「ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン」:金にしまり屋でも音楽は錦
泣く子も黙るJBの生涯をつづるドキュメンタリー。ただし、音楽面と社会運動との関わりに焦点を絞っていて、家族など私生活の面はほとんど出てこない。
ライヴ映像と当時の関係者のインタヴュー、そしてもう少し下の世代のファンや評論家のコメントから構成されていて、その編集には無駄もスキもなくタイトに進行する。
しかも、功績と共に暗黒面が忌憚なく描かれていて容赦ない。
そこから浮かび上がってくるJB像とは--天才の苦労人(だから努力しないヤツは認めない)、ライヴでの演奏には厳しい、金には吝嗇でメンバーの支払いをケチり、他人を信用せず、政治的には公民権運動からやがてニクソン支持の保守派へ、というものである。
暴動を抑えたという、キング牧師の暗殺直後の伝説的ボストン公演はもちろんハイライトになっている。その彼がなぜ共和党支持に回るのか、という経緯もちゃんと解説されていた。
音楽面では、待遇に文句を言ったM・パーカー兄弟をそっけなくクビにし、ブーツィ・コリンズ達を雇う。その背景には、ホーン中心からエレキギター・サウンドへ転換するという計算があった。
しかし、B・コリンズは当時二十歳前だって? 才能のある奴というのはスゴイもんであるなあ。
伝記映画の『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』と比べると、劇映画とドキュメンタリーの映像の文法の違いが分かる。
それと、伝記では子ども時代を過ごした親戚の売春宿がちゃんとした木造の家だったけど、実際の写真を見ると掘立小屋みたいであったよ……。
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