「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」:アメリカン・ウーマン 血と汗と涙のトリプルアクセル
監督:クレイグ・ギレスピー
出演:マーゴット・ロビー
米国2017年
公開される前から「アリソン・ジャネイの毒母ぶりがすごい」と話題になっていた本作、おかげで彼女はオスカーの助演女優賞を獲得したぐらいだ。
1994年に起こった「ナンシー・ケリガン襲撃事件」、フィギュア・スケートのファンでもない私には「ああそんなこともあったな」という程度の記憶しかないのだが、翻って考えれば、ファンでなくても知っているのだから、当時相当の話題になったわけである。
スケートの技術的な面では極めて優秀だったトーニャ・ハーディングが、なぜライバルを襲撃したなどというスキャンダルに巻き込まれたのか。
そもそも、貧しい家庭ながらも幼い彼女にフィギュアを習わせ、一旗揚げようと猛訓練する母親……しかし、問題なのはそれだけではなかった。後半は毒母から縁が切れても今度は、若くして結婚したDV亭主、さらにそのアヤシイ友人が、彼女の人生をかき乱すのであった。
もっとも、彼女の方も全く負けていない。かなりのビッチぶりを発揮だ。
この4人はそもそも「不誠実な語り手」である。本当のところ、事件の真実は分からない。で、映画は疑似ドキュメンタリー風に彼らに過去の事件を語らせる。さらに、それ以外の場面でもカメラ目線で喋らせて、それぞれの立場と正当性を主張させるのだ。
なるほど、複数の関係者の主張が食い違う事件についてはこのような描き方が有効かもしれない。例えば『デトロイト』とか……。でも、あの題材でこんな手法取ったら冗談じゃすみませんわな(@_@;)
全編シニカルなコメディタッチで、脱力系の笑いに満ちているが、それでもヒロインが鏡の前で号泣する場面はド迫力だった。なんだかこの全く共感しがたい人物に同情してしまう。
演じたマーゴット・ロビーさすがである オスカー、候補にはなったけど取れなくて残念でした。
返す刀で、さんざん大騒ぎした揚句にO・J・シンプソン事件が起こると波が引いたようにいなくなってしまったマスメディアを斬り、狭量なスポーツ界を指弾、さらには米国風サクセスストーリー自体を批判し、感動を求めスキャンダルの好きな観客をも避難する。
演出と脚本、編集共にお見事である。
おっと、普通の試合中継では見ることができない間近なスケート場面の映像も、思わず見入ってしまうものだった。
ラストに当時のニュース映像がちょっと流れるが、実物のご本人はM・ロビーよりもずっと華奢な感じでお人形みたい。だから、言動とのギャップが余計に目立ったんだよね。
亭主役はバッキーことセバスチャン・スタン--って、えー(!o!)言われないと分からなかった。
あと、その友人ショーン(P・W・ハウザー)については「絶対に見ているだけでイライラする」「二度と目にしたくない」超弩級の悪役、久々の出現である チラシによるとこの男は「自称元諜報員。実際はニートで童貞」とか書かれちゃってるのだが、これって典型的中二病か……(+o+)
なお、使用されている音楽が懐かし過ぎ。ハート、ZZトップ、バドカン、フリート・ウッドマック、このあたりはみんなアルバム買いましたヽ(^o^)丿
と思ったら、ネットの感想に「歌謡ロック」とか書かれていて、そうか、私は歌謡ロックが好きだったんだ~と今さらながら自覚した次第である。
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