「ザ・ビッグハウス」:見えない所に真実はあり
想田監督のドキュメンタリー、過去に見たのはこちら→(『精神』、『Peace ピース』、『選挙2』)
この度のテーマは米国文化の華ともいえるフットボールである。ただ、いつもと異なるのは、大学の授業として学生たちを含めて総勢17人で撮影したということだ。フットボールの試合という取材場所は同じでも、どこに目をつけるかはそれぞれの撮影者次第なのである。(ただし編集は想田監督)
ということで、単にスポーツの試合というだけでなく、多面的に対象が浮かび上がる結果になった。
舞台となる《ザ・ビッグハウス》とは、ミシガン州アナーバー市にある巨大スタジアム。驚くことに収容人数は全米最大の10万人で、市の人口とほぼ同じとのこと。州立ミシガン大学アメフトチームの本拠地で、試合となると各地から観衆が集まってくる。
見ていると、その規模の大きさに驚いてしまう。
大きな人波に地元は大賑わいで、飲食店も繁盛。
道端では辻説法、選挙の応援、各種宗教の勧誘、ストリートミュージシャンなどなどあらゆるものが押し寄せるのであった。
スタジアム前ではチョコレート売りの黒人の親子が。父親が指導して男の子に売らせる様子に『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』を思い出してしまった(娘を連れて観光客に香水を売りつける場面あり)。
スタジアムの内部は厨房(すごい量の料理)、救急士、清掃員、高額なVIP席、さらには場内アナ、チアリーダー、マーチングバンド、試合にも華麗なチアリーディングにも背を向け監視する警備員など、あらゆるものが画面に登場する。。
しかし、肝心の試合だけはこの中にほとんど描かれることはない。
チームの監督のインタビューや、試合に合わせたホームカミング・パーティー(結局同窓会みたいなものなのね)の様子によって、これほどの巨大なイベントが成立する背景が分かる。
州立大とはいえ、予算のほとんどは裕福な卒業生の寄付に頼っていて、アメフトチームの成績によって額が左右されるという。
チームが大学の存在を支え、市の主要産業の一つとなっているのだ。したがって、チームの監督が高給を得て、選手がハリウッドスター並みに人気があるのも当然である。
--と、このような実相がナレーションもない中、明らかになっていくのだった。
多くの人々が集まり楽しむ巨大なパワーが集積する試合の陰に、シビアな現実が潜む。大いに見ごたえありのドキュメンタリーだった。
まあ、しかしこれだけ巨大なのも米国ならでは、という感がある。
話はそれるが、かつて読んだドキュメンタリー本『ミズーラ』には、モンタナ州立大学のフットボール選手のレイプ事件が取り上げられている。犯人はスター選手で、本を読んだ時にはピンと来なかったが、この映画に描かれているのと同様な地元の英雄で、やはり大学の名声や価値を担っていたのだとしたら、被害者がそれを訴えるのは相当な勇気が要っただろう(実際、誹謗中傷にさらされる)。それを実感した。
さて、この手法で日本を描くとしたら題材は何がいいだろうか?
N大アメフト部……(>y<;)イヤダー
大相撲……(・o・)エエーッ
目線を変えて
国会……(@_@;)ナンダカナー
それなら
コミケ……(!o!)これだっ
巨大イベントで、、国内外で興味を持つ人多数いるはず。その裏側にはみな興味津々。ドキュメンタリーを作る価値は充分あり。(作る方は大変そうだが)面白そう。
ぜひお願いします(^人^)
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