「ブラックパンサー」:デザイン・イズ・パワー 猫だ!虎だ!いや○○だ!
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にも出てきたブラックパンサーが満を持して単独で登場である。
彼が王位に継ぐことになる事件が『シビル・ウォー』で起こったわけだが、そも母国のワカンダとは貧しい農業国--とは仮の姿。してその正体とは、謎の鉱石の存在によって超が付くくらいに発達した文明国であった(!o!) 正体を隠しつつ各国に隠密ならぬスパイを放ち、今日も今日とて諜報活動を行う。
ここで、そんな優れた国がご近所の国の貧困や紛争を傍観していていいのかという問題が浮上する。これは現在の米国と繋がる事象といえるが、そんな事をよーく考える間もなく正式に王位につくための決闘場面が来たっと見ているうちに、気付けばカジノでの乱闘やらソウル市街での猛烈なカーチェイスに突入しているのだった。
悪役は、素顔で見るのはお久しぶりなアンディ・サーキス……と思ったら、さらに上を行く奴が出現だ 彼はなんと正当な手段で王位を簒奪してしまう。悪者といっても、ディズニー製作なのでいきなり王様専用ハーレムを作ったりはしない。
ここでも、悪いヤツと分かっても正式な手段で選ばれたなら従うべきかという矛盾が生じ、米国の大統領問題を思わせる展開になる。
悪役のキルモンガーは複雑な背景を持つ人物だが、監督はコロンビア映画の『彷徨える河』を参考にしたという ええっ、あのマジックリアリズム作品の一体どこら辺を(?_?) 修道院のエピソードか、それとも二つの時代で同じことが繰り返される構造か? とにかくビックリだ。
平和と繁栄の陰から生じる矛盾や二律背反を突き付けられて、主人公は次第に窮地へ陥っていき、終盤は定番ながら両者の死闘になだれ込むこむ。
しかし、十代にして最優秀科学者な妹(妹萌え~な方に推奨)、女スパイの(元)婚約者、威厳たっぷりな母にして前王妃、唯一の白人枠CIA長官などなど多彩な人物が登場。本筋以外にも、設定の説明から始まり、例の鉱石やら過去の因縁やら王位継承の儀式やら色々あるので、説明不足だったり適当な部分が出てきちゃう。
例えば、部族長の一人が悪役に味方するのはどういう意図なのか、王様が突然変わっちゃって国民はどう思うのよ、など描かれていない。前後編に分けてもいいぐらいだろう。
とはいえ、全体のプロダクション・デザインが見事。ありとあらゆるところに多彩なアフリカの意匠が使用されていて、「アフリカ押し」で通そうとする強い意志を感じさせる。ここまでやったかという印象。この「押し」の力に感服した。
そういや、最近写真集が出て話題になったアフリカの伊達男「サプール」まで登場してましたな(^.^)
結論としては「行った見た面白かった」というぐらいに満足できた。
同じ監督で、キルモンガー役のM・B・ジョーダンが主演の出世作『フルートベール駅で』録画したまままだ見てないので、連休あたりにでも見なくっては
主役のチャドウィック・ボーズマンは快調だけど、元々愛嬌のある顔つきなんで、強くて賢い女たちに囲まれた主人公がどうも「黒豹」というよりは「若殿」っぽく見えてしまうのは仕方ない。
さらに、どう見ても主人公より強そうなオコエことダナイ・グリラ率いる女戦士軍団、カッコ良すぎです。憧れちゃう~(*^.^*)ポッ
さて、本作はスタッフ・キャスト共に多く黒人が起用され、米国、アフリカはもとより他の国々でも大ヒットとなった。確か日本よりも一週間早く公開されたはずだが、これを書いている時点で米国ではまだランキングのベスト10に入っている。
その画期的意義や含まれるメッセージ、大人気の理由などを語った文章はネットでも多く見かけたが、なぜ日本ではそれほどの人気が出なかったのか?--ということを解説してくれるのは、まだ見たことがない。大いなる謎である。
本当にどうしてなんですかねえ(´~`)
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