「キャロル」:美しい絵画を見る
監督:トッド・ヘインズ
出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ
イギリス・米国・フランス2015年
1950年代初頭のニューヨークを舞台に、ヒッチコックのような細心かつ周到な手つきで二人の女性の愛を描いている。
衣装、小道具、街の光景、音楽--どれも見事に決まっている。ややくすんだ色の映像も魅力的だ。
エドワード・ホッパーの絵画を思わせるところもあり、退廃かつレトロな雰囲気だ。
レストランで告白する場面はカメラの切り返しがスリリングで、見ていてドキドキしてしまった。ここではブランシェット扮するキャロルに吸い寄せられるような気分がしたのだが、実際カメラが微妙に近づいているのか?
それにしてもケイト様の眼ぢからには恐れいる。ギューッと引っ張り込まれるようだ。ラストシーンの視線も強烈である。ビバ!ケイトと叫びたくなる。
一方、ルーニー・マーラのテレーズも、なんかオドオドしていてかつキュートという訳の分からない状態をうまく表現している。女優二人が昨年度の映画賞レースを賑わしたのも当然だろう。
この恋は悲恋に終わるのか--と思わせてラストに救いを予兆させて終わるのも良かった。
……と、いいとこだらけのはずのこの映画、にもかかわらず二人の関係がどういうものなのか見ていてさっばり分からなかったのはどういうことだろう。一体、彼女たちは普段何を話しているのか?何をしているのか? 全く浮かんでこないのだ。
愛さえあれば言葉なんか不要だという意見もあるだろう。でも結構長い間、一緒に旅行しているんだからさ。そういう部分の描写もあっていいはず。
二人は階層や趣味嗜好も異なっているだろう。どういう部分が共通する部分だったのだろうか。それが描かれてないから、何やらこの恋物語は美しい一枚の絵を眺めているよう。実体がなく漠然とした印象しかないのだった。
それに加えて、全てに細心すぎ凝りすぎてて見てて気が抜けないのも欠点に思えた。
結論は「ケイト様ばんざい\(◎o◎)/!」で終わるのであろうか。
まあ、そもそも恋愛映画苦手な人間が見に行ったのが間違いということだわな
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