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2019年2月

2019年2月28日 (木)

聞かなきゃ損々!古楽コンサート 3月版

またも面白そうなコンサートがバッティング多数。何とかしてくれい。

*3日(日)祈りのカンタータ(バッハ・コレギウム・ジャパン):東京オペラシティコンサートホール
*  〃  ひまな日曜日4 リュートデュオの楽しみ(つのだたかし&瀧井レオナルド):松明堂音楽ホール
*6日(水)謎解きバロック2 テレマン(宇治川朝政ほか):近江楽堂
*14日(木)レオナルド・ダ・ヴィンチと音楽(アントネッロ):豊洲シビックセンターホール ♪レクチャーあり
*16日(土)涙のきらめき 17世紀ザルツブルク・祈りの宮廷音楽(アンジェリコ):淀橋教会小原記念チャペル
*17日(日)「奇想の系譜展」記念コンサート1 ザ・バロック(江崎浩司ほか):東京都美術館講堂
*19日(日)レオナルド・ダ・ヴィンチ没後500年記念コンサート(なかやまはるみほか) ♪金沢正剛によるトークあり
*23日(土)宮廷人の優雅なたしなみ(ソフィオ・アルモニコ):トーキョーコンサーツ・ラボ
*  〃   リチャード・エガー:東京文化会館小ホール
*29日(金)フランスバロックの粋 美の陰影(高橋奈緒ほか):近江楽堂
*30日(土)ゼフィール 春の風(アンサンブル・レ・フィギュール):JTアートホールアフィニス

これ以外にはサイドバーの「古楽系コンサート情報」(東京近辺、随時更新)をご覧ください。

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2019年2月20日 (水)

「ホイットニー オールウェイズ・ラヴ・ユー」:成功と醜聞は表裏一体

190220a 監督:ケヴィン・マクドナルド
イギリス2018年

ホイットニー・ヒューストンといっても、活躍してた当時は歌手としてはあまり関心がなく、ラジオやMTVでよくかかっていたのを漠然と聞き流していた程度だった。
個人的には音楽面より映画『ボディガード』の出演がハマリ役で印象が強い。ただ、ケビン・コスナーの方が株の上昇度は大きかったかも(人気が決定的となった)。
従って、その後のスキャンダル(夫のB・ブラウンがらみ)や2000年代に入ってからの凋落ぶり、さらには突然の死についてもあまりよく知らない。風の噂に聞く程度であった。

そんな彼女の生涯についてのドキュメンタリーである。監督のケヴィン・マクドナルドは『ラストキング・オブ・スコットランド』で知られるようになったが、過去にドキュメンタリーもよく撮っている。実は見たのも忘れていたのだが、『敵こそ、我が友 戦犯クラウス・バルビーの3つの人生』が、今回の作品に一番近いかも知れない。

ホイットニーと言えば、モデルやっていたというぐらいの容姿で、周囲に母親や親戚のディオンヌ・ワーウィックなど歌手として活躍してる者も多いということから、てっきり音楽ファミリーのサラブレッドのような印象を持っていた。しかし実際は全く違っていた。
母親はバック・ヴォーカリストとして巡業の日々で不在、子どもの頃は兄弟と共に他の家へ預けられていたというツラいものである。

ようやくレコードデビューを果たすも、回りは猛母、金に細かい父(マネージャーをやっていたが決別)、ダメ兄とドラッグ兄に囲まれ、結婚したボビ夫はDV野郎であった。
そんな身近な人物のエピソードをインタビューによって容赦なくほじくりかえしていく。ナレーションもなく後は過去映像をかぶせるぐらい。まことドキュメンタリーのお手本のようで、その容赦ない手腕に感心する。これで遺族公認とは驚いてしまう。

いくら稼いでも周囲に金がジャブジャブと流れ出していき、父親とは訴訟騒ぎ、無二の親友とは結婚後疎遠に、タバコにドラッグ、一人娘は不安定、歌唱力も低下--と全てが悪い方向に転がっていくのであった。

