コンチェルト・イタリアーノ来日公演
*「聖母マリアの夕べの祈り」
会場:神奈川県立音楽堂
2017年6月3日
リナルド・アレッサンドリーニ率いるコンチェルト・イタリアーノがモンテヴェルディ生誕450年ということで来日した。誠にメデタイことである。
こういう記念イヤーでもないと、有名な古楽団体でもなかなか来日してくれないものだ。
一方で、モンテヴェルディはあまり好きな作曲家ではない--と書くと、不快に思う人もいるだろうが、こればっかりは相性の問題だからどうしようもない。
音楽史的に重要な作曲家であることは重々承知しているが、聞いてみてもどうにも「優れている」とは思っても「好き」という心境にはなれないのが事実である。
この「聖母マリアの晩課」も美しく、よく出来ていて完成度が高いが、それが高過ぎてどうも親しみにくいという印象だ。とはいえ、コンチェルト・イタリアーノが来るなら聞きに行かずばいられないだろう。
ということで、横浜まで足を運んだ。三鷹でも公演があったが、平日だと行きにくいので土曜の横浜公演を選んだのだ。
とはいえ、残響が少な過ぎるこの県立音楽堂はあまり古楽向きではないので(おまけに座席が超狭い)、できれば他の所で聞きたかった。
もっとも、逆に残響あり過ぎる東京カテドラル聖マリア大聖堂みたいな会場もいただけない。何事もほどほどがよろしいのよ(^^♪
さて、舞台に上ってきたメンバーの数がかなり少ないのに驚いた。過去に数回この曲の生演奏を聞いたことがあるが、これまでで一番小規模である。器楽13人、歌手10人。ヴァイオリンなんか二人しかいない。
だが、音は立体感にあふれてまるで音の建築のようだった。しかも自在に形を変化させる。さらに、比較的前の方の座席だったので、ダイレクトに生々しくこちらを直撃した。後ろの方の座席だとどう聞こえたかは不明だが。
その起伏ある音作りが、この曲を生き生きとよみがえらせているようだった。ソプラノ2人は最初、いまひとつ調子が出ていなかったようだったが、テノールの片方の朗々とした歌唱が場を牽引した印象がある。
どの曲も「あれっ?こんな曲だったっけ」と感じてしまうような新鮮さあり。
特に後半の11番「聖なるマリアよ、私たちのために祈ってください」はソプラノと器楽が交互に歌い交わす曲で、いつも「完璧に構成されたキレイな曲だなー」という感想で終わっていたが、この日の演奏ではなんだか踊り出したくなるようなリズムを持つ曲になっていたんで驚いた(!o!)
その後、ラストのマニフィカトでさらに華麗に盛り上がり、最後の最後にはコルネットとそしてトロンボーンの強力な音が奔流のように座席の間を駆け抜けて会場を満たしたのであった。正にこの時私は感動したっ。
そして、感動のあまり「モンテヴェルディ先生、正直言ってすまんかった。今まで誤解していた」と土下座体勢でm(__)m謝りたくなったのである。
歌手の何人かはLFJやバロックオペラの上演で過去に来日してた人もいたようだ。声楽のアンサンブルは文句なし。ただ、エコーの部分は、舞台の端で後ろ向いて歌うという方法はあまりいただけないと思った。会場の関係なのか? 三鷹ではどうだったのだろうか。
管楽器の演奏もまた素晴らしいものだったが、コルネットが一人来日中止になったらしく、代わりに上野訓子が入っていた。
面白かったのはテオルボの二人。真ん中で指揮するアレッサンドリーニのよりも前面、左右に配置されて半ば向かい合うように座っていた。それが、休憩明けの9番「天よ、聴いてください」では半円状に並ぶ歌手たちの両端に座って完全に歌手の方に向かって弾き、客席には背中を見せていたのだった。
久方ぶりに古楽魂を色々刺激されたコンサートだった。横浜まで行ってヨカッタ(*^^)v
フォーチュンクッキーを買って帰ったですよ。
*イタリアバロックMazzo di Madrigale(世俗歌曲の花束)
会場:ヤマハホール
2017年6月8日
「コンチェルト・イタリアーノ・スペシャル・アンサンブル」と銘打たれて、アレッサンドリーニ御大がチェンバロで、さらにテオルボ2人、ソプラノ2人の残留組によるコンサートがあった。
モンテヴェルディの世俗歌曲を歌うものでどうせだったら、他の男声歌手も残ってくれたらよかったのに~……というのは我儘過ぎかね。
曲目はソプラノのデュオ、ソロのそれぞれ定番有名曲だった。「苦しみが甘美なものなら」もしっかりありましたよ 歌手の声質のせいもあるだろうが、ラ・ヴェネシアーナあたりの官能や濃厚さとは異なり、かなりアッサリめな印象だった。
それにも関わらず、私の後ろに座っていた中年夫婦は前半で落ち着きなくガサガサ雑音を出していた揚句、休憩時間になると「なんかよく分からないや」と帰ってしまったのである イタリアオペラの名曲選みたいのを期待していたのだろうか(?_?)
予期せず良かったのは、テオルボ二重奏によるカプスベルガーだった。流れる水のように美しく、ミニマリズムにも通ずるものがあった。今度、録音を探してみよう。
ヤマハホールでは今回が初めての古楽コンサートとのことである。ビルの上階にあり、あまり横幅はなく、天井が高く段差をかなり取っている。音響も悪くなく、室内楽あたりにはちょうどよさそう。ただ、エレベーター乗るのに行列したり、さらにホールの入り口にたどり着くまで階段昇ったりと、客にはあまり優しくないようだ。
今後の公演ラインナップを見たが、古楽は入ってないようで……(+_+)
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