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2018年8月12日 (日)

「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」:プロミスト・ランド おかあさんといっしょ

監督:ショーン・ベイカー
出演:ウィレム・デフォー
米国2017年

フロリダのディズニーランドのすぐそばに安モーテルあり。外壁はディズニー風味でキラキラした色に塗られているが、住民の実態は支援団体の食料無料配布車が回ってくるほどに貧しい。観光客を乗せた航空機がひっきりなしに行き交い、その落差が甚だしい。
日本だとモーテルは一時的な宿泊と思うが、かの国では常泊している人が多いそうなのだ。

そんな中に若い母親と娘がいる。母親の方は定職を持たず、その日暮らし。娘は小学校低学年だが、折しも夏休み、ご近所の悪ガキどもと一緒にやりたい放題に遊びまくる。
彼らを見守るのがW・デフォー扮する管理人だ。きちんと規則を守らせ、文句をつける時はちゃんと言うが、一方で施設の保守点検に修理をし、さらには子どもたちの安全にも目を光らせる。

--と、書けば連想するのがケン・ローチの『わたしは、ダニエル・ブレイク』である。
若いシングルマザーと保護的立場の中年男性という組み合わせは似ているし、特に母親がやる行動はほとんど同じと言ってよい。
ただ、ローチ作品の方は意図的に母親を真面目な人物で好感度高く描いているが、こちらの母親は正反対。無軌道で粗暴でプッツンしてしまう。若くて学歴も金も職もなく、やる気も持久力も持てないまま、貧困から抜け出せない。
幼い娘を愛してはいるが、母親もまだガキっぽさから脱していないのだった。

このような状況が、子どもたちと母親が遊び&暴れまくるシーンが続く中で、徐々に浮かび上がってくる。
正直なところ、この一連の「遊び」の場面は退屈だった。演じている子どもたちをそのまま遊ばせて撮ったっぽくて、メリハリなくただ長い(ーー;)
もちろん、この映画は好評で見た人の多くは面白かったんだろうけど、私個人からすればこれに付き合うのは退屈で疲れるという印象だった。

でも私は、珍しくアカデミー賞の助演男優賞に選ばれたW・デフォーを目当てに見に行ったのだよ。
いやー、彼の演技は素晴らしかったですよ\(◎o◎)/!
安モーテルでも完全に断固として管理しようと心を砕き、子どもたちには厳しくしながらもちゃんと見守る。しかし、一方でモーテルのオーナーには頭が上がらずヘコヘコとしてしまい、落ちてるゴミをコソコソと拾い集めるという正反対の態度を、矛盾なく演じていた。彼に助演男優賞crown取って欲しかったぜい。(あくまでも私見)

この映画の作り手は当然分かって描いているはずだが、いかに母親が娘を愛していようが彼女がやっていることは虐待と見なされるなるだろう。(だから、管理人は終盤で肩の荷を下ろしたように一服しようとする)

そんな、娘と母親の夢の世界は今や崩れた。そして……向かったのはファンタジーの国だった。このラストにはさすがに驚いた。
もうそこにしか彼女の行く場所はないのである。

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