2時間強の長さだが途中でだれることもなく、最後に衝撃の事実に至る。これは米国で出ている伝記本にも書かれたことがない話らしい。見終わった後なんともいえない気分になった。

『ボディガード』で彼女には輝かしい華があったのは確か。日本でも大ヒットして満員のロードショー館で見た。あのイメージが残っている。
考えてみると、ミュージカル出身以外の歌手で当時映画に出て大成功した数少ない例かも知れない。プリンスもマドンナもうまく行かなかった。音楽と映画の両方で活躍する人はいるが、どちらか片方にギャップがある。最近ではレディー・ガガくらいだろうか。
なお、あの大ヒット曲「オールウェイズ・ラヴ・ユー」は実はカントリー・ソングで、最初に作曲して歌ったのはドリー・パートンだったそうだ。小林克也の番組でD・フォスターが話しててビックリ。知らなかった

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こうして見ると、彼女の生涯はほとんど「山岸凉子」案件だと気付いた。山岸マンガの登場人物に彼女はピッタリと重なる。猛母、強権父、家庭の不和、DV、児童虐待、離婚などなど、短編でもよく取り上げられた要素がテンコ盛りである。そのまま山岸凉子が彼女の伝記を描いてもおかしくないほどだ。

多くの山岸作品では、特別な能力を持つ天才や異才が共同体の中で自らの力を発揮しようとして成功する、あるいは挫折するという構造が中心となっている。その行く手を阻むのは共同体内の軋轢であり、決して同等の才能を持つライバルではない。
かつて、橋本治はそれを「主人公とその従者」という観点で分析したが、後の作品からは「従者」がいなくなってしまった。
今連載中の『レベレーション』でも主人公のジャンヌ・ダルクを支える従者はいない。これから火刑に向かって暗い坂を転がり落ちていくだけのジャンヌの姿に、ホイットニーが重なるのである。

 

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2019年2月15日 (金)

「J.S.バッハ その音楽と歓び」:フルート、叱られる

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18世紀音楽祭協会ファイナルコンサート
演奏:アンネリース・ファン・グランベーレン
会場:東京文化会館小ホール
2019年2月10日

18世紀音楽祭協会は福岡で「福岡18世紀音楽祭」から始まり「おぐに古楽音楽祭」「福岡古楽音楽祭」を開催してきたという団体。この度、三十年もの活動を終了することになり、その最終公演が東京、翌日に福岡で行われた。

内容はバッハ特集。ほぼ満員だった。自由席だったので開演30分以上前から長蛇の列となり、大ホールの方の開演時刻も重なってごった返していた。

奏者は寺神戸亮・若松夏美のツートップを中心に前田りり子、上尾直毅などおなじみの面々が参加だ。
器楽曲はバッハ作品の定番といっていい「管弦楽組曲」2番と「2つのヴァイオリンのための協奏曲」である。普段はなかなかこのヴァイオリン二人揃っての定番曲は聞けそうで聞けない。ゆるぎない演奏に満足した。

間にベルギー(?)のソプラノ歌手ファン・グランベーレンによるカンタータBWV100からアリアを1曲。前田りり子のフルートが速くて細かいパッセージで活躍し、歌を彩った。

後半はBWV210「おお、やさしき日、待ち望みし時」、もう一つの「結婚カンタータ」である(バッハは全部で3曲作ったらしいが)。ここで器楽陣もオーボエ三宮正満を始め全員(10人)登場した。

この曲、昔バッハ・コレギウム・ジャパンの定期公演で聞いたはずだが、完全に存在自体も忘れていた(^^ゞ
後で調べると、夫婦ともにバッハの親しい知り合いの結婚式用と推定されているらしい。夫の方は裁判官、奥さんは裕福な商家の娘だそうな。

