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2017年9月

2017年9月27日 (水)

「スパイダーマン:ホームカミング」:ソフト・ランディング クモの糸よりも軽く

170927
監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド
米国2017年

過去にトビー・マグワイア版、アンドリュー・ガーフィールド版、と見てきたスパイダーマン、今度は15歳という年齢にふさわしい童顔のトム・ホランドが主役である。
その前に彼は『シビル・ウォー』に登場していた。その流れで、アイアンマンことスタークも関わってくる。

そこでは、メイおばさんへニヤニヤと色目を使いながらスタークが接する場面があって、その方向で進むかと思いきや、どうもそうではないらしい。何せ冒頭からメイおばさんが「あの人どうも好きじゃないわ(-"-)」とクサすという次第。扮するマリサ・トメイのエロ気爆発かと予想していたのも大ハズレとなった。

いかにスパイダーマンになったかというような説明はすっ飛ばして、主人公ピーターは日夜ご近所の自警団活動に邁進中。張り切り過ぎてご近所迷惑になっている。
学園生活は前の二つのシリーズと比べると、皆さん優しくてほとんど苦労なしという状態だ。
さすが現代のニューヨークだけはあって、生徒たちは多様な人種構成になっている。ピーターをいびる金持ち息子がインド系(IT長者か?)というのもご時勢であろう。
悪役がスタークに仕事を奪われた中小企業の経営者という設定も、何やら今どきの景気を反映しているようで今一つ意気が上がらない。

彼は保護者監視付きのお子ちゃまなので、遠方で敵の陰謀があると判明しても行くのは簡単ではない。自分で車を駆って--というわけにも行かず、「そうだ、部活の大会をやる場所じゃないかっ(^o^)b」と部活のバスで突進だ~
悩みはヒーロー蜘蛛男としてなかなか認めてもらえないことと、気になる女の子がいることぐらいか。誠にお気楽な調子で、「デッドプール童貞版」と評されても致し方あるまいよ。

しかも、意中の彼女であるリズ嬢がどうしてピーターを気に入るのか不明。同じ部活をいきなりやめちゃったり復活したり、部員が危機に陥ってる時にいなかったり、さらに大事な学校行事のパーティに誘ったのに途中で姿をくらますという大失態 ビンタ10回くらっても文句は言えません。
こんなどうしようもない主人公を許す彼女は寛容だのう(・o・) というより、そんな女子がいるんかね 甚だしく疑問である。

もちろん、意外な展開があったり、怒涛のアクションシーンもあるし、感動の友情場面やスタークとのゴタゴタなどテンコ盛りであるが、やはり軽量級の印象はぬぐえない。

一番ガッカリしたのは、クモの糸で飛び回るスパイダーマンならではの躍動感を味あわせてくれるシーンがなかったこと。これまでのシリーズにはあったのにね。それとも、こちらが慣れちゃったのかしらん。
加えて、蜘蛛男が出没するのは当然夜が多いのだが、画面が暗くって何が起こっているのか見にくいことが結構あった。何とかしてくれい。

ところで、キャプテン・アメリカがお尋ね者なのに州の方針で(?)学校で見せる教育ビデオに出てるってのはどういうこったい 州知事がファンなのか(^^?)


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2017年9月17日 (日)

「大塚直哉レクチャー・コンサート」:なりは小さくとも

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ポジティフ・オルガンinアンサンブル
演奏:大塚直哉ほか
会場:彩の国さいたま劇場音楽ホール
2017年8月27日

チェンバロ啓蒙活動を各地で続ける大塚直哉、もちろんオルガンも忘れてはいません
この日はさいたま芸術劇場で、ポジティフ・オルガンのレクチャー付きコンサートを行ったのであった。このオルガンは会場備え付けのものだとのこと。

まずは大塚氏独奏で耳慣らし。バッハのリュート用組曲からだが、オルガンで初めて聞いた。なんだか左右のリズムが微妙にずれているというか、揺れがあるようで微妙に脳内がクラクラしてくる。

パッヘルベルのカノンでは他の奏者3人も登場。オルガンは大西律子&荒木優子と共に3番目のヴァイオリンのパートを演奏。(チェロは高橋弘治)
コレルリやサンマルティーニの曲ではそれぞれ通奏低音、ソロ楽器としてアンサンブル内の役割を果たすのを実演して見せた。

後半は他の3人の奏者のソロと共演という形だった。大西女史はバッハ、高橋氏はガブリエリ、荒木女史はコレルリだったが、ガブリエリの解説の時に驚きの証言があった。名前にLが二つ続く時は、NHKの規則で「ガブリエルリ」と言わねばならなかったのだという(!o!) しかし、今は喋る時はガブリエリでよくなったが、番組表ではそのままなのだという。

