バッハ「マタイ受難曲」:劇的と静寂のはざま
演奏:バッハ・コレギウム・ジャパン
会場:彩の国さいたま芸術劇場
2017年4月15日
恒例のBCJの受難曲公演、さいたま芸術劇場でやる時はいつも、オペラシティの本公演ではなくこちらを選んでいる。中規模の会場で音響もいいのだ。
それでも、座席自体は端や後方しか取れないのが常だが、今回はなんとほぼ真ん中の座席をゲットできた。ヤッタネ(^○^)
満員御礼で追加席も出たくらい。運が良かった 周囲に騒音を立てる者もいず、前席に背の高いヤツもいないという、理想的な鑑賞環境となった。
冒頭の合唱がゆっくりなテンポで驚く。オペラシティではもっと遅かったというから相当なもんである。
それに加えて、いつになく劇的であった。福音史家のB・ブルンスは声量たっぷりで会場の隅々にまで響き渡り、押し出しも強い。過去のBCJでのG・デュルクとは対称的だ。
またイエス役のバス、C・イムラーもやはり感情を強く表わした歌唱である。これなら、今までBCJをアッサリし過ぎていると敬遠していた人も納得な演奏であろう。
ただ、終盤の65番のバス・アリアは劇的がたたって、この曲のさわやかで晴れやかな面があまり感じられなかったのは残念だった。こういうところはさじ加減が難しい。
常連ロビン氏は本来コーラスに入っているはずが、入口に急告チラシが立っていて、別の女性アルトが代役で入るとのこと。独唱だけを担当したのだった。これはこの日からなのか(?_?) それとも前日のオペラシティでも同じだったのか。
ともあれ、代役作戦が功を奏して感動的なアリアを聞かせてもらいました。
ソプラノのH・モリソンは超が付くくらいの小顔なのに驚く。チラシの写真と違って髪がショートカットになっているので余計にそう見えた。首をちょっと傾げて歌うさまはモディリアニの絵の女性像みたいである。
彼女のソロも素晴らしく、最後の晩餐の場面から12番のレチ→13番のアリアという流れは聞き入ってしまった。
また「全曲でただひとつ通奏低音を欠いたアリア」である49番の独唱も極めて印象的だった。この曲でもフルに威力を発揮していたオーボエは三宮正満とあのトーマス・(涙のオーボエ)・メラナーであるよ(^o^)丿 最強オーボエ・コンビと言ってよし
あと楽器関係でチェロ&ガンバはE・ジラール担当だったが、ガンバが活躍する57番のアリアではやはりビミョ~な音に…… やはりS・クイケンがマタイ来日公演でやったぐらいに、長い時間をかけて調弦しなおさないとダメなようである。バッハ先生の時代はどうしてたんだろか?
終了時にフライング拍手の類は一切なく、これもヨカッタ
ふと思ったが、バッハ先生がこの曲ぐらいに渾身の力をこめてバロック・オペラ作曲したらどんなだったろうか。まあ、宗教曲と世俗曲を比べても仕方がないか。
いつも受難曲を聞くと、その折々でグサッと来るコラールの歌詞が異なるのだが、どこぞのミサイル騒ぎが続くこの日は32番の「主よ、この危機にあっても私を顧み、どうぞ偽りのたくらみから私をお守りください」という一節が身にしみたのであった。
それにしても休憩入れて約3時間半。全国ツァーで4連チャンやるというのは、本当に大変だなあと感じた。演奏家はタフでなくてはやっていけないのね
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