歌詞に特徴あって、「愛」は当然だがそれに「音楽」が絡んでくることだ。弦を褒めたたえたり、オーボエと心地よく共演するアリアがあり、それに続いてフルートが登場。しかしなぜかフルートに対しては「黙りなさい!」とキビシク歌い、声と笛が互いに旋律を追いかけ合うように進む。またもやりり子氏の見せ場(聞かせ場)となった。
その前のレチにも「音楽は全ての人の心へと忍び込み、身分の上下を問わず、人々のところに来ることが出来るのです」とあり、感動がいや増すのであった。

アンサンブルは申し分なし。ファン・グランベーレンは澄んだ清楚な美声の持ち主で、いかにもバッハのカンタータにうってつけ。ただ、押しがもう一つ足りないのであった。残念無念ですう(+o+)

個人的には福岡の音楽祭に行ったこともなく、この団体もあまりよく知らない。さすが会場は白髪頭の人が目立ち、長い歴史を感じさせた。
……と思ってたんですが、終演後に老年カップルが「あれはバロック・ヴァイオリンっていうのか。音が違うねえ」などと話していて、そういう訳でもなかったようで(^^;ゞ

なお、会場で音楽祭の過去のポスターを無料で配っていたのですかさずゲット。有元利夫のポスターなんて滅多に手に入るもんじゃありませぬ
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2019年2月12日 (火)

「ディザスター・アーティスト」:ノー・カット! 駄作も行き過ぎれば客が来る

監督:ジェームズ・フランコ
出演:ジェームズ・フランコ
米国2017年

DVDにて鑑賞。
米国に『ザ・ルーム』(2003年)なる映画あり。「史上最低の映画」と評されて笑いのネタとなり、映画マニアに愛されている駄作だそうだ。

この映画は『ザ・ルーム』がいかに作られたかを描いたもので、実話を元にしたコメディである。
こちらは極めて評判良く、ゴールデン・グローブ賞の作品賞にノミネート、監督兼主演のジェームズ・フランコは男優賞をゲットした。他にも放送批評家協会賞も取ったということで、このまま賞レースを突進してオスカー主演男優賞に手をかけたと思った途端、直前にフランコのセクハラ問題が発覚してしまい、一気になかったことにされてしまったといういわくつきの作品である(オスカーでは脚色賞候補のみ)。日本でも公開がなくビデオスルーになってしまった。

役者志望の若者が演劇学校で変なロン毛男トミーと知り合い、ルームメイトとなる。くすぶっているうちに彼から映画を共に作ろうと誘われる。トミーは身分不詳、果たして本名を名乗っているのかさえ分からないが、金だけは無尽蔵に持っているという謎の男であった。果たして大丈夫なのかと誰もが思うであろう。

プロデューサー兼監督兼脚本兼主演となったトミーであるが、実際には映画の製作については全く知らず、さらに演技もシロート以下と言っていいほどだった。そんなデタラメな混乱ぶりが若者の眼を通して描かれる。

その信じられないドタバタが見どころの一つだ。トミーは何度同じシーンを演じようとしても、セリフを覚えられない。あまりに繰り返すので、彼以外のスタッフはみな暗記してしまうほどだ(^◇^)
もう一つの見どころは有名な俳優があちらこちらに顔を出していること。ザック・エフロン、シャロン・ストーン、ジャッキー・ウィーヴァー、ジャド・アパトーなどなど。

そしてラストに至って、正体不明でデタラメで才能皆無だが映画をそれなりに愛しているトミーという人物を、観客は好きになる……はずである(多分)。
いかにも映画マニアが好みそうな話であるが、マニアの域には至っていない私のような人間には「ふーん、変なヤツがいたものよなあ」で終わってしまうのだった。
それと『ザ・ルーム』は、米国と違って日本では全く知られていないというのが痛い。

フランコはロン毛を振り乱して別人のような怪演&熱演。一方、作品全体は意図は分かるけどなんだか中途半端な印象で、監督としての手腕は今一つであった。
彼の弟のデイヴ・フランコが若者役を演じている。童顔で役柄にはあっているものの、なんだか口をパクパクさせる癖があって、これは俳優としてはかなり問題ありなのではないかと思った。

ところで最後に通行人みたいな役でなんと本物のトミーが登場。ちゃんとセリフ言えてたよ(!o!)

