「ザ・ウォーク」(2D版):空中戦とはこのことか
監督:ロバート・ゼメキス
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット
米国2015年
最初は見る予定ではなかったのだが、世評が良いので行ってみた。ということで、同じ実話を扱ったドキュメンタリー『マン・オン・ワイヤー』は見てない。
ニューヨークの(今は無き)ツインタワーを遥かにに臨みながら、自由の女神の上からジョセフ・ゴードン=レヴィット扮するP・プティが、アクの強いフランス訛りの英語で自分のことを語り出す。
子どもの頃から綱渡りに引き付けられ、パリの寺院の塔の間を渡り、遂にはニューヨークの完成間近なツインタワーの間に綱を張って渡ろうと企てる。
全ての状況や心理を主人公が語り倒すという「一人称映画」であるゆえに、実際にあった出来事というより、よく作りこまれたお話のように思える。(『グランド・ブダペスト・ホテル』みたいなイメージ) 一人称だから、実話と言ってもあくまでも主人公の目から見た世界が全てなので、それが真実なのかは分からない。それどころか他者の目を通せば全く別の物語になってしまうかもしれない。
確かにツインタワーがもはや存在しない今、寓話っぽくしたのは正解だろう。
そのこと自体は別にいいのだが、あまりに「語り」の威力が強すぎて作品全編を網の目のように覆っている。しまいには見ていて息苦しくなって辟易してしまった。
ビルに侵入したり(犯罪!)協力者を探すという準備は非常に大変だが、その肝心の「渡る」という行為自体はあっという間に終わってしまって、拍子抜けに思えた。ただ、その後にビルの間を行ったり来たり、さらには綱の上に寝そべったりまでする。このあたりの場面は3Dだったら、非常に恐ろしかっただろう。だが、私が見たのは2Dだったので、落ちやしないかとハラハラするぐらいなもんだった。
失敗した(>_<) 3Dにすればよかった
見ていて気になったのは、こんな企ての資金がどこから出ていたのかということである。旅費やニューヨークの滞在費だって安くないだろうし、あんなワイヤーや機材買うのもかなりの金額必要だろう。大道芸して稼げる金額ではないはずだ。
ゼメキス監督はもうベテラン監督の域なのに、こういういささか変わった感触の作品作りに打って出ている事自体は感心した。それを好きかと問われれば、好きではないけど。
結果として、高所にいるのに解放感よりも、一人語りによる窒息感が勝った。もっと空気をくれい
街並みのCGの映像はよく出来ていて、違和感が全くない。一方、室内場面は照明が印象的。
ジョセフ・ゴードン=レヴィッはほぼ出ずっぱりで、画面の多くを占めている。主人公に綱渡りを教える師匠の「怪しいガイジン」はベン・キングズレー。こういう役で彼の右に出る者はいないようだ。
高度恐怖度:6点
郷愁のニューヨーク度:8点
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