で行ってみた。リコーダーの梁氏は台湾出身とのこと。
二人とも現在アムステルダム音楽院に留学中で、あちらでは何回かコンサートをやっているが日本では初めてだそうである。

古楽面はデュパール、テレマン、ヘンデル、バッハ。梁氏は身振りも大きく勢いよく明快な演奏だった。もっと大きな会場で多人数のアンサンブルで吹いても、決して引けを取らないという感じだ。
テレマンやバッハは超速で吹きまくり圧倒された。
須藤女史はソロでバッハのイタリア協奏曲を披露。こちらも隙なく完成度高い演奏を聞かせてくれた。

サブタイトルにある通り、現代曲のリコーダー独奏も2曲あった。
S・シャリーノと細川俊夫で、前者は元はフルート用の曲らしいが、絶えず細かいタンギングをやりつつ別の音を吹いて入れていくという、驚異的なもの。ひたすら感心しつつ聞いていた。
とはいえ、個人的にはやはり現代曲は超苦手であるよ((+_+))

才能ある人は若い頃にはみな海外留学してしまうので、なかなか若手の演奏を聴く機会は少ない。こうして聞いてみると、才能ある実力派は着実に存在しているのだなあと確認できた。
日本では無名なので客は少なく、そのほとんどは関係者だったもよう。

あと、日曜日なのに開演午後7時半ってのは何故(?_?) 平日だったらまだ分かるけど。クリスマスも過ぎ、大きなコンサートのない休日のオペラシティは閑散として寂しいことこの上なかった(クリスマスツリーは解体作業中)。

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2016年1月 3日 (日)

「ヴェルサイユの宮廷庭師」:美人、バツイチ、庭付き

160103
監督:アラン・リックマン
出演:ケイト・ウィンスレット
イギリス2014年

A・リックマンが監督兼ルイ14世に扮し、庭園設計家ル・ノートルと女性造園家による「舞踏の間」建設を描く。イギリス映画で、舞台はおフランスでもセリフは全編英語である。ロケも英国の城で行われたらしい。

歴史物かと思って行ったら、どうも「女性映画」というジャンルに入りそうな作品だった。男の造園家を押しのけてヒロインは選ばれたのだから、さぞ同業者からの嫉妬と妨害はスゴイもんだろうと思っていると、それは大したことはない。表立って対立する男性はいなくて、二人の仲を焼くル・ノートルの妻の嫌がらせだけがしつこいのである。

ヒロインが未亡人となった過去やその胸中の描写を重視、宮廷になんと「女部屋」があって身分を問わず女同士で連帯する場面が登場し、LGBTにも配慮した作りからしても新しい今様の「女性映画」っぽい。

真っ当で穏当な内容というのが、却って見てて不満を感じてしまう。
まあここは、登場する美男美女や華麗なる衣装や庭園を楽しむのが吉であろう。

K・ウィンスレットはキレイ……憧れちゃう(*'∀') 彼女に当て書きしたようなヒロインで完全ハマリ役だ。
ル・ノートル役のマティアス・スーナールツは星を背負ったエエ男であるが、いかんせん「妻帯者なのが唯一の欠点な二枚目」以上でも以下でもないのが残念。もっと違う役でまたお目にかかりたいもんである。
A・リックマンは嬉しそうにルイ14世を演じていた。

ヴェルサイユの「舞踏の間」って室内かと思ったら、屋外でからくり噴水で囲まれた一画なのだった。真ん中にステージがある。噴水の裏側で楽器演奏してたのか?
衣装や背景に比して、音楽は時代に配慮は全くなし。リュートソングを歌う場面が出てくるが、かなりいい加減だ。ラストの舞踏の間完成お披露目場面ぐらいは、せめてリュリで決めて欲しかった。国王がそこで踊るのがチラと映るけどバロックダンスではなかったようだ。


美男美女度:8点
宮廷陰謀度:5点


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2016年1月 2日 (土)

