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2016年10月 1日 (土)

「ハイ・ライズ」:中層階の男

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監督:ベン・ウィートリー
出演:トム・ヒドルストン
イギリス2016年

J・G・バラードの原作をトム・ヒドルストン主演で映画化となれば、見に行かずばなるまいよ。ただし原作未読です(^^ゞテヘヘ

50階建ての高層タワーマンション。中にスーパーマーケット、ジム、プールなどがあり、職場に行く以外は自給自足状態となっている。そのまま階級社会の縮図であり、上階には富裕層、下の階は低所得層が住んでいる、という分かりやすい状態だ。
美しい庭園がある最上階に住む設計者にしてオーナーは神の如くであり、さらに周辺に同じようなマンションを幾つも建てて「世界」を構築しようと考えている。

原作は70年代中ごろに書かれ、この映画でも時代設定はその時期になっている。
医学者の主人公はちょうど中間の25階に引っ越してくる。下層階では電力不足が起こったり、プールが使えなかったりして不穏な空気が漂い始める。一方で上階では退廃的なパーティーが開かれ、彼は見下された扱いを受ける。(そこで給仕として働いているのは、彼よりさらに下層の住人)

オーナーからは目をかけられ、上階の住人達には駒のように扱われ、傲慢な美女からコナかけられ、下層の家族からは頼られる存在の主人公は、オールラウンドな人気(?)があるが、その内奥は虚ろのようだ。
スーツに身を固めたトム・ヒドルストンは、いかにもバラードの世界にピッタリのよう見える。

とはいえ、終盤近くで彼がこのマンションの「備品」だと他の人物から評されるセリフを聞いて、そうか彼は備品だったのか(!o!)と私は今さらながら驚いた。どうせだったら、セリフでなくて実感させてほしかった。
むしろ彼は危ういシーソーを支える中間の台のように思えた。マンションの秩序の崩壊と共に彼もまた変貌する。しかし、それがあまりに急で途中を端折ったようにしか見えないのは困ったものだ。

階下の粗野なジャーナリストはイヤな奴過ぎて(ルーク・エヴァンスが好演)、そのワイルドな暴力性がマンションの秩序を揺るがすと言われても納得できない。むしろ喜んでバルコニーから放り出してやりたくなる。

かくして何一つ納得できないまま終了するのだった。まあ、70年代っぽい話と言えばそうなのかも知れないんだが……。
トム・ヒドルストンのファンなら見て損しないということだけは確かである。


ところで、この映画のマンションほど高層ではないマンションの低層階に住んでいる者として実態を紹介しよう。上層階に行くほど価格が高くなるというのは事実である。最上階は購入価格がなんと一ケタ違うほどだ。それどころか、同じ階でもベランダから富士山が見えるかどうかで値段が違ってくるのだよ

エレベーターを使っていて、高層階のボタンを押す人がいると観察してみるのだが、別に外見では全く分からない(当たり前か(^<^)
それに低層にはメゾネットがあってここはまた価格が高いので高低はあまり指標にはならないだろう。
で、そのメゾネットに住んでる中年夫婦がまたいつも小汚い格好をして歩いている。どれぐらいかというと、下町の長屋の住人が庭の水やりにちょっと外へ出た--ぐらいの格好なのだ。謎である
それに停電になったら上階の方がかなり不利じゃないかと思うんだが……。。

それよりも、この映画で一番気になったのはバルコニーから火の付いたタバコやら空き瓶やらボンボン投げることだ。25階からやったら死人が出ます\(◎o◎)/!


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