« 2016年9月 | トップページ | 2016年11月 »

2016年10月

2016年10月23日 (日)

「イザベル・ファウスト&クリスティアン・ベザイデンホウト オール・バッハ・プログラム」:完成形バッハ

161023
会場:彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
2016年10月10日

日本で名前の覚えにくい外国人演奏家上位に輝くC・ベザイデンホウト(カタカナ表記も諸説あるらしい)、これまでの来日はフォルトピアノばかりだったが、この度チェンバロを弾くということでヴァイオリンのイザベル・ファウストと共に来日公演をやるという。こりゃ行かねばなるまい、ということで休日の埼玉を選んだ。

プログラムはヴァイオリンとチェンバロのソナタから1・3・6番と、その合間にそれぞれのソロ演奏で無伴奏ヴァイオリン2番、トッカータ(BWV913)が入るというもの。

ファウストは元々モダンの人とのことだが、近年オリジナル楽器を入手して本格的に古楽演奏を実践しているそうな。彼女の弦の音はスッキリとして夾雑物がなく劇場を伸びやかに満たした。本人も弾くのがなんとなく嬉しそう
しかし、楽章ごとに(緩急ごと?)弓を交互に変えるというのは初めて見た(!o!) 作品の時代によって楽器を変えるというのは結構あるが……。

一方、ベザイデンホウトはファウストと共演している時は彼女を支えて盛り立てるような印象。だが、独奏のトッカータとなると何やらリラックスしてノリのよい演奏だった。えっトッカータってこんな前向きな曲だったっけ、録音買ってみよう(^o^)丿と思ったほどだ。

全体的に、名手による真摯なバッハの理想形が聞けたと言ってよいだろう。

が、しかし、しかしである。このように美しく完成したバッハを聞いてもなお(-_-;)……私個人が古楽演奏に求めるのは、歪んで不均衡なゴツゴツした限りなくノイズに近くブチ壊れたり小汚かったりする音なのである。
仕方ないのよ、だってひねくれ者だもん(^^ゞ

161023b
ところで、ただ今「さいたまトリエンナーレ」というのをやっているらしい。その展示がさいたま劇場でもあった。演劇のチラシを漁りに地下へ降りて行ったら、ガラスに囲まれた中庭みたいな場所に巨大な赤いビニールの花があったのだ。しかも空気を送っているらしく間隔を置いてフヨ~ンと動く。眺めているだけでも面白い。
実は同じ作者の作品がもう一つあったらしいのだが、どこにあるのか全く分からなかった。もうちょっと派手に掲示してくれい。
161023c
←上から見下ろしたところ
終演後、薄暗くなってきたら花芯の部分がボーッと光を放っていた。夜になったらまた別の印象を与えるに違いない。
ただ、ここでの展示はこの作者の2点しかない。スペースあるのにねえ……。これだけのためにわざわざ与野本町まで来るのはちとキビシイ。


| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月22日 (土)

「トン・コープマン&アムステルダム・バロック管弦楽団」:超速バッハ

161017
会場:東京オペラシティ コンサートホール
2016年10月3日

振り返れば数年前、コープマンとABOが来日するというので、私としては珍しく別のコンサートの会場で前売りしていたチケットを購入したのであった。
が、なんと招聘元が破産したとかでキャンセルとなり、チケぴなどで買っていたら払い戻しになったのに直接購入だと払い戻しなし、ということで丸損になってしまった。
そんなことも今ではいい思い出である(^<^)……わけがな~い

で、今回は無事に来日。誠にメデタイ
オール・バッハ・プログラムということで、管弦楽組曲、ブランデンからそれぞれ2曲ずつ。そしてカンタータからのシンフォニアも2曲であった。

全体の印象としてはテンポが速く、キビキビと進んでいく。比喩ではなく、本当に測ったらスタンダードな演奏より相当に時間が短かったと思う。トランペットは穴開きのものだったが、もし穴なしのナチュラル・トランペットだったら、例えメンバーにトランペットの魔術師マドゥフ氏がいたとしてもあんなに早くは進行できなかっただろう。

そのためか、時折音がヨレヨレフラフラする所があった。最初、私の耳が老化したのかと思ったが、後でネットを眺めたら同じようなことを書いていて人がいたので耳のせいではなかったようだ。

とはいえ躍動感あり、バッハの定番すぎる曲を改めて新鮮に聞かせてくれた一夜であった。
アンコールは管弦楽組曲より3番の有名な「アリア」と4番最終楽章だった。いずれもコープマンが手を下げ終わるまで客席はシーンとして、フライング拍手など一切なかった。気分良し
カーテンコールの拍手は鳴りやまず、一旦引っ込んだメンバーがまた出てきたほどだ。

