「マネー・ショート 華麗なる大逆転」:バブルの崩壊を待望する人々
監督:アダム・マッケイ
出演:クリスチャン・ベイル
米国2015年
評判がよく賞レースにも上がっていたので見に行った。結果は、個人的にはどうも合わなかったとしか言いようがない。最近、こんなのばっかだ(+o+)
そもそも経済が苦手な人間が、サブプライム・ローンの破綻とかリーマンショックなんて題材の映画を見に行ったのが間違い。これは予習が必要であった。
取り上げられているのは深刻な内容だが、語り口はポップで明るく分かりやすいように思える--あくまでも「思える」のであって、本当に分かりやすいかどうかは不明。「マンガで分かる××」という本が、マンガで説明されてもやっぱり「××」の部分が実は難しくて理解できないことがあるのと同じ。
それに、きれいなネーチャンがバスタブつかりながら説明してくれても、だからどうなのよって感じだ。
描かれるのは、実体のないローンのシステムを見ぬき、世の流れに反してバブルの崩壊を見越した方向に投資する男たちである。彼らは浮かれている世情を批判的に眺め、あたかも腐敗した社会に一撃を食らわせようとしているように描かれている(C・ベイル扮するトレーダーは純粋に投資者の利益になると考えていたようだが)。
だが、よくよく考えれば結局は方向は違えどローンをネタに金をもうけるということには変わりないのでは? 向きがどっちかが違うだけの話だ。
別にモラルを求めるつもりはないが、あたかも彼らが反逆者とか英雄であるかのような描き方に、やや詐術的な匂いを感じてしまった。
私はこれを見ていて、昔読んだ『核戦争を待望する人々』(朝日選書)という本を思い出した。キリスト教原理主義者を取材したルポだが、彼らは最終戦争が起こって世界の終末が訪れた時に、自分たちだけは上空から光の柱が降ってきて天国へと吸い上げられていくのだと信じているのである。
まるで同じではないか。ここで描かれる男たちは最終戦争ならぬバブルの崩壊が起こった時に、金の柱で自分たちだけは助かると信じていたのだから。
というわけで、後味悪いことこの上ない映画だった。
それとは別に、ブラッド・ピットは自分が製作に携わっている作品でいい人の役ばかりやるのはいかがなものであろうか、と苦言を呈したくなった。
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