「フライブルク・バロック・オーケストラ」:看板は老舗でも音は新品
とある日、NHK-FMの「古楽の楽しみ」を聞いていてたら、バッハの「3つのヴァイオリンのための協奏曲」がかかった。それを聞いて私は「ん?この曲ってこんなモッサリした感じじゃなくて、確かもっとテキパキした演奏で聞いた覚えがあるぞ」と思った。
そして、CD棚を探し回ったあげく発見したのが、フライブルク・バロック・オーケストラのものだったのだ。
1993年発売、まだT・ヘンゲルブロックがいた頃の録音である。聞いてみると、冒頭のヴィヴァルディの序曲から始まって、既にこの時代でイタリア過激派に引けを取らないエネルギッシュな演奏だ。ラストのバッハ「3つの~」に至っては煽り立てるようで興奮する。
で、思い出したのが今回の彼らの来日公演。バッハやヴィヴァルディの混合プログラムのはずである。チラシを見るとこの「3つの~」もやるではないか ただし、私がチケット買った月曜日ではなくて、金曜の方である。
かくして私は2回トッパンホールへ足を運ぶことになったのであるよ(@_@;)
21日の金曜日はCD同様、ヴィヴァルディの「オリュンピアス」序曲から始まった。これがまた怒涛のような勢いの派手な曲である。
今回は前の来日時のような管楽器はなくて、弦だけの編成だ。ソロは大体ミュレヤンスとゴルツを中心に回している。
ヘンデルの合奏協奏曲は2つのヴァイオリン(この時はゴルツとP・バルツィ)がナタで空気を斬るが如く。ある意味アバンギャルトと言っていい世界を醸し出して、「えっ、ヘンデル先生がこんな曲を」と叫びたくなった。
ゆっくりと重々しく地を這うような、もう一曲のヴィヴァルディのシンフォニア「聖なる墓にて」に続いて、来たキタキターっバッハ「3つの~」。昔の録音同様にやはり煽り立てるような勢いは変わらず、迫力ある果敢な「攻め」の演奏だった。
コレッリの合奏協奏曲となると、過去にさんざ聞いてきたはずなのだがものすごくスリリングでドキドキ興奮してしまった。
アンコールはヘンデルの合奏協奏曲から別の曲(月曜日のプログラム)だった。
24日の方は、作曲家は同じだが選曲が違うというパターン。この日は早々に売切れになったのだけど、何が違うのだろうか?(と言いつつも、私も最初にチケット買ったのはこちらだった(^^ゞ)
この日は特にバッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」がよかった。色々な録音やナマ演奏で何回も聞いている曲だが、あの美しい第2楽章が美しいだけでなく何か切々としたものを伴って迫ってくるのは初めてだった。思わず聞きほれる
恥ずかしながら、この曲を初めて聞いたのは映画「愛は静けさの中に」だった。主人公の男がレコードをかけてウットリしていると、聴覚障害者の恋人から「どんな音楽なのか」と尋ねられてうまく言葉では説明できない、というシーンである。
同じく有名曲のヴィヴァルディ「4つのヴァイオリンのための協奏曲」では、一同がグルッと客席に向かって半円を描くように立って、めまぐるしくソリストが変化するこの曲を躍動的に弾きまくった。
こういうのを見ると(聞くと)、彼らはイタリア過激派とは違って突出した個人を際立たせるのではなく、あくまでもアンサンブル重視で相互のコミュニケーションを保つようにやっているのだなと感じた。
他にヘンデル、コレッリの合奏曲もやり、アンコールはヴィヴァルディ。この曲は三鷹市公演でやったもののようだ。
どちらかというと、21日公演の方に軍配を上げたい。それこそ調和と刺激のバランスの極限みたいな演奏だった。
全体的には、過去に聞き古したような「名曲」が今新たに洗濯しなおされ、パリッと糊をかけられて新品同様になって登場しなおしたような印象。「ああ、これはこんな曲だったんか~」と眼を(耳を)開かせる。あらためて、古楽を聞き始めた頃の気分を思い出した。
つくづく、聞けてヨカッタヽ(^o^)丿
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