「木の器クリスマスコンサート」:目指せ!プレゼント獲得

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主催:木の器
会場:近江楽堂
2015年12月25日

前年はお休みだったようだが、毎年行われているクリスマスコンサート。今回は宇治川朝政、福間彩の定番メンバーに加え、ソプラノ鈴木美紀子、チェロ懸田貴嗣という4人だった。

いかにもクリスマスらしいメデタイ曲調の作品が並んだ。
声楽の方ではクレランボーの宗教歌、ラモーの「優雅なインドの国々」より。そしてテレマンのカンタータ。リコーダーの名手だったテレマンらしく、リコーダーが鈴木女史と共に歌っているような作品だった。
しかしこの曲、明るくて闊達な印象だが、歌詞はやたら厳しいですなあ(聖書の「ローマの信徒への手紙」から)。

もちろん、同じくテレマンのリコーダーソナタも演奏。宇治川氏の笛さばきが見事に冴えわたっていて、微妙な音の変化も表現していた。
懸田氏は、「チェリスト以外は知らない、いやチェリストさえも知らない」作曲家バリエールのソナタを披露した。いい作曲家なのになぜか人気がないという。
ついでに、数少ないこの作曲家のCDを出したチェリストの逸話も披露して、会場の笑いを取っていた。曲自体は親しみやすい(聞いている側からは)印象だった。

華やかな曲だと長調ばかりになってしまったので、あえて短調の曲を選んだという福間女史は、クープランのチェンバロ独奏曲だった。「うなぎ」というタイトルの曲があって、フランスにもウナギがいるんだと思ってしまった私は無知でしょうか(^^ゞ

今回一番の聞きどころは、最後にフランスのクリスマス・ノエルを組み合わせて演奏したものだった。伝統的な親しみやすい歌曲と、器楽のための変奏曲が交互に続く。宇治川氏は各種のリコーダーをとっかえひっかえ吹いていた。
鈴木女史は押しの強い完全バロックよりは、この手の落ち着いた歌曲の方が向いているように感じた。
これで完全クリスマス気分に浸れました

さて、最後はサンタが出現して恒例のプレゼント・タイム 出演者から抽選で客にプレゼントが贈られるのだ(!o!) 私と番号一つ違いで当たった人がいて、残念。いつもくじ運が悪いのよ。
そして、会場全員で「荒野の果てに」を歌って終了。チョコレートまで貰っちゃって楽しかったですう~。

ところで、リコーダーも一緒に吹いてたサンタは誰だったんでしょうか? あと客がやはりちょっと少なくて寂しかった。みんな宴会か家でケーキでも食ってたんかい(^^?)

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2016年1月 1日 (金)

聴かずに死ねるか:マイナー・コンサート編 1月版

何もしないうちからもう新年に……(+o+)

*17日(日)聖母マリア(高橋美千子ほか)
*18日(月)室内楽の夕べ~バロック音楽の素敵な世界(有田正広ほか)

他にはこんなのも。
*6日(水)イタリアの香り 18世紀イタリアのリコーダーとチェンバロの音楽(向江昭雅&平井み帆)
*7日(木)フローベルガー生誕400年シリーズ 1 ローマのフローベルガー( 渡邊孝 )
む、無念(>y<;) うっかり歯医者の予約を入れてしまった自分が憎い しかし、計4回シリーズだけどフローベルガーでどれほど客が集まるんでしょか。
*9日(土)バロックの女×男のバロック(高橋美千子&根本卓也)
*11日(月)ヘンデル オラトリオ「イェフタ」(ヘンデル・フェスティバル・ジャパン)
*  〃   ビクトリアの聖母のミサ(ヴォーカル・アンサンブル・カペラ)
*19日(火)17世紀イタリア初期バロック名曲選 モンテヴェルディと同時代(上野訓子ほか)
*23日(日)カッチーニ「エウリディーチェ」(アントネッロ)

サイドバーの「古楽系コンサート情報」もご覧ください。

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