「ルーム」:部屋は我が家に非ず
監督:レニー・アブラハムソン
出演:ブリー・ラーソン
米国2015年
日本での出版時、ミステリー・ファンに話題になった小説を原作者自身が脚本担当で映画化。アカデミー賞に複数部門ノミネートされ主演女優賞を獲得した。
当然、話題作なわけだが、見た結果はどうも今一つな印象を受けた。
17歳の少女が変態野郎に拉致監禁されて、物置小屋みたいな狭い所に何年も閉じ込められて男の子も生まれ……という件りが、意外と早く終了するのは予告などで大体予想できてたので、以外ではなかった。
息子をなんとか脱出させてその後自分も解放されて以降が結構長く、力点が置かれている。しかし、ここの描写があまり納得いかないものだったのである。
初めての外界にパニック状態となる少年が、子どもゆえに柔軟な適応力があり世界になじんでいくのに対し、自宅に生還したヒロインの方は逆に段々とうつ状態に陥っていく。
だがここの描写が物足りない。本来ならマスコミ取材は苛烈で最低一か月ぐらいは張りついているだろうに、帰宅した時にちょこっと騒ぎを見せるだけ。
それに、ご近所、親類縁者、昔の同級生やら恩師やら何やら怒涛のように押し寄せてくると思うのだが、そういう場面や言及は一切なし。
また、実の父親が少年(孫にあたる)に触れるどころか見もしないと、帰宅直後にヒロインがブチ切れるのだが、直接そのような場面は登場しない。だから、彼女がいきなりヒステリックに叫んでいるように見えてしまう。
父親役は折角のウィリアム・H・メイシーなんだから、もう少し登場させてくれてもいいのに、ほとんど出番なく早々に退場しちゃうのだった。
ヒロインを追い込むような描写があまりしつこいと観客の方もいたたまれなくなってしまうが、TV出演のエピソードぐらいしかないというのもどうよ(?_?) 全て少年目線の語り口だから仕方ないとはいえ……
ラストは感動的なだけに残念である。
彼女は陸上選手だったというから、狭い部屋に閉じ込められてその苦痛は想像するだに恐ろしい。ちょうど日本でも似たような事件が発覚したので余計にだ。
狭い部屋も息苦しいが、広いはずの外界も息苦しい。そして、演技合戦の映画も息苦しさを感じるのであった。
確かに主演のブリー・ラーソンはオスカーの価値はあるだろう(他のノミネート作品を未見なので比べられないが)。この人、『ショート・ターム』の主人公だったのね。まだ若いのでこれからに期待。
息子役の少年の屈託ない演技に感服した。それと、母親の再婚相手役のトム・マッカムスとワンコが、重苦しい中で救いです(^o^)丿
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