「女の一生」:ターゲット・オブ・ラブ ジョウロいっぱいの愛を
監督:ステファヌ・ブリゼ
出演:ジュディット・シュムラ
フランス・ベルギー2016年
なぜ今『女の一生』映画化 それもスタンダード・サイズ画面とは(!o!)
すみませ~んm(__)m モーパッサンの原作読んだことありません 本来ならばパスするところではありますが、見ることにしたのは監督が「ティエリー・トグルドーの憂鬱」のステファヌ・ブリゼだったからである。
ヒロインのジャンヌは男爵家の一人娘。父母に愛されて育つが、教育のため窮屈な修道院へ。やっと開放されて、素敵な殿方と結婚と夢を膨らませる。しかし、夫となった二枚目のカッコエエ子爵はまさに「色男、金と力はなかりけり」を地で行く野郎で、加えて誠意もない食わせ者なのだった。
なんと彼女の親友とも言える召使娘に手を出してしまう。破局寸前のところで今度は彼女が妊娠。夫に裏切られた代償か、今度は生まれた息子を溺愛するも、彼は父親譲りらしくどうしようもない甘えん坊の浪費家なのであった。おかげで家は没落していく。
と、ロクでもないエピソードが延々と続く。しかもこの監督の手法で、重要な事件の場面を直接描かずその後のリアクションだけを見せるので、ドラマ的に盛り上がることはない。
多く時間が割かれるのは、自然と四季の描写であり、ヒロインがその中にたたずむ姿が繰り返し登場する。頻出する海辺の場面は寂しく陰鬱である。
一方、夕刻の室内の場面なども照明が完璧で、まるでラ・トゥールの絵画をそのまま再現したかのようだ。
父親から庭園の手入れの仕方を教わり、菜園にジョウロで水をやる場面も繰り返される。「あふれる愛をただジョウロで注ぎ続け、息子を根腐れさせてしまう」という感想を書いてた人がいて、思わずウンウン(゚ ゚)(。 。)と頷いてしまった。
彼女は水をドボドボ注いで、いつもその泥の跳ね返りがスカートの裾を汚しまくっても全く気に留めないのである 象徴的なシーンといえるだろう。
ラストは、それまでの彼女の下降人生を一変新たな希望を得たように見える。しかし、「懲りずにまた同じこと繰り返すんじゃないの(^^?)」と観客が思っちゃうのも事実。監督はあくまでもヒロインを冷厳に突き放して描くのであった。
主役のジュディット・シュムラも世間知らずなお嬢さんから頑迷な初老の女まで見事に演じている。
善きにつけ悪しきにつけ、まさに「女の一生」はかくの如しなのだった。
前作では劇伴音楽は使用してなかったと記憶しているが、今回は幸せな場面のみフォルテピアノによるデュフリと(名前読み取れなかった)もう一人の作曲家の曲を流していた。ちょうどフォルテピアノが使用されていた時代のようだ。
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