バッハ「ミサ曲ロ短調」:合唱の迫力は人数に比例、するわけではない
演奏:バッハ・コレギウム・ジャパン
会場:彩の国さいたま芸術劇場
2016年11月12日
BCJは一年おきぐらいにロ短調ミサをやっているのだっけか。確か前回はパスしたように記憶している。
今回はオペラシティ公演でなく、翌日のさいたま劇場を選んだ。
以前出したCDよりも歌手の人数が増えているようだ。加えて小さな会場が小さなものだから、迫力満点。合唱は均衡が取れて整然とした美しさがみなぎっている。冒頭からそんな声の渦はホールの壁を揺るがすようで、その中に巻き込まれる気分だった。
そこには美の混沌と秩序の双方が現れていたといってよいだろう。やはり、合唱の曲だとヒシと感じた。
整然としすぎていたという意見も見かけたが、整然としていなければこの混沌を完璧には表現できないはずだ。そのような矛盾を秘めている曲だとも言える。
一方、器楽の人数は変わらないから、アリアを除くと合唱に埋もれてしまっているような瞬間がところどころあった。
鍵盤奏者はガイジン勢で、なんと一人で二役というか左手でチェンバロ、右手でオルガンを同時に弾くという芸当をやっていた。オルガンの上にチェンバロ重ねて載せてそういうことをやったのは見たことあるけど、左右というのは初めてである。なんでも鈴木(息子)優人氏がこの日だけ欠場したせいらしいが……\(◎o◎)/!ビックリ
私の座っていた席のせいかもしれないが、オーボエやファゴットなど管楽器がドーンと直に伝わってきた。また、マドゥフ組のトランペットも堪能できたですよ(^O^)
ソプラノ2のソリストはお馴染みジョアン・ランで6曲目のアリアは、彼女のキャラクターによく合っていた。ただ、他の曲ではやや精彩を欠いていた所があったかも。
もう一人のソプラノ朴瑛美は初めてなので、もうちょっとよく聞いてみたかった。
テノール担当櫻田亮は「ベネディクトス」を超が付くくらいに明晰に歌ってくれた。「神の子羊」については、以前聞いたロビン・ブレイズの時には何やら俗世を離れ身体浮遊しているような印象だったが、今回のダミアン・ギヨンは力強く、生きている感が伝わってきた。
前半第1部は統一感があって形がピシッと決まっているが、後年付け加えられたという第2部以降はそれと比べるとやはり異質な部分がある。果たして実際に演奏されたことがあるのか、という議論もそういう所からも湧いてくるのかもしれない。
古楽の演奏は一声部一人という極端な形まで至るように、歌手の人数を減らしてきた。もちろん、古楽系のロ短調ミサでも大人数の合唱を使うところはある。
BCJの演奏はその狭間を歩んでいるのだろうか--などと考えてしまった。
その反動で、家に帰ってジョシュア・リフキン指揮のCD(一声部一人を完璧に実践)を引っ張り出して聞いた。何やら全く別の曲のような趣きあり。
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