ラストは全員でモーツァルトの教会ソナタで終了。
バッハのコラール曲のオルガンソロでも曲中にアンサンブルの要素がある、など色々ためになる解説であった。
空席も結構あったが、引き続き文化はつるサイタマで啓蒙活動を続けていただきたい。

荒木さんのお衣装は「夏の高級避暑地のマダム風」でしたわよ(#^.^#) でも会場の外に出たらすっかり風も夕陽も秋めいていた。


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「フランス音楽の彩を楽しむ 6」:台車の音が……

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演奏:宇治川朝政ほか
会場:近江楽堂
2017年8月19日

木の器主催の定例コンサート、今回は総勢6人と比較的大きな編成だった。宇治川&福間彩コンビ以外にヴァイオリン秋葉美香&廣海史帆、ガンバがJ・チータム、トラヴェルソ野崎真弥という顔ぶれである。

冒頭、穏やかでのんびりした調子のオトテールで始まったが、ヴァイオリン2人のみのルクレールになると一転、緊張感が走り二つの楽器がせめぎ合う演奏に。
マレのトリオによる組曲になると、また一転して哀愁味漂う曲調となった。管が二人いるが、あくまでも中心はチェンバロとガンバで掛け合いをしていく。

休憩をはさんで、クープランの「諸国の人々」で開始……と思ったら異変勃発(!o!) 何やら外からかガラガラと巨大な台車を引きずるような音が伝わってくるのだ。実は過去に「台車の音が響くコンサート」というのを体験したことがあるが、今回の近江楽堂は遮音についてはかなりの水準な会場なはずなので、変だなあと思った。だが、天井にある十字型の窓を見上げると、なんだかやたらに曇っているというか煙っている状態ではないか。
ここに至って、ようやく激しい雷雨が降っていることが分かったのだった。
同じオペラシティでもコンサートホールの方にいたら気付かなかったかも

閑話休題、ド・ヴィルヌーヴという初めて聞いた(^^?)作曲家の組曲も演奏された。こちらは密やかな対話のよう。
ラストは再びマレで、楽しく豊かなアンサンブルを堪能できた。アンコールはボワモルティエだったが、野崎女史(だったよね?)がハーディガーディを披露。ソブラノリコーダーも加わって会場を沸かせたのだった。

いつも楽しませてくれる木の器主催の公演、また次も行きたいぞっと(^o^)丿
なお、宇治川氏は前回の公演でシャツの裾でリコーダーを拭いていたが、改善してちゃんとタオルを持ってきてふいていたですよ。

雷雨は相当なもんだったらしいと後になって知ったけど、終演時にはサッパリと止んでいたのであった


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2017年9月10日 (日)

「人生タクシー」:ノー・ストップ 赤信号は完全無視

監督・出演:ジャファル・パナヒ
イラン2015年

国から監督禁止命令を受けたイランの映画監督が「失業中につきタクシー運転手」という設定で、自ら主演した疑似ドキュメンタリー風作品である。
すべて映像はタクシーの車中カメラか、途中で乗ってくる姪っ子が持ってるカメラ(あるいはスマホ映像も)からのものになっている。

当然色んな人が乗ってきて、様々なことを喋る。見てて驚いたのはイランのタクシーというのは乗合になっていて、座席が空いてればどんどん途中で客を乗せてしまうのだ。で、その客同士が討論始めたり、怪しいDVD(といってもハリウッド映画だが)密売始めたり……。交通事故で瀕死の重傷の人間を病院まで運んだりもする。

それらの会話の中に監督の過去の話や、映画製作の規制(かなりバカらしいものが多い)や、国への批判がチラチラと出てくる。特に小学生の姪っ子が怖いものなしでキビシイことを言いたい放題なのが笑える。
こんなこと言って大丈夫なのか(?_?)と思ったら、やはりイラン国内では上映できないとのこと。

ドキュメンタリー仕立てではあるが、冒頭が強盗の話から始まりそれを最後まで引っ張っていってちゃんと落ちがあるので、きちんとしたシナリオによって撮っているのが分かる。お見事m(__)m

冒頭に日本のドキュメンタリー作家とアーティスト(?)による数分間のコント風な映像が上映されたが、正直「日本、平和だな」という感想しか浮かばなかった(-"-)

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2017年9月 9日 (土)

「LOGAN/ローガン」:ローンウルフ 子連れ狼、国境の北

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監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン
米国2017年