 

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2019年2月 8日 (金)

「メアリーの総て」:美女と怪物 天才と俗物

190208 監督:ハイファ・アル=マンスール
出演:エル・ファニング
イギリス・ルクセンブルク・米国2017年

言わずと知れた「フランケンシュタイン」の作者メアリー・シェリーが、作品を生み出すまでの物語。といっても執筆したのは18歳(これでホラーとSFの元祖な小説を書くとは大したもん)という若さなので、その描かれている年数自体は短い。

ここでの若きメアリーはヒラヒラした長い金髪で、墓地で墓石に寄りかかって夢見るように文章をノートに綴る--と、これぞ文系女子の憧れを凝縮させた姿で登場(#^.^#)
父親は堅実な文化人ながら義理の母親とはうまく行かず。悶々とする彼女の前に現われたのが今を時めく詩人のシェリー--なのだが、どう贔屓目に見ても「ちょっと、そこのお嬢さん、そいつ絶対ボンクラ男だからやめとき」とオバサンモードになって小一時間は説教したくなるようなヤツなのだった。

従って、見ててメアリーが一体彼のどこに惹かれたのかよく分からない。「シェリーはシェリーだからいい」としか描かれていない。極端に言えば、家から連れ出してくれるなら誰でもよかったんじゃないのと思っちゃう。
彼に付いて行ったはいいが金が尽きるし、悪い友人が出入りするしで散々である。

一緒に家出した義理の妹クレアの縁で、バイロンの別荘へ。この状況に集う三人の男を紹介すると--
*バイロン:軽薄でムラ気、何も考えていない。
*シェリー:言葉だけで実(じつ)がない。
*ポリドリ:真摯だが面白みがない。
となる。
点数付けると、外見・性格を共にポリドリが一番になっちゃうのが困ったもんだ。
伝説化したあの「ディオダディ荘の怪奇談義」もなんだかよく分からないうちに、バイロンにまとめられちゃって終了である。
全体的に直球過ぎてひねりなし、盛り上がりに欠けたままだった。かなりの長さのはずの『フランケンシュタイン』もあっという間に薄いノートに書いちゃうし、夫のシェリーも改心しましたよ\(^o^)/で終了--ではなんとも面白味に欠ける。

ロクでもない男たちに邪魔されつつも、なんとか『フランケンシュタイン』出版にこぎつける彼女の才能と努力を称揚し、女性パワーを描くのはいいけど、その割にはクレアの描き方はひどくないか? メアリーにくっ付いてるだけの、まるっきり粗忽で愚かなミーハー娘扱いである。

監督はサウジアラビア映画『少女は自転車にのって』のハイファ・アル=マンスールである。
えー、母国出てこういう作品を撮ったんだ。男に行動を妨害されても頑張る女を描くという点では一致しているかもしれないけど……。

エル・ファニングは18歳の閨秀作家(←死語)という年齢的にもピッタリな役であった。美少女だし ポリドリ役はただ今『ボヘミアン・ラプソディ』でも評判のベン・ハーディ、好感です。

なお、この映画を見た人は是非ケン・ラッセルの『ゴシック』も見ていただきたい。何せ、こちらはバイロンがガブリエル・バーン、シェリーがジュリアン・サンズだっ ポリドリ役のティモシー・スポールは残念無念だけどな。
『ゴシック』は一度目は恐怖におののき、二度目以降は笑えるという一粒で二度おいしい作品であるよ。ただソフト出ているか不明……(ーー;)

