「ズートピア」(字幕版):理想郷に○○はいない
監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア
声の出演:ジニファー・グッドウィン
米国2016年
ディズニー・アニメの新作は「アナ雪」同様、日本では口コミで尻上がりに大ヒットした。
私はといえば、そんなことは予想だにせず公開初めに急いで見に行った。なぜなら、時期が遅くなると字幕版が終わってしまうのが常である。後からすれば、そんなに焦る必要はなかったのに。
様々な動物が肉食も草食も共存する社会。多民族・人種が仲良く共生し、体格が違おうと完全バリアフリー社会という設定だ。現実の世界で当てはめてみると、公民権運動後に完全に平等になったような感じである。
しかし現実の公民権運動後も差別が残ったように、理想と見える社会にも色々と陰の部分があるのだった。
そんな架空の世界を背景に、ストーリーは往年の快作『48時間』を思わせる、新米警官(ウサギ)と憎めない詐欺師(キツネ)の速成コンビが、ギャグっぽい駆け引きを繰り返しながら事件を追いかけていくというものである。
様々な動物たちがそれぞれの特性に合うように作られた地域にすみ分けながらも共生している様は、エネルギッシュで多様性に富んでいる。
個々の動物の設定や小ネタがおかしい。小さなネズミがマフィアのボス(『ゴッドファーザー』をなぞったセリフを語る)で、巨大なシロクマがその用心棒とか。運輸局窓口のナマケモノのネタは相当笑える。これは米国では現実に免許更新にすごい時間がかかるのをギャグにしているとのこと。
個人的におかしかったのは、ヌーディストクラブの場面。映画の観客にとっては動物が裸なのは普通だから見てて何とも思わない中で、ヒロインのジュディだけが顔を真っ赤にして恥ずかしがっているというギャップが笑える。(それを涼しい顔して眺めているキツネのニックがまたなんとも……)
よくできていると思ったのは、小さなお子様はいろんな動物がウロチョロ登場するしているだけでも嬉しいだろうし、事件の謎の解明は警察ものやミステリ好きに受けるだろう。また、働く若い女性は、努力家の優等生なヒロインが警官になってからの挫折感に共感することだろう(警察署長がジュディに対し、世間の「アナ雪」指向をクサす場面あり)。「OLあるある」みたいな事例がたくさん。--と、様々な面から色々と楽しめる作品だということだ。
また、多数派による差別という社会派な面も大きい。彼女の言動と失敗によって、不断の努力によってのみ、差別なき社会はかろうじて維持されるということが突きつけられるのだった。そして被差別者が同時に差別者になることもだ。
見て誰もが面白がれて、しかも何事かを考えさせられるようにエンタテインメントを作るというのは大したものである。感心したっ\(◎o◎)/!
ラストは警察物の定番としてみると、詐欺師のキツネには「やっぱり俺には性に合わねえや」と警官になるのをやめるのが性格的には合っているんじゃないのと正直思った。しかし、「他人をだますのが本性と思われているようなヤツでも正業の警官になれる」というのがテーマの趣旨だから、これはこれでいいのだろう。
見終わった後で、高校生ぐらいの女の子がニックの事を「ああいうヤツ大好き!すごいカッコイイ」と騒いでいたのであった。ニック、巷では大人気である。
ところで、吹替版のキャラクター一覧をたまたま見たら「芋洗坂係長 マイケル・狸山(日本版オリジナルキャラクター)」というのがあったのだけど、もちろん字幕版にはなかった。これってその国に合わせて誰か登場人(動)物を差し替えてあるのかね(^^?) 芸が細かい。
さて、監督が来日した折に「現在の肉食獣は何を食べているのか(^^?)」と某タレントが質問したらしい。監督がなんと答えたか知らないが、作中に唯一登場しない哺乳類とは何かを考えてみよう。
そして、同じディズニー系列のピクサーアニメである『アーロと少年』のワンコ同様の少年の扱いを考えると答えは自ずから明らかになるはず……。
(ーー;)
に、人間?……(>O<)ウギャーッ
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