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2016年11月 3日 (木)

「奇跡の教室」:人生に解答なし

161103
監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
出演:アリアンヌ・アスカリッド
フランス2016年

フランスの高校の落ちこぼれクラスが、アウシュヴィッツを題材にした発表で歴史コンクールの優勝に至るまでを描いた作品。実話を元にしているという。
予告では感動系な話になっていたが、見てみるとドキュメンタリー風の淡々とした作りになっていた。

問題のクラスは学級崩壊寸前、ベテラン教師が担任していてかろうじて形を保っているが、若い臨時教師なんか来たらイビリ倒してしまう。教師にとっては悪夢のような光景だろう。生徒同士のいじめや反目もある。
このままではイカンと担任がなんとかコンクールに参加を促すが、離脱するヤツあり、班同士でいがみ合ったりする。

合間にはフランスの学校での宗教問題が挟まれる。毎朝、校舎の入り口には教師が立ってイスラム教徒のスカーフを取らせる。あらゆる宗教シンボルはダメなので、キリスト教の十字架も禁止。それ以外に帽子やイヤホン……制服はないが日本と同じぐらいに厳しいかも。それどころか、放置していると保護者から文句が来るらしくて大変だー。
29もの民族が在籍しているというのだからそれも道理か。
一方で、ISもどきを気取る原理主義者生徒もいて校内を徘徊している。

かような状況をテンポ早く描き、感傷に陥る暇もなく、あらゆる問題がすし詰め状態となって続く。
そして、多くの問題は解決されることなく終了するのだった。問題を抱えた生徒がここに問題を解決できるはずもなく、そのまま続いていくものだからだろう。
従って、ベタな感動を求める人には全く向いていない映画である。
担任役のアリアンヌ・アスカリッドはまるで本物の教師のよう……って、役者なんだから当然ですね、ハイ(^^ゞ

そんなバラバラの一団がなんとか協力する術を見つけ、読みなれぬ資料を読み、ミュージアムを訪れ、コンクールへ参加する。
しかし、私が一番衝撃を受けたのはその本筋ではなく、アウシュヴィッツの体験者をクラスに呼んで話を聞く場面であった。彼は本物の体験者で(撮影後に死去)、生徒を演じる若者たちの前で話しているわけだがその内容は涙なしに聞けないものである。
その彼が生徒の質問に対して「神を信じていない」とキッパリ断言したのであるthunder

宗教・民族問題に汲々とする現代の若者たちの前でのその発言は、そのような争い自体を無化してしまう深い衝撃を与えるものであった。
そう言えば、数学者のピーター・フランクルの父親が(母親も?)収容所体験者で、やはり信仰を捨てたということだった。
強制収容所の前には神は存在しない、のであろうか。

かような内容なせいか、映画館内は中高年の客ばかりで若者の姿はなかった(^_^;)


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