コープマンはメンバー全員と握手して回っていた。こういうのをやるのはイタリア系ばかりだと思ってたら違うのね……。

161017b

オルガンコンサートの時と同様、やはり彼はピョコピョコとお辞儀をし、サイン会でも頑張っていたですよ(^O^)


| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月16日 (日)

「ゴーストバスターズ」:女の友情と機械と幽霊

161016
監督:ポール・フェイグ
出演:メリッサ・マッカーシー
米国2016年

初代『ゴーストバスターズ』は映画館で見た。米国で大ヒットというのが日本でも結構評判になってヒットしたと記憶している。ただ、マシュマロマンについては米国の観客に大ウケというのが今イチ理解できなかった。(今でもよく分からん

--てなことぐらいしか覚えていないのであるが、過去作を復習したりせずにリメイク、じゃなくてリブート版見に行きました~)^o^(

主要キャラクターがオリジナルと男女入れ替わっているので評判に……どころか、公開前から誹謗中傷の嵐が吹き荒れたというのでも話題になりましたな。
クリス・ヘムズワースの美男秘書も前作を踏襲しつつ、これまた男女逆転しているが、あまりにおバカ過ぎるんで言葉を失うというような人物を嬉しそうに演じていましたな。

前半から中盤の、4人が集まってお化け退治開始のくだりは爆笑する場面とそうでもないところが交互に出てきて、見てて困ってしまった。
彼女たちはSNLで人気だそうだが、TVのギャグのテンポを映画にそのまま持ち込んで間延びしてしまった印象。これは演出の問題だろう。

後半のアクション場面になると展開が生き生きとしてくる。ただ、登場する人形とか清教徒のパレードとか米国人でないとよく分からないネタが多い。前作に出ていたキャラがそこここに出没する。幾つ見つけられるかな、というお楽しみもあり。

また、80年代ネタのギャグも多かったので、軍隊や警官が踊る場面ではてっきり「スリラー」みたいにそのまま迫ってくるのかと予想してたら、結局何もなかった。よくよく考えるとあれはゴーストではなくてゾンビでしたな(^^ゞ

終盤の救出作戦でのエリン&アビー「女の友情」には萌えましたっ
キャラクターとしては、巷ではホルツマンの人気がやたらと高いのだが、なんだかモロ「男の子」がそのまま女に横滑りしたみたいで、個人的にはあまり興味を持てなかった。ただ、ラストのレストランでの「演説」は感動したっ(^o^)丿
4人目のパティについては折角の「NYを知り尽くす歴女」という設定なんだから、1時間ぐらいウンチクを語り倒して他のメンバーを圧倒する、というような場面が欲しかったところだ。

全体としては役者はいいし、下手に恋愛ネタなど出て来なくてスッキリしているけど、演出に難ありというところだろうか。果たして続編は作られるのかな……(^^?)


| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月10日 (月)

「テレマン in パリ」:テレマン先生旅日記

161009
大人気作曲家が旅先で見たもの
演奏:前田りり子ほか
会場:石橋メモリアルホール
2016年10月2日

しばらく前にテレマンの「パリ四重奏曲」コンサートがあって、解説ではテレマンがパリの名うての演奏家たちに向けて書いた作品とのことだった。今度は中心メンバーがほぼ同じ演奏家たちにより、その逆の立場--テレマンがパリで実際に耳にしたであろう音楽を再現してみようという企画である。

まずパリ四重奏曲の中の一曲から開始。その後はフォルクレ、ブラヴェ、ルクレール、クープランと当時の名作曲家にして名演奏家たちの世界が展開する。
ブラヴェのフルート協奏曲はもちろん前田りり子が吹きまくって、神技的演奏を聞かせた。一方、寺神戸亮はルクレールのヴァイオリン協奏曲を。こちらはルクレール魂を背後に背負って立つかのごとき、汗ほとばしる熱演である。この作曲家はソナタはよく聞いてるが、協奏曲は初めて聞いたような(^^?)

