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2016年2月 7日 (日)

「シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語」:喫煙者とお子様禁止

160207
監督:カアン・ミュジデジ
出演:ドアン・イズジ
トルコ・ドイツ2014年

最近、洋画の邦題でやたらと説明的なのが増えてきたが、これもその一つといえるだろう。
タイトルだけ見れば児童向けのような内容に思える。しかし11歳の少年が主人公でも子ども向きでは全くない。子どもと動物が登場するからって感動的な物語でもない。殺伐とした現実をシビアに描いた作品である。

舞台はトルコの田舎町、小学生の主人公は負けん気だけは強いが実際は身体も小さくて、家も貧しく全くパッとしない。学芸会で好きな女の子と主役をやりたいが、それは村長の息子の役だと既に決まっている。
彼の将来は、歳の離れた兄を見ている限り暗澹たるものである。兄はロクな職もなく、グータラと時間を過ごすのみ。

そんな少年がひょんなことから闘犬(当然、非合法)で負けて死にかけた犬を助ける。シーヴァスとはその犬の名前だ。少年の手当てで復活したシーヴァスは再び闘犬に挑み、勝利を続けるのだった。
そうなると、もう学校なんか行く必要はない。大人たちにまじって闘犬の試合へ行くのだ。村長の犬にだって勝ったし--。

荒涼たる風景、殺伐とした人間関係、いい加減な教師、無力な両親。少年は決していい子ではない、自分が負け犬なのを半ば自覚して常にイライラしている。そんな光景がかなり激しい手ブレカメラで描写される。
その中に登場する巨大なシーヴァスは、少年にない「力」の象徴であり、一度負けたのが復活するというのは彼の希望のよりどころに他ならない。

もっとも、闘犬自体はなんだか殺伐としたものである。人目につかぬ荒野に男たちが大勢車で乗りつけ集まって札束が行き交う。巨大な犬の片方が瀕死状態になるまで闘うというのは、闘争の美学なんて観点とは程遠く、気が弱い人間には見ていられないだろう。

ラストで、少年が唐突にとある決断をして大人たちを驚かせる。それまでの全てをひっくり返す決断だ。だけどそれがあまりに伏線もなく唐突過ぎて、観客もやはり「sign02」状態になってしまうのであった。
もう少し、そこら辺の過程や心理状態を丁寧に描いてほしかった。

監督はこれがデビュー作とのこと。ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞獲得。
この映画で一番驚いたのは、少年がタバコを吸う場面が出てくるのだが、そのタバコの部分にモザイクがかかっていたことである(!o!)
な、なんで……(?_?)
レイティングのためなのか? エロやら暴力ならともかく、タバコ吸う描写自体がダメなんかい。事前にネットでそういうモザイクがかかるのを知ってたのでまだしも、突然あの場面を見たらなんのことか分からず混乱しただろう。あきれたもんであるよ。

そういや、『木曜日のフルット』というマンガに出てきたエピソードで、映画を見に行ったら途中にやたらと「未成年者の喫煙を奨励するものではありません」とか「役は未成年ですが俳優は成人です」とか「投げ捨てたパンはスタッフが回収しておいしくいただきました」などという注意書きが登場してきて興ざめした、というのがあって大笑いしてしまった(^○^)
そういう状況になるのも近いかもbomb


人間度:6点
犬度:9点

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