なお「『フランケンシュタイン』は過去の名作をつなぎ合わせただけの小説だ」というような意見を見かけたが、過去の映画をパクリまくってつなげたような作品で評価を得た映画監督もいるんだから、いいんじゃね=^_^=

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←やはりビデオ再生専用機、買うべきか。

 

 

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2019年2月 4日 (月)

「音楽と美術の幸せな結婚 3」:チェンバロの裏も金次第

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大塚直哉レクチャー・コンサート・シリーズ
絵の中にとらえられた響き--ブリューゲルが描いた《聴覚》:「ブリューゲル展」の名画と音楽
会場:よみうり大手町ホール
2019年1月25

このシリーズも3回目、今回はトークのゲストは山田五郎、演奏者はオーストリア出身でリコーダーのラファエラ・ダンクザークミュラー、ガンバ西谷尚己であった。

テーマのブリューゲル展は郡山の美術館で開催されているとのこと。ブリューゲル一族の特集--といっても、一番有名なピーテル1世の絵画の出品はないそうである。
で、「長男はつらいよ」というテーマでピーテルの長男2世は画風は継いだが、出来は今一つ。却って次男のヤンの方が新たな境地を開いた、てな話で始まった。

また「一族」ということでは美術(画家)と音楽(演奏家、楽器製作者)共通で、長く続く家系で引き継がれ、先代のヒット作を真似し、ギルドに加入していた、というような共通点があるそうだ。

また、音楽を題材としたヤン2世の「聴覚の寓意」では山田五郎が遠近法や人体の描写がメチャクチャとクサしながらも、ただ細部だけはやたらとこだわりがあると述べると、大塚直哉の解説と共にこの絵の中に実際に描かれているとおぼしき縦笛を、ダンクザークミュラーに吹いてもらったのだった。
そのうちの一つはアルメニアのドゥドゥクという珍しいもの なんとアプリコットの木で作られていて、長さはソプラノリコーダーぐらいなのだが、音は結構太くて渋いのであった。

それから、チェンバロの蓋の裏側の絵は羊皮紙に書いて貼り付けた--って、知らなかったですう(!o!) で、お金持ちは有名な画家に絵を依頼し、金がない人はラテン語の格言などを書いたそうである。
な、なるほどそうだったのか……また一つ賢くなりましたヽ(^o^)丿

音楽面ではまずスウェーリンクやファン・エイクなどを演奏。大塚・西谷ご両人の独奏もあったが、やはりダンクザークミュラーのタテ笛の妙技が中心に置かれていたもよう。うまく言葉に出来ないが、何か独特の情緒がその音色に流れていた。

後半は「メランコリー」がテーマで、このメランコリーというのも「暗い」だけでなく正反対の意味もあるとのこと。こちらは英国が中心でパーセル、ダウランドの暗い所から徐々に明るい曲調(マシュー・ロック、トーマス・トレットなど)の作品へと変化していった。

話題が尽きずに最後は駆け足状態になってしまったが、盛りだくさんで今回もまたもやチケット代の元は十分に取れたのだった

この3人は10年ぐらい前にCDを出しており、会場でも販売していた。後になって買えばよかったと後悔したがもう遅い

なお、このレクチャー・コンサート・シリーズは3回で終了のはずだったが、好評につき第4回ウィーン、第5回ロンドンが追加決定。メデタイ!\(~o~)/
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2019年2月 2日 (土)

「恐怖の報酬 オリジナル完全版」:デンジャラス・ロード 爆走!トラック野郎は止められない

190202 監督:ウィリアム・フリードキン
出演:ロイ・シャイダー
米国1977年

「短縮版」の方は××年前に、多分レンタルビデオで見た。その後、オリジナルのクルーゾーの方も借りて見て、やっぱりクルーゾー版には負けてるなと思った記憶がある。しかし、あまりに昔なのでよく覚えていない(^^ゞ