対称的にフォルクレ作品をガンバとチェンバロで弾いた上村かおりと曽根麻矢子は、ゆったりとした親密さを感じさせる空気を醸し出していた。テレマンもどこかのサロンでこんな風に聞いたのかしらん、などと思ってしまう。

ラストはF・クープランの「リュリ讃」。パリ在住というヴァイオリンの小池ユキ氏がフランス語で朗読したけれど、別に日本語でもいいんじゃないのとか思ってしまったのはナイショである。(まあ、コンサートの趣旨からいえばやはりフランス語か)
寺神戸&池上コンビの演奏はあたかもコレッリとリュリが降臨したようであった。

休憩入れて2時間半近く、盛りだくさんでムギュッと充実していたコンサートだった。これで4千円は安過ぎです\(◎o◎)/!
新・福岡古楽音楽祭でも同内容でやったもよう。うらやましいぞ、福岡

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月 8日 (土)

バッハ・コレギウム・ジャパン第119回定期演奏会:ウサ耳ロバ耳、人間の耳

161008
世俗カンタータ・シリーズ8
会場:東京オペラシティ コンサートホール
2016年9月23日

今回は世俗カンタータ2曲。ステージ上にはチェンバロ2台が置いてあり、マサアキ氏は指揮しながら弾いていた。

前半の「さあ、晴れやかなトランペットの高らかな音よ」は過去のカンタータを改変して10年ぐらい後にザクセン選帝侯をヨイショするために演奏したという。
しかもどこで使われれるのか不明な行進曲が付いていて、最初にこれを演奏してる最中にマサアキ氏(とコーラス)がステージに出てくるという次第。(その後に、マイク使って解説あり)

2曲目のレチの背後のチェンバロが波の音を模していたり、5曲目の後のリトルネッロではステージの左端からトランペット、右端からオーボエが互いに吹き交わして思わぬステレオ効果が発生して面白かった。

4人のソリストにそれぞれ均等に見せ場(聞かせどころ)があり、その意味でも気配りをきかせた作品と言えるかもしれない。

「急げ、渦巻く風よ」はギリシャ神話を元にしたストーリーで喜劇的に展開する。無謀にも音楽の神アポロンに音楽合戦を挑む牧神パン。勝負か既に決まっているようなものだが、それを乗せる神がいれば、パンを応援してしまう人間(ミダス王)もいて--とドタバタする。

前半と違い、ソリストたちは色とりどりのシャツを着て登場。特にパン役のD・ヴェルナーの赤いシャツが異様に目にしみた(^O^;)
彼の役柄は桁違いの相手に身の程知らずで増長し玉砕してしまう、という粗忽な役回りなので、もう少し「根拠なき自信満々」みたいなのを押し出して欲しかった。そのアリアは器楽部分がヴァイオリンのみという手抜きっぽい作りになっているが、決してつまらない曲ではないので、あわよくば聴衆の耳を奪ってやるぜい<`ヘ´>ぐらいの勢いでよかったのではないか。

ジョアン・ランはいかなるキャラクターもそつなくこなしていた。初登場のニコラス・パン(ヒスパニック系?)は声量あれど、部分的に個性強すぎ(?)の感あり。
もう一人のバスでフェーブス(アポロン)役のC・イムラーも初登場だっけ(^^?) かれの歌った5番のアリアは確かに名曲である。声楽部分だけでなく、器楽パートもヴァイオリンが細い糸のように余韻を引っ張る部分など繊細で美しい。
しかも内容が美少年ヒュアキントスを愛でる歌で、何やら微かにエロチックなイメージが漂う。バッハ先生がこんな曲を書いてたなんて嬉し恥ずかしくってイヤンなどと思ってしまうのであった。

ミダス王がロバの耳にされてしまうエピソードに合わせて、ロビン・ブレイズがウサギの耳(の飾り)を持ってマサアキ氏の背後に忍び寄り頭に乗せようとする(マサアキ氏が髪振り乱して必死に指揮していたので結局失敗)、などというオマケもあって、会場が笑う中で終了したのであった。

マドゥフ氏を始めとするトランペット隊や他の笛部隊も快調だった。
今回のコンマスは寺神戸氏だったが、たまたまなのかな?

ギリシャ神話の本を幾つか見てみたが、このエピソードについては「パンの音楽は本当にひどかった」というのと、「結構聴衆にウケていてミダス王は正直な意見を言ったのに、アポロンが怒った」という両方の説が載っていた。
まあ、音楽に優劣はつけられないってことで(^_^;)
161008b_2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月 1日 (土)

