「マルクス・エンゲルス」:ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス 萌える革命
監督:ラウル・ペック
出演:アウグスト・ディール、シュテファン・コナルスケ
フランス・ドイツ・ベルギー2017年
祝マルクス生誕200年ですよ。原題は「若きマルクス」で邦題は「マルクス・エンゲルス」。当然『マルクス=エンゲルス全集』があるんで、こういうタイトルになったんだろう。しかし、これだとフ女子ならずとも「で、どっちが攻めでどっちが受けなんですか~(^^?)」と質問したくなるのは仕方あるまい。
実際、見てみるとそういう内容……ではもちろんない
19世紀中ば、若いマルクスはドイツで政治活動のため検挙→パリで出版事業、エンゲルスと意気投合→退去命令を食らってベルギーへ→食い詰めて英国にも出没する。
貴族出身の奥さんを伴い(駆け落ち?)子どもも生まれるが、常に生活不安定。
エンゲルスは金持ちのブルジョワの子弟で、英国では工場の運営を任される一方で、階級搾取問題に目を向ける。
私生活はぶっ飛んでいたもようで、伝統的男女関係なんかは無視である。さりげなくマルクスの金銭的援助もしたりする。
二人とも若いんで思想的師匠や政治活動の先輩にケンカ売ったり、豹変したり、暴走気味だ。そんな彼らが欧州を行きつ戻りつしながら、政治結社「正義者同盟」の内部抗争に打ち勝ち「共産党宣言」へと至るまでを描く。ヤッタネと喜びに燃えたくなる。
ただ、ヤクザの抗争とは違ってそれほど起伏ある物語とはならないため、なんとかメリハリをつけようと苦労している様子がうかがえた。最初の方のベッドシーンはなくてもいいんじゃないの?という意見に、私も賛成である。
マルクスの奥さん(ヴィッキー・クリープス好演)は同志的存在で、討論などに加わって堂々と意見を述べている(エンゲルスのパートナーのバーンズも同様)のは、そうだったのか!と驚いた。女はすっこんでろい<`~´>とか言われないのね。
ハリウッド映画ではないので、作中で使われている言語はそのまま独・仏・英三か国語が入り乱れる。ま、日本ではそのまま全部字幕だからあまり齟齬を感じないが
エンディングは突如ボブ・ディランが流れて、歴史物から急に現代へと直結するのが新鮮だった。
監督のラウル・ペックは日本で同時にドキュメンタリーの「私はあなたのニグロではない」も公開されるという珍しい事態。私は、ディランが最後に流れたのを取り違えて書いてしまった。こちらの方でしたな(^^ゞ
作った作品数は少ないが、今後も注目の人だろう。
岩波ホールは珍しく(!o!)若い人もかなり来ていて混んでいた。
エンゲルス役のシュテファン・コナルスケは青い瞳が大きくキラキラしていて、何やら熱に浮かされたように人を引き込む魅力がある。マルクスが意気投合して思わず額にキスしてしまうのもむべなるかな、という感じだ。実物のエンゲルスもこんなだったのだろうか。
というわけで、やっぱり「どっちが攻めでどっちが受けなんですか~(>O<)」と聞きたくなってしまうのであるよ。
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