« 「木々との対話 再生をめぐる5つの風景」 | トップページ | 「ブルックリン」:大西洋に掛ける二股 »

2016年9月10日 (土)

「生きうつしのプリマ」:死者と生者どちらがコワイか

160910
監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ
出演:カッチャ・リーマン、バルバラ・スコヴァ
ドイツ2016年

『ハンナ・アーレント』が話題となったトロッタ監督の新作。

ミュージシャン志望ながら鳴かず飛ばずの女性が、父親からネットで見たニューヨークのオペラ歌手の写真が母親とそっくりなんで、行って会って来いと頼まれる(どちらかというと、命令される)。
この冒頭部分からして「?」印が付いてしまう。
ドッペルゲンガーではないが、世に自分とソックリな人間は7人いると一般に言われる。ネットの画像ぐらいでドイツからはるばるNYまで行くか(?_?)ってな疑問を抱くのであった。(結局、心当たりがあったってことか)

彼女は同棲してた恋人ともついでとばかりにアッサリ別れ、ニューヨークへ向かう。なんとその女性はメトロポリタン・オペラのプリマ歌手なんであった……。

謎なのは、母親がいつ何歳で亡くなったのかというような詳細が、最初のうちは明言されないこと。だから見てて混乱してしまう。初めのうちは「死んだと思っていた母親が生きていた!」というような話かと思っていた。
なぜそっくりなのかという謎は段々と明らかになってくる。それと共に最初はヒロインを拒絶していた歌手とも段々と打ち解けてくる。

母親の隠された過去と父親の「罪」について、何があったのか--という主題は、求心力を持たせるような描き方ではないのでサスペンスは盛り上がらない。かなりとっちらかった印象である。
描かれたのは家族の絆について考えさせ、感動させる--というのではなく怖さを感じさせるような印象だった。ラストに至ってはホラー映画のようである。

ただ、父親のいい歳こいた「兄弟げんか」の場面には爆笑してしまった。

バルバラ・スコヴァはアーレントを演じてた時とは正反対。完全にプリマ歌手のオーラを堂々と放っている。しかも自分自身で歌っているのは感心した。

ヒロイン役はどこかで見たと思ったら、『帰ってきたヒトラー』で女性TV局長やってたひとなのね(!o!) あれとは打って変わって、結構アバウトな性格な女性を演じている。
でも、彼女が歌ってる場面は1回だけでよかったかな……

--と、いささかクサしてしまったが、これはなんと監督の実話を元にしているのだという 監督の写真を見た女性がある日訪ねてきたとゆう……ええ~っ、まさに事実は映画より奇なりである。


| |

« 「木々との対話 再生をめぐる5つの風景」 | トップページ | 「ブルックリン」:大西洋に掛ける二股 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「生きうつしのプリマ」:死者と生者どちらがコワイか:

« 「木々との対話 再生をめぐる5つの風景」 | トップページ | 「ブルックリン」:大西洋に掛ける二股 »