「ハイ・ライズ」:中層階の男

161001_2
監督:ベン・ウィートリー
出演:トム・ヒドルストン
イギリス2016年

J・G・バラードの原作をトム・ヒドルストン主演で映画化となれば、見に行かずばなるまいよ。ただし原作未読です(^^ゞテヘヘ

50階建ての高層タワーマンション。中にスーパーマーケット、ジム、プールなどがあり、職場に行く以外は自給自足状態となっている。そのまま階級社会の縮図であり、上階には富裕層、下の階は低所得層が住んでいる、という分かりやすい状態だ。
美しい庭園がある最上階に住む設計者にしてオーナーは神の如くであり、さらに周辺に同じようなマンションを幾つも建てて「世界」を構築しようと考えている。

原作は70年代中ごろに書かれ、この映画でも時代設定はその時期になっている。
医学者の主人公はちょうど中間の25階に引っ越してくる。下層階では電力不足が起こったり、プールが使えなかったりして不穏な空気が漂い始める。一方で上階では退廃的なパーティーが開かれ、彼は見下された扱いを受ける。(そこで給仕として働いているのは、彼よりさらに下層の住人)

オーナーからは目をかけられ、上階の住人達には駒のように扱われ、傲慢な美女からコナかけられ、下層の家族からは頼られる存在の主人公は、オールラウンドな人気(?)があるが、その内奥は虚ろのようだ。
スーツに身を固めたトム・ヒドルストンは、いかにもバラードの世界にピッタリのよう見える。

とはいえ、終盤近くで彼がこのマンションの「備品」だと他の人物から評されるセリフを聞いて、そうか彼は備品だったのか(!o!)と私は今さらながら驚いた。どうせだったら、セリフでなくて実感させてほしかった。
むしろ彼は危ういシーソーを支える中間の台のように思えた。マンションの秩序の崩壊と共に彼もまた変貌する。しかし、それがあまりに急で途中を端折ったようにしか見えないのは困ったものだ。

階下の粗野なジャーナリストはイヤな奴過ぎて(ルーク・エヴァンスが好演)、そのワイルドな暴力性がマンションの秩序を揺るがすと言われても納得できない。むしろ喜んでバルコニーから放り出してやりたくなる。

かくして何一つ納得できないまま終了するのだった。まあ、70年代っぽい話と言えばそうなのかも知れないんだが……。
トム・ヒドルストンのファンなら見て損しないということだけは確かである。


ところで、この映画のマンションほど高層ではないマンションの低層階に住んでいる者として実態を紹介しよう。上層階に行くほど価格が高くなるというのは事実である。最上階は購入価格がなんと一ケタ違うほどだ。それどころか、同じ階でもベランダから富士山が見えるかどうかで値段が違ってくるのだよ

エレベーターを使っていて、高層階のボタンを押す人がいると観察してみるのだが、別に外見では全く分からない(当たり前か(^<^)
それに低層にはメゾネットがあってここはまた価格が高いので高低はあまり指標にはならないだろう。
で、そのメゾネットに住んでる中年夫婦がまたいつも小汚い格好をして歩いている。どれぐらいかというと、下町の長屋の住人が庭の水やりにちょっと外へ出た--ぐらいの格好なのだ。謎である
それに停電になったら上階の方がかなり不利じゃないかと思うんだが……。。

それよりも、この映画で一番気になったのはバルコニーから火の付いたタバコやら空き瓶やらボンボン投げることだ。25階からやったら死人が出ます\(◎o◎)/!


| | | コメント (0) | トラックバック (0)

聞かずに死ねるか:マイナー・コンサート編 10月版

小さくない秋があっという間にやってきました

*2日(日)テレマン in バリ(前田りり子ほか)
新・福岡古楽音楽祭でやるものと同一プログラムのようです。
*3日(月)コープマン&アムステル・バロック
*  〃  ユハネス・プラムゾーラー:淀橋教会小原記念チャペル
期待の新進ヴァイオリニスト。よりによってコープマンと重なるとは……(>_<) さもなければ絶対行ったのに。
*10日(月)イザベル・ファウスト&クリスティアン・ベザイデンホウト
他にも数か所で公演あり
*12日(水)音楽の花束 芝崎久美子メモリアル
*14日(金)愛の風景(鈴木美登里&今村泰典)
*18日(火)調和の霊感 ヴァイオリン音楽の泉(桐山建志ほか)
*21日(金)・24日(月)フライブルク・バロック・オーケストラ
ベルリン古楽アカデミーに続き、来たキタキタ~ッ
*26日(水)日本ヘンデル協会レクチャーコンサート(原雅巳ほか)
*27日(木)明日館オリジナル楽器コンサート3(有田千代子)

これ以外にも多数あり。サイドバーの「古楽系コンサート情報(東京近辺、随時更新)」もご覧ください。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年9月 | トップページ | 2016年11月 »