「ローガンが老眼」……誰でも思い浮かぶギャグ通りの設定である。往年の「X-メン」は今いずこ。ウルヴァリンことローガンはプロフェッサーXと町はずれに隠れ住み、ショボくれた運転手として日銭を稼ぐ毎日である。というのも教授は痴呆症で、薬がないと卓越した超能力者だけに非常なご近所迷惑になってしまうからだ。
老々介護みたいな話で暗いですなあ(ーー;)

さらに、研究所から逃げ出してきた少女が自分と同じ能力を(!o!) もしかして自分の「娘」か
迫る追手に彼らはカナダ(多分)国境にあるという「約束の地」を目指す。
元々人種差別問題と重ねて語られてきたこのシリーズゆえ、この設定がトランプ以後を予言していたということでも評判になったっけ。
行く先々で不幸と暴力をまき散らす(結果的に)一行、ますます暗い展開だ。

作中で『シェーン』が引用される通り、全体的に西部劇的雰囲気が濃厚。あるいは浪花節的とも言えようか。
まさに一匹狼として生きてきたウルヴァリンが「家族」を見出す過程は泣けるし、次世代に希望を託しつつ終わるラストは涙ものである
アクションシーンもテンコ盛り。そちら方面も文句な~し。

ヒュー・ジャックマンの一世一代の当たり役、有終の美を飾ったと言えるだろう。17年間ご苦労さんでした(T_T)/~~~ 願わくば、次はこれ以上の当たり役を見つけて欲しいところである。
パトさんことP・スチュワートは、まだらボケの超能力者という難しい役どころをガッチリ演じきっております。できればまたイアン・マッケランと美爺共演してくれんかのう(個人的願望)。
子役の少女は凶暴さをいかんなく発揮。セリフは少ないが「子狼」役として適役であった。

さて、少女が教授とホテルで映画の『シェーン』を一緒に見て、そこから正義を学ぶというくだりがある。
出た定番「映画で正しいことを学ぶ」場面。よく見かけるが(古くは『グレムリン』とか)私はひねくれ者なんでホントかな~なんて思っちゃう。
映画から正義を学べるなら、悪事だって学べて実行できるのではないかね。
ホテルのテレビではたまたま『シェーン』をやってたからいいけど、これが別の映画だったらどうなるだろうか。

例えば『ブルー・ベルベット』→教授「親に隠れてこれを見に行って、あまりのヘンタイぶりにハアハア(^Q^;)したもんじゃよウヒョヒョ」
あるいは『時計仕掛けのオレンジ』→教授「上映禁止運動が起こっておったが、友人たちと見に行ってコーフンして、帰りには通りがかりのジーサンを殴り倒したなあ。まあ若い頃はそんなもんじゃ」
おいおい(@_@;)違う物語になっちゃうよ。


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2017年9月 2日 (土)

「Scherzi Musicali 音楽の諧謔」:ミドリにはイタリアものがよく似合う

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17世紀イタリアン・バロック名曲選CD発売記念コンサート
演奏:鈴木美登里ほか
会場:日本福音ルーテル東京教会
2017年8月10日

鈴木美登里がソロCDを出した記念公演。録音でも共演したメンバーは、チェロは当然ヒデミ氏、ヴァイオリン若松夏美、鍵盤上尾直毅である。上尾氏は得意技(?)であるオルガンの上にチェンバロ重ねで演奏した。

ミドリ女史はモンテヴェルディの独唱定番曲を歌い、その間にマリーニやフレスコバルディなどの器楽曲を挟んでいくという進行だった。
夫婦共演ということもあってか会場は満員。やはり彼女はイタリア歌曲が一番合っていると思う。感情表出の激しい「アリアンナの嘆き」が力唱されるとブラボーが飛んだ。

カステッロのソナタは、ヴァイオリンとチェロが互いになぞり合うように進む曲。小さめの会場で小編成の中で聴くと、若松女史のヴァイオリンは実に強力だった ビンビンとパワーが伝わってくるようである。
上尾氏によるロッシのトッカータはなんだか一風変わった音階の連なり--みたいな曲で、横手の椅子に座ってヒデミ氏がニヤニヤしながら聞いていた。

長年共演が多かった仲間同士の演奏会とあって、和気あいあいとしながらも実にハイレベルな演奏会だった。聴衆はみな満足しただろう。

この日は仕事を休みを取って、昼は近江楽堂で「哀しきよろこび」を聞いて、新宿で時間をつぶして、夜はこちらのコンサートに行った。
そうしたら、昼間見かけた人がやはりこちらにも来ているのを発見(!o!) 考えることは同じですなあ(^^ゞ
ただし、近江楽堂と違ってこっちはエアコン効きすぎで寒かったですよ


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