「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」:異なる世界の片隅に
ベルリン映画祭で受賞したということでも話題になったドキュメンタリー。
イタリアの端っこののどかな島の生活と、小型船に定員の十倍も乗り、地中海を渡ってきてその近海に流れ着くアフリカ・中東の難民たちの姿を捉える。
難民は直接島に漂着するわけではないから、島民とは接触することはない。唯一の例外が島の医師で、彼はかなりの数の難民の検死を行なうそうである。
島の生活はまるで昭和の日本のよう。島民は漁で生計を立て、ラジオからはイタリア歌謡としか形容しようがない音楽が流れる。一人の少年の日常に密着するが、ネットもゲーム機もなし。廃墟となった家に潜り込み、木の枝を削ってパチンコを作り、戦争ごっこに興ずる。
一体いつの時代だ~(@_@;)
一方、救助を求める難民船に入ったカメラは船の最下層に積み重なる数々の死体をとらえる。生き延びた人々も茫然としパニック症状で震えが止まらなかったり、泣きだしたりする。
こちらの方の映像は極めて衝撃的だ。見ていて冷汗が出る。
しかし、カメラはあくまでも淡々と、決して交わらぬ島民と難民の姿を並行して撮っていくだけだ。同じ時、同じ場所に、両極端に異なる世界が互いに接することなく存在する不思議。
難点は島民の描写に明らかに演出が入っていること。そうすると、この平穏さも作為的に強調されたもんじゃないの?などと疑わしく思ってしまう。
さらに延々と日常生活を撮っているもんだから(スパゲティ食べてるところとか)、退屈過ぎて映画館内を眠気虫が跋扈し、文字通り「沈没」してしまうのであった。
こういう対比が「わざとらしくてイヤ」という意見が出てきても致し方ない。
個人的にはもう少し島の場面を削って短くしてほしかった(上映時間は2時間弱)。ただ、この「退屈さ」こそが監督の意図したところかもしれないが。
第2次大戦中に島の沖を軍艦が通った話が出てきたが、それを考えるとこの島は歴史的に海上交通の要衝にあるのかも知れない。
そういう部分ももう少し知りたかった。
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