ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2017
今年のLFJのテーマは「ラ・ダンス 舞曲の祭典」ということで、古楽系の公演も多いのではないかと期待したが、あっさりと裏切られた。
ガイジン勢が2組、国内組が鈴木秀美と中野振一郎だけというお寒い状況だった。これでは、もうテーマの如何に関わらずLFJには期待できないなと思ってしまった。
★「ファンダンゴ・バロック」(No.333)
演奏:テンベンベ
会場:ホールB5
5月6日
メキシコのバロック&民族音楽を演奏するグループで、器楽演奏者4人と女性歌手1人という編成である。もっとも、バロック・ギターを弾いていた輝かしい頭の人以外は歌も担当していたもよう。
「ラテン・バロック炸裂」というような形容詞は、まこと彼らにこそふさわしい。
スペインの宮廷音楽家だったムルシアの作品やコレッリのラ・フォリアと、メキシコの民謡を全く違和感なくつなげて演奏してしまうのだ。実際、バロック曲が海を渡って当地の音楽に影響を与えたらしい。
そのパフォーマンスは躍動的で力強い。最後の曲では向かい合った男女の求愛ダンスと歌が始まったかと思うと、男性の方が這いつくばってイグアナダンスを踊るのだった。これは会場でウケていた。
さらにアンコールでは、女性歌手が客席にいた若いメキシコ人(?)の関係者を引っ張ってきて、ステージで踊ったりもした。
楽器も珍しいものが登場。リーダーのレオナルド氏が座っている巨大な木箱みたいな楽器の側面には、薄い鉄琴みたいなのが付いていて、これを叩いて演奏する。
また、動物の顎の骨を使ってるらしいリズム楽器やちっこいモスキート・ヴァイオリンなどもあった。
やはりラテン物はご当地の人にかないませんと、ヒシと感じた。もし、再度来日することがあればぜひタブトゥーラとガチンコ対決共演してほしい。もちろん、イグアナダンスに対抗する踊りも用意して、だ(^o^)丿
★「大衆音楽から宮廷音楽へ:パッサカリア、シャコンヌ、フォリア、ミュゼット、タンブラン」
演奏:フィリップ・ピエルロ&リチェルカール・コンソート
会場:ホールB5
5月6日
テンベンベと同じ会場、次の公演は常連のリチェルカール・コンソートだった。
メンバーは4人でピエルロ(ガンバ)以外はR・ツィッペルリング(ガンバ、「ツィパーリング」じゃないの?)、E・エグエス(テオルボ、「エグウス」じゃないの?)、F・ゲリエ(チェンバロ)という顔ぶれだった。
曲目はテンベンベでも登場したムルシア、オルティス、サント・コロンブ、そしてマレとラモーが二曲ずつだったが、その中に様々な舞曲が登場する。
聞きごたえがあったのは、ガンバ・デュオによるサント・コロンブ、そしてマレの「スペインのフォリア」。後者はピエルロの熱演で場内を圧倒した。
同じプログラムの4日の公演はNHK-FMで生中継されたので、聞いた人も多いと思うが、実際に目の前で見、耳の前で聴いてみると、今回のプログラムはピエルロのワンマンバンド、ならぬワンマングループ的な性格が強いものだった。ちと驚いたです(^^ゞ
ゲリエなんかあまり活躍するところが少なくて、勿体ないと思えてしまった。ゲリエ個人のファンもいるだろうから、夜遅くの時間帯でもいいので独演会やって欲しかったな~。
拍手は鳴りやまず、ただでさえ時間オーバーだったが、短いアンコール(フォリアの最終部分)もやってくれたですよ
曲順がプログラムの記述と変わっていたのに、ハッキリとした案内がなかったのは不親切。一言アナウンスしてくれればいいのに(掲示してあったらしいが分かりにくい場所)。
5日は別プログラムで、さらに奏者が2人増えて、ピエルロはトレブル・ガンバを弾いたらしい。こちらも聞きたかったが、チケット獲得に出遅れて無念であった(;_:)
テンベンベの後に少し時間があったので、無料のエリアコンサートというのに行ってみた。弥勒忠史と佐藤亜紀子による初期バロックの歌曲集である。
同じ時間帯に地下のホールで「栄華のバロックダンス」というのもやっていたのだが、使用楽器がピアノになってるので敬遠した。
プログラムには場所が「新東京ビル」になっているが、当日に国際ビルに変更された。サイトでは修正されてなくて、私は弥勒氏のツイッターで知った。
ビルの一階は高級ショップが並んで入っているような場所で(ほとんど休店日だったもよう)弥勒氏の高音のみが天井にガンガンと反響し、リュートはよく聞こえない状態だった。おまけにロープが張られた正面のみだけしか立てず、横から見ることは許されないので、チビの私はほとんど何も見えないのである。
加えて、背後の自動ドアから人が出入りする度に湿気のある熱風が吹いてくるので(リュートの調弦は大変だったろう)早々に退散した。
やはりタダほど高いものはない、とはよく言ったものよ。
そのうち中止になるのではないかという噂もあるLFJだが、来年は「エグザイル」(亡命)というテーマで無事開催するとのこと。
亡命というか放浪というか、あちこち渡り歩いた音楽家も含むらしいので、ヘンデル先生はピッタリと適合か あとダウランドなんかも? バッハがないことは確かだろう。
まあ、期待しないでおく方が精神衛生上よろしいようである。
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