「おとなの事情」:知らぬが仏、知れば鬼
監督:パオロ・ジェノヴェーゼ
出演:ジュゼッペ・バッティストン
イタリア2016年
イタリア製喜劇。それもかなり黒~い笑いに満ちている。いや、それより笑うに笑えないというところか。
幼なじみの仲良し男四人組が、恒例の夕食会を行う。今宵も皆、奥さん同伴でメンバの一人の自宅マンションに集合。このマンションが低層でかつ広い!(うらやましい)
もっとも、バツイチのオタク系教員の男は恋人を連れてくると言いながら、病気で来れなくなったと一人でやって来たけど。
今では職業も家庭の事情も異なる彼ら、チクチクと不穏な会話が飛び交う。
そのうち、妻の一人が全員のスマホ・ケータイをオープンにしてやり取りを聞かせ合うゲームをしようと言い出した。全員、互いに秘密はないのだから、と
そして食卓の上を電話とメールが入り乱れる。
結果は……恐ろしい秘密がボロボロと(ーー;) 明るみに出る不和リアルタイムで広がる亀裂 見ているだけで冷汗が出てウギャーッ(>O<)となるのは間違いない。
しかし驚いたことに、ラストはそれまでの経緯を全てひっくり返すような意外なものになっているのだ こりゃ、一体どういうこったい。
多くの人はこれを、登場人物が何もなかったことにしているのだと解釈してたが、そうじゃないだろう。この結末は、ある意味「並行世界」である。(SFじゃないけど)
作り手はハッキリと具体的に「異なる世界」だと示している。獣医妻の口紅とか、弁護士の妻が出て行った時間差とか、イヤリングの件とか。
パンフレットでは、監督が結末の方が実際に起こったことだと明言しているそうだ(私はパンフを買わなかったので詳細不明)。
虚偽と破滅、一体どちらがいいのかと観客に問うているようである。もっとも、いくら隠してても早晩バレそうな秘密もチラホラ いずれにしても安泰ではいられない奴もいるのは確か。
舞台はほとんどマンションの一室に限られている。しかも、ほとんど食卓に輪になって座って喋っている場面ばかり。しかし、セリフや編集が巧みで飽きさせることがない。
現場の撮影方法など疎くて知らないけど、1人がテーブルで喋ってる場面を切り返して反対側から撮ったら、向かい側のカメラが入っちゃわないのか? うまく隠しているのか、それとも同じ場面を繰り返して撮影しているの?(とてもそうは思えないが)
もちろん、役者の皆さんもリアリティのあり過ぎな演技で感心の一言である。
原題をそのまま英訳すると”PERFECT STRANGERS”となるらしい。意訳すれば「夫婦は他人の始まり」ってとこか。
まことに濃ゆい大人向けの皮肉なコメディである。さすがイタリアだね~。
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