「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」
米国の先住民保留地での殺人--というと映画『ウインド・リバー』を思い浮かべるが、この本は1920年代初めが発端となる。オクラホマで起こった不可解な事件を取り上げたドキュメンタリーである。
オセージ族という部族の、ある年老いた母親とその娘たちが殺人・事故・病気などで亡くなっていく。それを発端として彼女たちだけではなく、白人の配偶者や関係者までも不可解な死や事故に至る。果たして関連はあるのか?
重要なのは、オセージ族が非常に裕福であるということだ。住んでいた土地を追い出され、辺鄙な保留地をあてがわれたのが、なんとそこから石油が出たのだ。そして、その利益を分配される権利を保持していたからである。となれば、財産目当ての犯罪の可能性は十分ありうる。
探偵社の調査員が雇われ、新聞がゴシップもどきに騒ぎ始め、創設されたばかりのFBIが捜査に乗り出す。その後長きに渡り長官を務めるフーヴァーは、前世紀の遺物っぽい保安官的な者ではなく、捜査官として法執行官らしい地味なダークスーツを着用し、地域とのしがらみのない人物を求めたという。あの、映画やドラマに登場する画一的イメージはそういうことだったのか。なるほど(@_@;)
一連の事件の犯人に関しては、優秀なベテラン捜査官の活躍によって挙げることはできた。
が、しかしこの本の著者はさらに公文書館に足を運び(文中の記述の出典がどの文書によるものか、全て細かく注が付いている)、当時密かに行われた恐ろしい犯罪を新たに発見したのであった。ここら辺はミステリ小説のような驚きと恐怖に満ちている。
そもそも当時のオセージ族は大きな財産を持っていても、自由に使うことはできなかった。先住民には必ず資産後見人が付いてその人物が全て管理していたのだ。なぜそのような制度がつくられたかというと、先住民は半人前でまともに金を使う能力がないとされたからである。そして、その莫大な富に多くの白人が群がったのだ。
まさに米国近代史の大いなる恥部 著者は過去の大量の記録をひたすら調べることによって、それを掘り起こしたといえよう。
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