それが今になって「完全版」の出現である。監督に無断で30分もカットされていたのをようやく元に戻せたのだという。その長さ121分

それぞれヤバイ案件で自国から逃げ出した4人の男が、南米某国の油田のある町に吹きだまり、正体を隠して働いている。油田での作業は過酷な労働で事故で死人まで出る。このあたりの経緯は、どうしても今の日本で話題の外国人実習生を思わず連想してしまうじゃありませんか(>y<;)

報酬に釣られて危険なニトログリセリン運搬に応募する。2台のトラックに分乗してソロソロと進むが……。

冒頭のエルサレムでの爆破シーンからして、これ絶対にケガ人出ているよなと確信できるド迫力。
暴風雨の中ボロボロの吊り橋を渡る場面など一体どうやって撮ったのよ(?_?)と思うほど。見てて身がすくんじゃうのである。なんでも放水塔から水まいて上空にヘリコプターを旋回させたそうだ。(5回もトラックが転落したらしい)
もう恐ろしくて見てて目が離せない。ドキドキして死にそうだ~(@_@;) タンジェリン・ドリームのサウンドがさらに拍車をかける。

そういや『七人の侍』でも終盤の嵐シーンは近くの消防車を数台借りて放水したとかいうから、撮影現場の行く着くところは同じようである。
ロイ・シャイダーはじめ役者の方々はご苦労さんm(__)m
他にも油田事故の炎上場面など「どうやって撮った」案件続出である。事故だけじゃなくて村人の暴動場面もクドイほどに渦巻くような描写だ。
いずれも情緒をそぎ取ったような素っ気なさが特徴的である。

ラストは短縮版ではハッピーエンドだった(?_?)らしいが、こちらでは観客をホッと油断させといて、最後の最期でひっくり返すような展開を取る。
似たような結末だとヒューストンの『黄金』、キューブリックの『現金に体を張れ』があるけど、諦念も皮肉も感じさせないのがフリードキンたる所以だろうか。
この完全版を見る価値は十分にありとタイコ判を押したい。ただ、クルーゾー版の方もまた見たくなってしまった。

さて、そもそもニトロの箱3つをあんなデカいトラック2台で運ぶ必要があるのかというツッコミがあった。た、確かに…… もっと小さい荷台の車でロープで固定するとか?
それはともかくとしても、メキシコ人の殺し屋はなんで参加したのかあまりよく分からなかった。他の男たちは金もなく行ける場所もないが、彼は望んで町に居残ったのである。

あと、タランティーノの映画で強盗する犯人が黒ずくめで登場するのがある。この映画からの引用だよね。タランティーノではそういう格好している意味が不明だが、こちらは結婚式に出席するという設定なのだ。

 

 

 

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2019年2月 1日 (金)

聞いて損なし!古楽コンサート 2月版

聞いて損なし!古楽コンサート 2月版

矢のように1月は過ぎて行ってしまいました

*3日(日)迷宮 ヴィオラダガンバとチェンバロとチューバと踊り(平尾雅子ほか):ロバハウス
*6日(水)生と死の傍らに(コンティヌオ・ギルド):日本福音ルーテル教会
*10日(日)J.S.バッハ その音楽と歓び(18世紀音楽祭協会):東京文化会館小ホール
*13日(水)ヴァレア・サバドゥス&コンチェルト・ケルン:紀尾井ホール ♪11日に武蔵野公演あり
*  〃   縦と横のファンタジア(ハルモニア・レニス):近江楽堂
*14日(木)ビュークルズ・アンサンブル:武蔵野市民文化会館
*16日(土)ヨーロッパの古い歌(レ・キャトル・ヴォワ):山手イタリア山庭園内・外交官の家
*23日(土)鈴木秀美 18世紀イタリアのチェロ作品を弾く:パルテノン多摩
*25日(月)大江戸バロック:近江楽堂
*26日(火)ルベルとルクレール 趣味の融合の申し子たち(天野寿彦ほか)

これ以外はサイドバーの「古楽系コンサート情報」(東京近辺、随時更新)をご覧ください。

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