「J.S.バッハ 音楽の捧げもの」:最大の謎は終わらない
演奏:寺神戸亮ほか
会場:ヤマハホール
2018年10月13日
土曜の昼間、人波溢れる銀座にてコンサート。プログラムは寺神戸亮を中心とした「音楽の贈りもの」である。他は前田りりこ、上村かおり、曽根麻矢子という面子。
事前には明記されてなかったが、以前、「フーガの技法」を聞いた時と同様、ほとんどレクチャーコンサートと言っていいほどだった。ステージの奥の壁に楽譜映して解説もしたし
ただし、一曲目は同じく王様に捧げられた曲ということで、クープランの「王宮のコンセール」から1曲演奏。その後、バッハに突入である。
バッハがフリードリヒ大王を探訪し、曲の作られた経緯から各曲のカノンの構造まで、それぞれ解説しては演奏という次第。休憩入れて約2時間半という完全にチケット代の元が取れる充実ぶりだった。
2声の螺旋カノンでは、繰り返すたびに音が高くなっていくというのをやれるところまでやってみる--ということで、チェンバロ、ガンバ、ヴァイオリンで始めたのを途中でガンバをヴァイオリンが引き継ぎ、それまでのヴァイオリンのパートはフルートが吹いていった。最後にはフルートの音がか細い高音となって息も絶え絶え状態となって終了した。普通はここまではやりません(^^)b
そもそも曲の意図としては、鈴木雅明の説を採用していた。つまり、大王とバッハが曲を通してチクチクとイヤミをやり合っていたというのだ。
そもそも大王はいきなり「王の主題」を出して即興で弾けと言い、3声で弾いたら次は6声を所望。これはいくらなんでも無茶
対してバッハは「捧げもの」を献呈したはいいが、カノンの模倣の始まる場所を明示していない曲にわざわざ聖書の一節のタイトルを付けたり、使用楽器を指定している「トリオ・ソナタ」を王が得意とするフルートが一番吹きにくいハ短調で作曲するという、これまたイヤミとしか思えぬのであった。
しかし、そのような当時の思惑とは関係なく、解説終了後に続けて演奏された「トリオ・ソナタ」と「無限カノン」は、達者な面々だけあって耳と心に染み入るものがあった。こんなに理詰めで作曲したのに、なんで聴く者を感動させるのか。これこそが最大の「謎」だろう。
狭苦しい印象が抑えられないヤマハのビルを降りて銀座の街に出た時は、はや夕刻。どこを向いても観光客だらけだ~(@_@;)
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