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2016年4月 9日 (土)

「禁じられた歌声」:音楽無くして心死す

160409
監督:アブデラマン・シサコ
出演:イブラヒム・アメド
フランス・モーリタニア2014年

日常の視点からイスラム原理主義の支配を描く。
舞台はマリ共和国のティンブクトゥ、武装し装甲車で町中を走り回る原理主義者たちは道往く女たちに髪と手を覆えと強制し、子どもたちのサッカーを禁止する。夜の街をかぎまわる姿はまるで秘密警察だ。
家の中で歌を歌っている男女を摘発し、目を付けた娘を無理やり「妻」にする。一方で。ラッパーだった若者は悔い改め彼らの仲間にならなければならない。中には死刑になる者も。

もっとも、実は彼らは陰でサッカー談義をしたり、タバコを吸ったりしているのだ。さらに「村の狂女」(?)みたいな中年女だけは、長いドレスをまとい髪を振り乱して車の前に立ちはだかっても見逃される。どうも彼らの昔の知り合いで「治外法権」になっているようだ。
その女は建物の屋上に昔の家財道具を置いて暮らしていて、古い冷蔵庫(もちろん電気は通じてない)があったりする。そこだけは古びた西欧の名残りがかすかにあるようだ。

それとは別に、羊飼いの一家を襲う悲劇が描かれる。こちらはやや現実を離れた神話的な作りになっていて、正直のところ羊飼いの父親はひがなゴロゴロしていてこれで食っていけるのかと心配になってしまう。
原理主義者たちはここにも押しかけてきて、母親に色目を使ったりする。(←しょうもないヤツら
予告や宣伝ではこの一家の娘である少女が中心であるかのようだったが、実際は群像劇と言っていいだろう。

羊飼いの一家と、川で漁をして暮らしている一家は、人種も生活様式も言語も全く違う。同じ宗教の下、同じ地域に暮らしていながら様々な人々が存在する。裁判をするにも通訳が二人必要など、大変だ~。そういう複雑な世界の状況を目の当たりにできる映画といえよう。

ただ、テンポや演出があまりにのんびりし過ぎて、一部の役者の演技はなんだか非常に素人っぽい。これはわざとやっているんだろうか(監督はマリ出身の人)。アカデミー外国映画賞にノミネートとは信じられない。

とはいえ、ラストの少女の行く末には泣けちゃったですよ(T_T) 実は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』と同時期に見たのだが、真にフォースが必要なのはこっちの少女の方だいっ 神様どうかこの子にフォースを与えてやってくだせえ(-人-)


素朴度:7点
求心度:4点

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